17

 5セット目。


 御互い相手の所持金が幾らかは知らんけど多分、警戒してくるやろう。此処からは『グー』『チョキ』『パー』全部に張るのは、超危険行為や。下手したら、全相殺も有り得るからや。


 同じく大金を張るのも、危険や。下手打って、空っけつになったら、洒落にならん。


 けど、此処は攻める局面でも在る。


 俺の所持金は百万円ちょいや。


 『グー』『チョキ』『パー』に三十万円ずつ張った。


 此のセットで決めたる。


 ——いける。


 配られた手札を見て確信した。


 三枚共に落札や。


 まずは『グー』や。


 鬼瓦は『手無し』やった。間違いなく、流れが来てる。


 『↓』のカードを選択。


 鬼瓦は『→』やった。


 二戦目で決めたる。


 『パー』を出した。


 鬼瓦は『手無し』の筈や。


「えらい、余裕の面やな?」


 鬼瓦はカードを捲る。


 『チョキ』やった。


「何でやっ……?」


 鬼瓦はさっきのセットでも大金を使っとった。続けて大金を張るのは、自殺行為の筈や。


「俺も三十万、張らしてもろたで。まぁ、金が足らんから『パー』は捨てたけど、お陰で良い感じに欺けたみたいやな?」


 鬼瓦の口振りやと、鬼瓦の残りの手札は『グー』や。対して、此方は『チョキ』や。


 ——糞。


 やらかした。


 こうなったら、賭けや。


 鬼瓦に読まれとるやろうけど、此処は敢えての『安全(セーフティ)』や。


 『→』のカードを伏せる。鬼瓦の手は『安全(セーフティ)消化』の『↓』やった。


「今度こそ、逃がせへんで!」


 互いにカードを伏せる。


 俺は『チョキ』で、鬼瓦は『グー』やった。


 予想はしてたけど、かなりやばい展開やった。


 けど、此処で賭けに出らんと勝ちの目が出てこんのや。


 『↑』のカードを置く。


 もう、後戻りは出来ん。


 緊迫した空気が流れる。


 背後で師匠達が、固唾を飲むのが伝わってきた。


 此処さえ凌げば、逆転の目が出る。


 此処さえ、凌げば——


「此れで、終わりじゃい!」


 叩き付けられたカードは『←』やった。


 俺は、安堵の溜め息をついた。


 何とか、凌いだ。

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