起きたら誰もおらんかった。昨日の飲み会のゴミは、師匠達が片付けてくれたんやろな。


 しかも、廃棄の弁当を置いてくれてる。ほんまに、師匠は良い人や。


 デミグラスソースのハンバーグ弁当やった。濃厚なデミグラスソースが、ハンバーグと良う合(お)うてる。御飯が、めっちゃ進むわ。けど、御飯は薄べったく広げただけで、見た目程ないのが残念やな。


 寝起きから、ガツガツいった。


 昨日の夜、コンビニで買った鞄から缶珈琲を出して、煙草に火をつけた。


 しっかし、ポリ公との博打は気が乗らんなぁ。まぁ、やったろうとは思てるねんけどな。


 其れにしても、教祖様は何処に居てるんやろか。詳しい話、聞かせて貰おうと思ったんやけどな。まぁ、取り敢えず師匠の所に行ってみるか。


 師匠はいつも図書館で借りた本を、市民ホールで読んでる。市民ホールは此処から歩いて、五分くらいや。一服、終わったら行こう。


「にゃあ」


 師匠が可愛がっとる猫のタマが、此方を見てる。ポケットから、カルパスを出した。


「にゃあ〜!」


 手ぇ出してきよった。


 どうやら、欲しいみたいや。


「しゃあない、やっちゃなぁ」


 あげたら、大人しく食べとる。


「さて。ほな、行くかな」


 市民ホールの一階。其処のギャラリーの直ぐ傍に、ソファーが在る。師匠のお気に入りは一番、右端や。


 ソファーに横になりながら、煙草を吹かしながら読書に励んでる。全館禁煙も師匠には、御構い無しや。警備員のオッサンも、普通に師匠を素通りしとる。


「教祖様って普段、何処におるん?」


 早速、本題に入る。


「ん〜〜〜、解らん!」


 悩んだ振りしといて、其れかい。


 えらい笑(わろ)うてからに。


「多分、中庄の公園やない?」


 中庄か。


 割りと近いな。


「何で、そんな所におるの?」


「其処のホームレス相手に宗教活動してるって、前に先生が言うてはったで」


 俺も煙草に火をつけた。


 師匠が携帯灰皿、差し出してきた。


「ホームレス相手にしても、儲からんのとちゃうの?」


「そんな事ないよ。ホームレスでも、再起狙って持ってる奴は持ってるで」


 多分、師匠は割りと持ってる。根拠はないけど、賭博師(ギャンブラー)の勘や。


「ほな教祖様は、ホームレスから巻き上げて、再起狙ってんのかな?」


「どうなんやろなぁ。最近、変な奴に目ぇ付けられてるらしいからなぁ」


 もしかして、倒して欲しい奴ってそいつやろか。


 まぁ、取り敢えず話聞いてからやな。


「ちょっと、出掛けてくるわ」

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