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研究施設に着くと、俺はアゲハの姿を探した。百合の様子を見て貰おうと思ったのだが、アゲハは研究室に籠って大事な仕事をしているらしかった。
代わりに、美香が其処に居た。
「何、鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔をしてるのよ。今日は狼(ヴォルフ)として此処に来たの」
「どういう事だ!?」
何故だか知らないが、脳裏に疑心が過った。
「彼女の護衛命令をボスから授かったの。詳しい話しは、後で話すわ。そっちも、取り込み中みたいだしね」
言われて、エコーとクリスに目を遣る。クリスはとても落ち着いた様子だった。とても、穏やかで優しい匂いに溢れている。エコーは一転して、落ち着きがない。怒りや憎しみの匂いに満ちていた。どうして、此の二人が争わなければならないのか。とても、悲しい気持ちでいっぱいになった。
百合も同じ気持ちなのか、物凄く悲しい匂いが伝わってくる。
「こっちへ来てくれ」
黒部が俺達全員に呼び掛ける。
どうやら、エレベーターで地下に降りるみたいだった。
下へ下へと降りて行くと、やがてエレベーターは止まった。
扉が開いて、眼に飛び込んで来たのは酒場だった。
「此処は住み込みの職員の為の娯楽施設だ。まぁ、此処なら誰の邪魔も入らないだろう」
「あぁ。で、勝負は何で決めるんや?」
「此れなんか、どうだ?」
そう言って、黒部はサイコロを取り出して来て言った。
「構わんで」
「私も構わない」
二人共、順次に了承する。
「其れじゃあ、ルールを説明するぞ。まずお互い順番に、相手側には見えない様にサイコロを振る。此の時に6を出せば勝ちなんだが、相手側は其れを防ぐ為に、チェックと宣言する。チェックをした時に相手の目が6以外の数字ならば、負けだ。もしも、相手の出目が6ならば、チェックは成功。三回、チェックが決まると負けになる。以上がルールだ。シンプルだろう?」
「一つだけ聞いても、えぇか?」
「此のサイコロは、どんな風に振っても良いのか?」
「別に構わないが、何か意味があるのか?」
黒部は少し困惑した様子だった。
「いや、何でもない。勝負を始めてくれ」
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