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「勝負の前に、お前達に話さなければならない事が在る」
建物の中を歩きながら、黒部が言った。
「莫大なる富と権力を手に入れたドルフィンは、一つの壁にぶつかった」
見慣れぬ機材が立ち並ぶ此の場所は、何かの施設の様だった。
「壁?」
「そうだ。流石のドルフィンも、老いには勝てなかった」
扉の前で立ち止まり、黒部は言葉を続ける。
「世界中の優れた医者や科学者を雇い、若返りの術を探させた。ドルフィン自身も、あらゆる文献を読み漁り、不老長寿の妙薬を探し求めた。其の過程で、人格転移術と言う物を発見した。俺は科学者じゃないから、詳しい事は解らんが人間の人格と記憶を、別の人間に移し換える事が出来るらしい」
「そんな馬鹿な話し、信じられると思ってるのか?」
「信じる信じないは別として、ドルフィンは若い体に自分の人格を転移しているんだ」
黒部が言っている事が、余りにも飛躍的で非現実的な話し過ぎて、理解し難かった。だが、嘘を言っている様にも思えなかった。
「下らんなぁ……」
エコーが低く呟く。
「長生きしたからって、何やって言うねん。大事なんは、どう生きるかやろが!!」
「落ち着けよ、エコー。此れからする勝負は、冷静な判断力を少しでも欠いたら、負ける。俺達は負ける訳にはいかないんだ」
今のは自分に向けた言葉だった。ドルフィンは、多くの者の命を奪った。なのに奴は、老いた体を若返らせたい等と吐かしやがる。何が不老長寿だ。何が、人格転移術だ。そんな下らない理由で、奴は多くの者の人生を振り回している。
正直、腹が立った。
だが、此処は冷静になるべき時だ。怒りに身を任せている場合ではないのだ。
「そろそろ、先へ進もうか」
黒部は扉を開くと、中へと入っていった。
何もない広い空間の中央に立つと、黒部は言った。
「さぁ、ゲームを始めようか」
其処には、八人の男が居た。
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