8
店内には、珈琲を飲んでたオッサンは既におらんかった。
「糞ッ。まだ、近くにおる筈や」
折角、見付けた獲物や。
逃がさへんで。
店を出ようとした時やった。
後ろから、ズボンを引っ張られた。
「おじちゃん、お父さん知らん?」
見ると十歳か其処らの女の子がおった。
迷子かなんか知らんけど——
「誰が、おじちゃんや。双六って呼び!」
「解った!」
笑顔を向ける女の子。
えらい可愛らしいけど、変態に連れてかれてまうで。
放っとく訳にはいかんやないか、糞っ垂れが。
「お前、名前は?」
「一二三(ひふみ)って、言うんばい。可愛かろ?」
女の子は、九州訛りが在る。此の辺のもんやないみたいやな。
ほな、旅行者か。
「えらい、ショボい名前やな。知ってるか。一二三ってのは、チンチロリンでは……」
「負けの役っちゃろ? 知っとうばい!」
何や、知ってるんかいな。
「ママがお父さんみたいな、ろくでなしにならんごつって、考えてくれたんばい!」
ろくでなし——賭博師(ギャンブラー)の事か。
「お父さんは、博打するんか?」
「するばい。大好きばい!」
「お父さん、皺だらけのちっさいオッサンか?」
「そうばい!」
間違いない。
珈琲、飲んどったオッサンや。
なら、話しが早い。
「俺が、お父さん見付けたるわ!」
「本当?」
目を輝かせる一二三。
えらい可愛らしなぁ。
「ホンマや。任しとき!」
警察に届けても、家に送り帰されるだけや。
一二三を利用して、オッサン探しや。
でも早よ見付けらんと、下手したら誘拐犯やな。
「あれ、師匠?」
八代が紙袋を持って、出て来た。
「其の子、誰ですか?」
闇金業者が周りに、ようけおる。
此処やったら何やから、取り敢えず場所を移して話そか。
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