第5話 橘輝道

 放課後。

 身内限定で豆腐メンタルである楠月花の落ち込み具合は一晩経たなければ直らない。

 もし、月花が誰かに告白して振られたら引き込むんじゃないかと心配になる今日この頃。

 そういえば妹が月花に用があるみたいだけど、この調子じゃ後日に伝えた方がいいようだ。

「霞、茜……またね」

 元気がない顔のまま千鳥足で帰っていく月花を遠回しに見ながら茜も帰ろうとすると長身の人物が一人クラスの外から顔を覗いてくる。

「ちっす」

「……おっす」

「橘、部活はどうしたんだ?」

「いや月花がげっそりした顔でゾンビみたいに歩いてるから、何かあったんだろうな?って見に来た」

「なんもないから安心しろよ。私、帰るから」

「おいおい、何か冷たくねぇ?」

 仏頂面で見てくる茜に、橘輝道は釈然としない顔をする。

 高身長イケメン、サッカー部のエース、性格は明るい。

 常に逆立っている赤髪が似合っていることやクラスのムードメーカー。

 これだけ聞けば好条件しかないが、茜は橘が苦手みたいだった。

「楠の奴がああなるのはいつものことだし、それにグイグイ来るな、暑苦しい」

「いやいや、来てない来てない」

 困っている顔で茜が目線で俺に救いを求めてくるので仕方なく間を取り持つ形で間に入った。

 普段、恐ろしいのにこんな一面が女の子なんだなって感じる。



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