第11話 「怠惰な休日はパンツで始まり、スカートの中で終わる」

GWがはじまって2日、今日も先に起きられてしまった霞が部活に行くのを見送ってから雫が寝ている部屋に向かう。


俺にはやってみたいことがあった。


部屋のドアを開けて雫が寝ていることを確認。静かに寝息を立てている。

よしよし。これならできそうだ。


学校がある平日は布団から出たくない一心で鉄壁のガードを張るが、休日は際限なく寝れると思っているらしく、鉄壁のガードがなくなる。


俺は足の方に行き、腰のあたりまで布団をまくる。白地にピンクの刺繡が入ったパンツが目に入るが、今回はそれが目的ではない。

言うまでもないが、パンツの奥も目的ではない。


俺の目的はあくまで太もも。それ以上でもそれ以下でもない。


俺は無防備になった雫の太ももに頭を乗せた。


ほう。やっぱ座ってるときとは全然違うな。寝てるのもあって、力が入ってないし、曲げたときの固さもない。そして何より、高さが絶妙だ。


「ん~……」

と雫が寝返りを打った。それに合わせて俺の頭も動く。

布団がなくなったせいで寒いのか、足をスリスリしてる。

「寒いのか。でもこのまま布団かけたら俺が死ぬ気がするんだよなあ……」


雫の太ももを枕に布団をかぶって窒息死ってのは避けたい。

だが、雫が寒いのはマズい。俺もこのまま寝るんだから雫も冷やさない方が平等だ。


なにかいい手段はないか――


と、視界にキレイにたたまれた霞の布団が入った。


「あ!そうか!」


俺は霞の布団を引っ張ってきて、足の方にかけた。


俺もこのまま寝ると寒いので、うまい具合に掛け布団の位置を調整する。


「あれ?これ、完璧じゃね……?」


さすがに敷布団まで持ってこなかったが、下が絨毯になっているため、寒さは感じない。少し硬い気もするが、木のベンチだったり、床に比べればどうってことない。


雫の柑橘系の匂いと膝枕、布団の温かさ。

このまま寝れる。間違いない。


俺は怠惰な1日になることを確信した。



いい感じに寝ていたが、頭を揺さぶられる感覚で目が覚めた。


「ソウくん。お腹すいた」

「……」

身も蓋もない理由で起こされたようだ。


時計を見ると12時過ぎ。霞が出たのが8時ごろだったから、4時間ほど寝ていたらしい。雫も昼まで寝てればさすがに寝起きでも頭がちゃんと動いてるっぽい。


――くぅるるるる~


俺の耳のすぐ近くで雫の腹が「何か食わせろ」と要求してきたようだ。


「……」

雫は顔を真っ赤にして布団で顔を隠した。

「なんか食うか……」


俺は聞かなかったことにして、リビングに向かった。



霞は練習試合らしく、帰ってくるのは夕方になるとのこと。それまで俺はすることがない。宿題は連休を怠惰に過ごすため、双子がいない昨日一通り終わらせた。


雫は昼飯を食べ終わった後、宿題として出されたものをやっている。俺は定位置のスカートの中。今日はワンピースだけど。


淡い色のワンピースで、しかも生地が少し薄いこともあって、光を中まで通してくれる。つまり、スカートの中という温かい空間でパンツをじっくり観賞できるわけだ。


学校がある日の雫は横縞の縞パンだったり、チェックだったり、柄のない無地のパンツだったりとシンプルなものが多い。だが、休日は刺繡が入ったものが比較的多くなる。目でも楽しませてくれる辺り、さすが雫である。


いかにも触りたくなるようなデザインだが、細部までじっくり楽しみたい俺はノータッチを貫いている。ただし、顔は例外。


今日のは縦に3分割するように2本のライン上に刺繍が入っていて、上の中央には小さいリボンがワンポイントになっている。これを見るたびに思うんだが、洗濯で取れないんだろうか?

ライン上の刺繍はよく見ると花柄。でも、たくさんの花が重なっていて、かなり近くで見ないとわからないくらいだ。


「ソウくん。この問題わかる?」

「ん?どれ?」


ワンピースの中から顔を出すと、雫が俺に課題を見せてくる。


「あーそれは――」


俺は起きないまま解き方を教えて、再びワンピースの中に戻った。さすがに昼まで寝てたからもう寝る気にはならない。その代わり暇つぶしに雫の太ももをムニったり、顔をうずめたりして堪能しまっくった。



霞が帰ってくる少し前くらいになると、雫と一緒に晩飯と明日の朝の支度をはじめた。一緒にって言ってもせいぜい野菜の皮をむいたり、味見するくらいで、そのほかはぜんぶ雫がやってくれる。


テキトーなところで俺は切り上げ、あとの作業は雫に任せた。



雫も一通りの作業が終わり、あとは温めれば完成というところで霞が帰ってきた。


「ただまー!早くやろ!」


俺たちは動きやすい服に着替えて地下で霞の練習に付き合った。


「練習試合はどうだったんだ?」


雫が風呂に行ってる間、霞がヘロヘロになった俺を膝枕してくれる。習慣になりつつあるのはうれしいが、裏がありそうで怖い気もする。


「1年のはじめだから見学よ。試合は勝ったけど、まだ全然って感じみたい」

「まだ全然って本番まであんまりないだろ?」


野球は6月ごろに都道府県の予選がはじまり、8月に全国大会がある。いわゆる甲子園ってヤツ。3年はここで終わりになるが、秋には春の選抜大会に向けた予選があり、ここで2年が主体のチームに変わる。


霞の話では、バレーはもっと大会があるらしいが、俺が聞いてもよくわからんかった。でも、たぶん秋の大会は野球と同じように、2年が主体のチームになるだろう。


「そうなんだけど……ま、アタシはすぐにどうこうって感じじゃないみたいだから秋に向けてって感じかな~」


「ん~」と霞は伸びをしながらそう言った。

ないないといわれるが、こうやって伸びをすればあるな。逆に言えばそうでもしないと見えないともいえるが。


「なに?」

「いや?」


俺は視線を天井にそらした。


「アンタね。バレてんのよ。今さら目を背けたってムダだから」


だそうだ。紳士諸君も気をつけたまえ。


「別に。意外とあるんだなって思っただけ」

「はあ?意外とって何?もっとないと思ったわけ?」


その通りなんだが、たぶんこの調子でそれを言ったら床に叩き落される。


「もっとってわけじゃないけど」

「ないとは思ったんだ……?」

「……」


無言の肯定。


「まあ、雫と比べればそうでしょうけどねー」

見せつけるためなのか、単に伸びをするためなのかわからないが、霞は再度体をぐいーと伸ばした。


「つーか雫が持っていきすぎ。走ると痛いっていうくらいなんだから半分くれればいいのに……」

んなムチャな……。

「でも、一緒に歩くとわかるけど、男の視線ずっと雫の胸にいってるからね。アンタくらいじゃない?こうでもしない限り見ないのって」

「だってそこまで興味ないし」

というか、雫の膝枕に加えて最近じゃ霞まで膝枕をしてくれる。しかも雫はスカートの中までOKなんだぞ?ほかの女に興味がわくわけない。俺からすれば胸の大きさなんぞオマケだ。


膝枕こそ至高。スカートの中は至玉だ。ほかはオマケ。


仮に見たとしてもそれは単に動くものに反応しただけ。他意はない。


ガチャとリビングのドアが開く音がした。


「出たから霞どうぞ」

「ん。じゃあ入ってくる」


霞と交代するように膝枕が雫のものに変わる。

雫の体は風呂上りであったかいを通り越して少し熱いくらいだ。質感もいつもの感触よりしっとりとしている。


一度風呂上がりのワンピースの中ってのをやってみたい気がしているんだが、たぶん暑いよなあ。


「どうしたの?」

「なにが?」

「なんか考えてそうだった」

「あー……まあ……」


雫はのぞき込むように俺を見た。まだ少し濡れた髪が重力でおれにかぶさるように落ちてくる。俺の要求をなんでも受け入れる雫の目は、俺の目よりも澄んでいる。コイツを俺の要求で汚していると思うとなんとも言えない気分になる。


「いや、まだ早いからいい」

「?そう……?」


雫はよくわからないと首を傾げた。


「ああ、冬にする」

じゃないとこれからのシーズン暑くて死ぬ可能性もある。下手にやってハマらないようにしなければ。

「それは……だいぶ先だね……」


そして夕飯の後、すっかり熱がとれた雫のワンピースの中を堪能してから1日を終えた。


それにしても……雫のヤツ、いつのまに紐パンなんて買ったんだ……?

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