6
だらだらとカード消化が続いとる。
ほんで、最初の脱落者が出たのは、8ターン目やった。
「あぁぁぁっ……!」
若い兄ちゃんが、カードを投げ捨てながら頭を抱えて絶叫する。
「やっぱり、アカンかったか。オラッ、行くぞ!」
闇金業者に引き摺られて、若い兄ちゃんは連れて行かれる。
「嫌だぁっ! 行きたくないっ! 誰か助けてぇっ!」
見苦しく泣き叫ぶ。
自分の意思で借金して、自分の意思で博打しとるんやろ。情けない奴や。
周りの連中も、次は我が事かも知れないと一様に、表情が強張る。
金髪リーゼントとキモ男だけが、にやけた面(つら)しとる。
「でら、五月蠅い奴やのぉ」
金髪リーゼントが呟く。
残りの人数は七人。
カードをシャッフルして再開やな。
「ほな、次の親決めやな」
俺は八代に手招きをした。近付く八代の耳元で囁き在る指示を出す。
皆が順番にサイコロを振っていく。
キモ男がサイコロを振る番やった。
さっきキモ男がサイコロを振った時、普通に投げとったのを見逃してへん。
投げたサイコロは今度も6ゾロや。
「又、ゾロ目だ……」
キモ男がにやける。次の金髪リーゼントがサイコロを回収するよりも早く、八代がサイコロを取った。
「何をするつもりですか?」
マスターが制止の声を掛ける。
「まぁ、待ちや。そいつイカサマしとるで。サイコロ調べたら、直ぐに解るわ」
八代はマスターにサイコロを渡した。
マスターはサイコロの一つを齧(かじ)り、驚きの表情を見せる。
「此れは……グラ賽じゃないですか?」
サイコロの中に重りが入ったイカサマダイスやった。サイコロを擦り替えて、賽の目を操っとったんや。次に振る金髪リーゼントが、元のサイコロに擦り替えて何事もなかった様に見せとる。コンビで在る事を利用して、ババ抜きの最中に互いのカードの擦り替えもしとるのを、見逃してへん。
「イカサマは困りますねぇ……」
困った表情のマスター。
キモ男は、鞄から札束を出した。
「百万円、有ります。もう、イカサマはしませんから許して下さい……」
「まぁ、私は其れで良いですけど……皆さまは、どうですか?」
金を受け取りマスターは、皆を見渡す。
「罰金も払(はろ)たんやから、良いんやない?」
他の面子は何も言わん。
「但し、次やったら容赦せぇへんで?」
そう付け加えた。
「……さ、皆様。ゲームを、再開しましょうか?」
マスターが促す。
次はおばちゃんの番やった。サイコロを振る。次いで、スーツ男。ほんで、俺の番やった。
周りの奴等が邪魔臭いな。俺は親番をとるつもりやった。
——6ゾロ。
「サイコロ、調べたい奴は調べても良いで?」
誰も動かんかった。
皆、一通りサイコロを振り終わった。
今回は俺の親番や。
カードの位置をしっかり把握しながら、カードリーディングを駆使する。
セカンドディール等を利用して、カードを操作しながら配る。
結果、俺とキモ男と金髪リーゼント以外の四人が自動的に脱落する。
博打するのには、人数がごちゃつき過ぎや。
「不思議な事も在るもんやな。いきなり、四人も脱落しよったで!」
「師匠、何したんですか?」
不思議そうに此方を見る八代。
「別に、普通に配っただけやで。えらい偶然も、在るもんやなぁ」
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