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 俺の地元、泉佐野市は大阪市外に在るいわゆる田舎町や。田舎町や言うても他の田舎の県からしたら大分、都会や。


 泉佐野市から堺市までの府下を、泉州地方て言われとる。日本のワースト1に当たる柄の悪い地域や。市内の人間の多くは、泉州地方には恐がって近付きたがらん。確かに柄が悪い。ネットの書き込みで【修羅の島】とか言われとる。【修羅の島】て、男子の生存率2%な訳ないやろ。皆、逞しく生き残っとるわ。そんな【修羅の島】に住むホームレス達は基本、気の良いオッサンや。先生がニコニコしながら俺を見る。


「兄さん、此処の自販機は譲ったげるわ」


 先生は檀原公園のホームレスの一人や。金を稼ぎたい言うたら、笑顔で自分のシノギを教えてくれた。


 普通、自分の食いぶちが減るから、シノギを他人に教えらんもんやないのやろか。まぁ、教えてくれるなら甘える事にした。


 先生のシノギは、自販機の釣銭忘れを猫ババする事や。先生曰く、特定の時間と場所に行けば特定の人間が毎回、釣銭を忘れるらしい。


 ——ほんまかいな。


 どうにも胡散臭いけど、物は試しや思うて着いて来た。


 檀原公園を少し通り過ぎた所に在る松風台(しょうふうだい)と言われる高級住宅街。其の入口の坂の上に在る大きな家の前に自販機が設置されて在る。


「ほら、誰かに取られる前に釣銭あるかみてみ?」


 半信半疑で釣銭口に手を突っ込んだ。


「ほんまや!」


 四百円も入っとった。


「ほら、見てみぃ。入っとるやろ!」


 先生はえらい誇らし気やった。


「おおきに。此れ、御礼に受け取って!」


 俺は三百円を先生に差し出した。


「良(え)ぇんか、兄さん?」


「百円、在ったら充分やで!」


 博打するのに百円、在れば充分や。其れに、受けた恩は倍にして返さなアカン。此の俺、雛形双六(ひながたすごろく)は義理堅い。


「じゃあ、有り難く貰っとこか。おおきに」


「ほな、先生。ちょっと、行くとこ在るから俺は此れで」


「そうか。ワイは此れから、他の自販機も回らなアカンから」


 笑顔で手を振る先生。


 ほんまに良い人や。多分、皆、人が良過ぎるからホームレスになるんやろな。


 俺は檀原公園の方に向かって歩いた。檀原公園の直ぐ側に在るバス停留所。其処が今回の賭場になる。


 もう既に、カモは見付けて在る。


 今から戻れば、余裕で間に合うやろ。

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