だらだらとカード消化が続いとる。


 ほんで、最初の脱落者が出たのは、8ターン目やった。


「あぁぁぁっ……!」


 若い兄ちゃんが、カードを投げ捨てながら頭を抱えて絶叫する。


「やっぱり、アカンかったか。オラッ、行くぞ!」


 闇金業者に引き摺られて、若い兄ちゃんは連れて行かれる。


「嫌だぁっ! 行きたくないっ! 誰か助けてぇっ!」


 見苦しく泣き叫ぶ。


 自分の意思で借金して、自分の意思で博打しとるんやろ。情けない奴や。


 周りの連中も、次は我が事かも知れないと一様に、表情が強張る。


 金髪リーゼントとキモ男だけが、にやけた面(つら)しとる。


「でら、五月蠅い奴やのぉ」


 金髪リーゼントが呟く。


 残りの人数は七人。


 カードをシャッフルして再開やな。


「ほな、次の親決めやな」


 俺は八代に手招きをした。近付く八代の耳元で囁き在る指示を出す。


 皆が順番にサイコロを振っていく。


 キモ男がサイコロを振る番やった。


 さっきキモ男がサイコロを振った時、普通に投げとったのを見逃してへん。


 投げたサイコロは今度も6ゾロや。


「又、ゾロ目だ……」


 キモ男がにやける。次の金髪リーゼントがサイコロを回収するよりも早く、八代がサイコロを取った。


「何をするつもりですか?」


 マスターが制止の声を掛ける。


「まぁ、待ちや。そいつイカサマしとるで。サイコロ調べたら、直ぐに解るわ」


 八代はマスターにサイコロを渡した。


 マスターはサイコロの一つを齧(かじ)り、驚きの表情を見せる。


「此れは……グラ賽じゃないですか?」


 サイコロの中に重りが入ったイカサマダイスやった。サイコロを擦り替えて、賽の目を操っとったんや。次に振る金髪リーゼントが、元のサイコロに擦り替えて何事もなかった様に見せとる。コンビで在る事を利用して、ババ抜きの最中に互いのカードの擦り替えもしとるのを、見逃してへん。


「イカサマは困りますねぇ……」


 困った表情のマスター。


 キモ男は、鞄から札束を出した。


「百万円、有ります。もう、イカサマはしませんから許して下さい……」


「まぁ、私は其れで良いですけど……皆さまは、どうですか?」


 金を受け取りマスターは、皆を見渡す。


「罰金も払(はろ)たんやから、良いんやない?」


 他の面子は何も言わん。


「但し、次やったら容赦せぇへんで?」


 そう付け加えた。


「……さ、皆様。ゲームを、再開しましょうか?」


 マスターが促す。


 次はおばちゃんの番やった。サイコロを振る。次いで、スーツ男。ほんで、俺の番やった。


 周りの奴等が邪魔臭いな。俺は親番をとるつもりやった。


 ——6ゾロ。


「サイコロ、調べたい奴は調べても良いで?」


 誰も動かんかった。


 皆、一通りサイコロを振り終わった。


 今回は俺の親番や。


 カードの位置をしっかり把握しながら、カードリーディングを駆使する。


 セカンドディール等を利用して、カードを操作しながら配る。


 結果、俺とキモ男と金髪リーゼント以外の四人が自動的に脱落する。


 博打するのには、人数がごちゃつき過ぎや。


「不思議な事も在るもんやな。いきなり、四人も脱落しよったで!」


「師匠、何したんですか?」


 不思議そうに此方を見る八代。


「別に、普通に配っただけやで。えらい偶然も、在るもんやなぁ」

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