16
4セット目。
1セット目と同じ『グー』を三枚、一円張りや。在の時と違って、鬼瓦は熱くなってる。間違いなく、今回はかなりの金額を張ってくる筈や。其れに今、流れは此方に傾き掛けとる。
此の無謀の張りで、流れを引き込んだるんや。
「大したヒキしとるわ」
配られたカードを見て、師匠が囁くのが聞こえた。
ほんまに、良いヒキや。
こらマジで、運を味方に付けたんとちゃうやろか。
互いにカードを伏せる。
一戦目は、純粋に4分の1や。運が悪かったら、負けるレベルの勝負。
俺は『グー』で鬼瓦は『パー』や。
全然、負ける気がせぇへん。
『→』を出した。
鬼瓦のカードは『↓』やった。
大事なんは二戦目や。
勝つも負けるも、此処で決まる様なもんや。
『グー』のカードを伏せながら、鬼瓦を静かに見る。
「糞ガキ、幾ら張ったんや?」
隠してるつもりやろうけど、焦りの色が見える。
一戦目の『グー』を見て、俺が大金を使って落札したと勘違いしてるんや。鬼瓦は多分、同額落札したと思てる。だから、今の俺の手札が全く読めとらん筈や。実際、今回は俺もオール『手無し』の予定やった。だからこそ、余計に鬼瓦は警戒してる。
鬼瓦はカードを開示する。『チョキ』のカードやった。
其れに合わせる様に、此方もカードを開示すると驚きの表情を示した。
「お前、まさか……?」
「せや、一円ずつしか張ってへんで」
意地悪く笑いながら、カードを伏せた。
鬼瓦は相当、動揺してる様やった。
煙草に火をつけて、えらい長考した挙げ句に結局、出したカードは『安全(セーフティ)』やった。
「今回は流れやな」
俺は三円を出しながら、呟いた。
「糞っ垂れがぁ!」
鬼瓦は投げ付ける様に、十万円の束を九つも出した。取り敢えずは、作戦成功やな。
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