26
試合は順調に勝ち進んだ。
トーナメント形式ということもあり、強いチームと当たってしまってそこで負けてしまえばその時点で敗退してしまうし、ギリギリ勝ったとしても次戦が一週間後、二週間後という過密スケジュールで組まれているためダメージを引きずったまま戦うことになり不利になる。
その点で言えば、私たちは二、三戦はとても運よく大きな負傷もなく、明らかに格下のチームとばかり対戦できていた。
それでも勝ちあがっていくほど当たり前だが少しずつ強いチームと当たるようになっていた。
今回の相手も相手は背が高くてスレンダーな人と、身長は私と同じくらいで小さいが少しガッシリ体型の人のタッグで、私たちよりも同等か少し格上そうな相手だった。
最初の対戦組み合わせは主催者側で決めらるため、私は身長の低い女性と戦うすることになった。
私と対戦した相手は、身長が同じくらいだったためその点では戦いやすかったが、パンチが思った以上に重く、クリンヒットするたびに胃に入っている水が口までせりあがってきた。
それでも動きはそこまで早い方ではなかったため、隙を狙って膝蹴りを鳩尾付近に打って、少しひるんだ隙に脇腹にレバーブローをする。
相手が苦痛に顔を歪めるのを確認すると、動きが完全に止まった。
ここでお腹を責めて吐かせて試合終了に持って行ってもいいが、絞め技で一気に失神させて失神させる作戦を取る。
どうしても、相手を追い詰めるとアズサの顔が脳裏をかすめるのである。
だから、ここ二、三戦の最後は全て絞め技で終わらせて勝っている試合が続いた。
しかしここで不測の事態が起こる。うずくまる相手の後ろへ回り、スリーパーホルドを決めようとすると、相手の肘打ちを鳩尾に当てられた。
ウッ
息を吐くタイミングと重なったのと、少し油断して筋肉を緩めていたのが重なってまともに食らった私は、息ができなくなってその場に蹲る。
まずい。負ける。
動けなくなった間に空いても少し呼吸を戻して、私に攻撃を加えてくる。それを何とかガードしたが、中々呼吸が回復せず一方的に殴られる展開になってしまう。
そして、相手は何を思ったか私の顎へアッパを食らわした。
勿論顔をガードしておらず殴られるとは思っていなかった私は、まともにそれを食らい後ろへ倒れる。
レフリーから反則。というコールがされたのが聞こえた。
起き上がると、相手がリングの真ん中でアイマスクして後ろに手を組んだまま立たされているのが目に入り、レフリーの手によって二発へそのあたりにボディブローを連続でされた。
相手はされた瞬間お腹と口を抑えてその場にしゃがみ込み、嘔吐した。
アイマスクを外され、レフリーから立ってと促されて相手も私もゆっくりと立つ。
相手はもう立っているのがやっとの状態に見えた。私もさっき殴られたダメージがあり立っているのがやっとであるが、それでも相手の背後に周り今度はしっかり首を絞めてスリーパーホールドで相手が失神して試合が終わる。
リングを降りると、リングの袖で待つように指示され、そこにあったパイプ椅子に腰を降ろす。これまでなら、この時点で私たちの勝利が通達されて控室に向かっていたが、どうやら隣の会場で同時に行われている、メイの試合がまだ終わっていならしい。
五分ぐらい待たされた後、レフリーから隣の会場へ移動するように指示されて、隣の会場へ足を進める。
リングにはもう一人の長身でスレンダーな相手が待ち構えていた。メイの姿はなかった。リングの床が少し濡れていて掃除した後があり、誰かが嘔吐したんだとわかる。相手の様子からして、お腹は少し赤くなっている部分はあるものの、目にはまだ戦意が漲っており、吐いた様子がないことからメイが吐いたのかと想像できた。
タッグを組んでから彼女が負けたことはなかった。いつも同時に試合が行われるため彼女の試合を直接観ることはできなかったが、コトさんが言った通り、彼女もそれなりに強い様だった。
でも今回は負けたんだ。メイは大丈夫だろうか。一瞬心配になったが、すぐにそんなことを気にしている場合ではない。目の前の相手を倒さなければならないと切り替える。
私がリングに上がってすぐに試合開始のゴングが鳴る。
相手は素早く近づき、回し蹴りを繰り出しそれをまともにお腹へ受け入れてしまう。踵がへその辺りにめり込んでグニュと音がしたのが聞こえる。
オエ。
吐しゃ物を吐き出し、胸のあたりの大部分が濡れる。
倒れはしなかったもののクの字にお腹を抑えて何度もむせ返る。
苦痛に耐えながら、先ほどまでの相手がわざと顎への攻撃をしたのだとかわかった。敗戦を悟った相手は、自分を犠牲に私へダメージを残して、相方がメイに勝って私と対戦することへ賭けたんだ。
そのダメージで私は頭がクラクラしてまともに動けず、まともに蹴りを食らってしまった。
チームプレイ。勝ちへの執念。
相手の作戦に感心している間もなく、今戦っている相手から膝蹴りが繰り出される。
私だって勝たないといけない。負けられない
膝蹴りを手で止めて片足を両手で抱えてそのまま相手を後ろへ押し倒す。
バランスを崩し相手が倒れる。それを見て、相手の腹部めがけてサッカーボ―ルキックを何度もする。
相手が吐いたのが確認できた。もう、相手が怪我するなんて考えていられない。やるかやられるかだ。
何度も相手の腹部につま先をめり込ませる。
相手が何度か嘔吐して、動かなくなる。試合が終わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます