残り三人やから、三人掛けの卓に場所を移した。


 次の親番も俺が取って、カードを操作した。


 俺の手札は三枚。内一枚はジョーカーや。もう一枚は金髪リーゼントが持ってる。


 ほんで、金髪リーゼントの手札も三枚や。キモ男は、二枚。


「ほな、始めよか?」


「ちょっと、待って下さい……」


 キモ男は俺に見えん様に、卓の下でカードを確認してる。


 金髪リーゼントが、左手で煙草に火をつけとる。


 ——ガッ。


「ひぎぃっ……」


 キモ男の悲鳴。


 俺は卓の下から、キモ男の手を蹴ってやった。


「次、イカサマしたら容赦せんって、言うたよな?」


 床に散らばる四枚のカード。


 金髪リーゼントと、カードを擦り替えるつもりやったんやろな。


 キモ男の人差し指が、不自然な方向に曲がっとる。


 折れたな。


 痛そうや。


「早よ、拾え!」


 半泣きになりながら、カードを拾うキモ男。


 狡(こす)いイカサマしか出来ん三流賭博師(ギャンブラー)が、嘗めた真似するのが悪いんや。


「ほな、続けるで」


 ジョーカーが良い感じに折れ曲がるのを、俺は見逃してへんで。


 キモ男は慌てて、折り目を直してたけど丸解りや。


 迷わず、カードを取る。


「相手が悪かったなぁ」


 ジョーカーのペアを投げ放ち、低く言い放つ。


「ほな、後は任せたで」


 八代の肩を叩いて、俺は外に出た。

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