第2話 ダウンバースト

 木の葉がザワ……ザワ……っと囁く。

 クラウンは自分のトリガーの表示をみた、戦空のレベルを知りたかったからだ。

 戦空 能力風 100000000レベル。

「!?………いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、十万、百万、千万………一億レベル……!?」

「おい……嘘だろ何でそんなにレベルが高いんだ……」

「これはもしかして…戦空くんの潜在能力?」

「兎にも角にも戦空、地面に向かって軽くグーパンチしろ、それですべてにケリがつく」

「? おお!」

 戦空は軽く地面をパンチする、すると突然地面がまるで空手のかわら割りのようにグランウンドが真っ二つに割れた、次にグラウンドが風で円形にでかいクレーターが出来るほどの衝撃波が炸裂した、その衝撃波でアイアンゴーレムが粉々に砕け散った。

 EMは心の闘い、三ツ矢が使っていたEMの、レベルを知りクラウンは驚きと絶望を同時に味わい。その心の揺れ動きがアイアンゴーレムをボロボロに崩れ去ったのを表している。

 もっとも精神状態が最高潮でもまるでプリンを食べるかのように負けるとは思うが、この空を切る空振りだけで十分すぎる威力を持っていたのだ。空は割れ下降気流が地面に衝突し四方に広がる風の災害を引き起こした、とたんにゴオオと暴風が引きおこる。


 ――決着がついた。


 結界を貼っていたこともあり、。ゲーム機、EMの修復機能で。すべての建物が元通りに戻ってくれた。もし結界を張っていなかったら大惨事である。クラウンはそそくさと退散していった。

 4人は場所を変え、三ツ矢家のお寺へ上がり込むことになった。

 桜中学校を卒業している二人は、この学校の近くに住んでいる。

「改めましてよろしく、みことよ」

「三ツ矢だ」

「凪ノ唄夜鈴(なぎのうたよすず)です」

「浮遊戦空(ふゆうせんくう)だ」

 夜鈴は今回起こったことを思い出しながら言う。

「それにしても……まるでダウンバーストね」

「ダウンバースト?」

「下降気流が地面に衝突した際に、四方に広がる風の災害。それがダウンバーストよ」

「うっし決めた」

「何が?」

「あの必殺技の名前はダウンバーストだ!」



 西暦2021年5月15日。

 場所は三ツ矢家のお寺。草木は手入れされていなく放置され、人の住んでいる気配は無い。そこへ戦空、夜鈴、三ツ矢、みことはやってきた。

「そういえば言ってたわね「巫女ヒミコ様の命により抹殺する」てヒミコって誰?」

「そいつが悪の親玉なんだな!」

「ヒミコ…聞いたこと無い人物ね」

「何にしてもみことを傷つける奴は許さねえ」

「三ツ矢……ありがと」

「お……おお」

「いきなり凄まじいノロケ、そもそもあなたたち何者?」

「そうね、それも説明しとかないと、彼女の事も言っておかなきゃだし」

「彼女のこと?」

「ねえ二人とも神様って信じる?」

 みことに対して聞かれた質問に「信じる」「信じない」っと答えを短く返す戦空と夜鈴。

 二人で全く違う意見が出てきた。

「ちなみに何で?」

 戦空と夜鈴は答える。

「なんかいそうな気がするから」

「神様なんてそんな非現実的存在いるわけないでしょ」

 全く意見の食い違う二人にすこし驚きながら、みことは事のあらすじを説明する。

「ふうむ、よろしい。それを踏まえたうえで私の事を説明するね」

 みことは語りだした、自分が歴史的に代々受け継がれる巫女さんだということを。

 そこでは神下ろしという儀式があり、神様を体内に憑依してお告げを聞くというものだ。

 現代日本である為に今では古いしきたりのようになり、祭りごとぐらいでしかその儀式をやらないとされている。

「なんやかんや言ったけれど。本当は、お祈りをするだけで入れ替われるんだけどね」

「「入れ替わる?」」

 とみことは簡単そうに戦空と夜鈴に話す、そして実際にやって見せた。

 パンパン! と二拍手一礼をする。

 祈る、神様に頼み事をするかのように……。すると、みことの束ねている長い髪の毛がスルスルとほどけて結んでいた髪が自由になった、そして色が栗色から銀色に変わる。


「ほい、呼んだかえ」


 若干戦空達2人より年下の、幼稚園児っぽい口ったらずのロリ声に変わった。あっけにとられる戦空と夜鈴。ファンタジーだと、無駄に歳を食った幼女の神様のような、そんな雰囲気だ。

「ちょっと雰囲気変わったな」

「え?何? 二重人格?」

 三ツ矢に嬉々として語るみこと、に神威憑依合体した星明幸。

「あ―! そうだそうだ! 三ツ矢! 今度の大会の予選の仕方考えたぞ!」

 三ツ矢に嬉々として語るみこと、に神威憑依合体した星明幸。

 まるで子供が新しいおもちゃでも見つけたかのように。そして、見つけたから一緒に遊んで欲しそうに、だ。三ツ矢は「何だよ……」とまるで恋人との会話を邪魔をする友人のように返す。

 星明幸は、メモ用紙にさらさらと文字を描き始めた。説明するのは紙の方がいいと判断したらしい、そしてそれを3人で見る。

 予選、十二の課題。最初は一人を救え、次は二人を救え、次はチームを救え、次はクラスを救え、次は学校を救え、次は市を救え、次は県を救え、次は国を救え、次は地球を救え、次は月を救え、次は太陽系を救え、次は銀河系を救え、本戦出場、本戦はトーナメントにて行う。

「……なんだこれは、子供のらくがきか……」

「ふふふ、我が一晩中うんうんうなって考えた最高のアイディアだぞ! どうじゃ!」

「まて! 何だこの課題は! 最初の方はなんか出来そうな気がするが、最後の方とかもうわけわからんぞ!」

「知らん! 先に言っておかないと後から規模がでかすぎると苦情が出てきて、しょうがないから予選を設けるようになったんじゃよ!」

 混乱した夜鈴が横槍を入れる。

「まって、これ何……大会?」

「第一回が終わったから、第二回EM大会の予選表じゃよ」

「格闘大会みたいなものなのか」

「そうそう、この【神のゲーム機】EMを使ってな。それの一番を決める闘いじゃ」

「そいつらってツエエのか!」

 戦空は目をキラキラと輝かせる、星明幸は同じく目をキラキラさせながら答える。

「超強いぞ!」

「この本戦トーナメントで優勝したらどうなるんだ?」

「最強の称号、EMを名乗ることができる!」

 戦空はかなりテンションが上がる。

「うおお! うちワクワクしてきたぞ―早く闘いて―!」

「その意気じゃ! ……っと―、セバスチャン!」

 そう言いパチンと指を鳴らす、とたんに70歳ぐらいの老人が黒い紳士服姿で現れる。

「は!」

「セバスチャンには神道社という会社で、私の世話係をさせている、あと今大会の運営など、この運営が結構大変なのだが……」

 戦空と夜鈴は、頭に疑問符を浮かべ不思議そうに感じる。

「最後にわらわの護衛達を教えといてやろう、こい! 神聖12星座」

 突然、黒マントのやから達が12人ずらっと集まった……。

 顔はフードを被っていて素顔までは見えない。

「わらわを守る12人達じゃ、こいつらはさっき話した本戦のトーナメントの出場者で上位に入る実力者達だ。まあ性格に難があるやつも結構いるが、わらわが呼べば集まってきてくれる。戦空とか言ったか、そなた強いやつと戦いたいんだったな、じゃあ近いうちにこいつ等とも戦うかもしれん期待して待ってろよ」

「うん! わかった!」

「夜鈴とやら、どうも私が神様だ! 以後よろしく」

「はあ、どうも……」

「ああそうだ、お前らなんだか面白そうだし、折角だからEMの大会に参加するか? なあに私はEMを広めるために世界中を旅してるんじゃ。じゃからお前さんたちに新しいトリガーを渡しておく。困ったときはみことと三ツ矢に聞け。ちなみに戦空の能力が風で夜鈴の能力も神経だ」

 そう言い戦空と夜鈴にトリガーを渡した。

「神経?」

「身体能力が上がるタイプの能力じゃよ、みことも神経を操る能力者だ」


「ではまた何かあればその時に、さらばだ―! あ―はははははははははははははは!」


 星明幸はそう言いみことは高らかに笑って見せた……そして少し間を置いた後平静を装いほどいた髪をまた縛った。若干シュールというかコミカルさが見て取れる。

「こんな感じね、ちなみに今のEMは三ツ矢だから。だからマスター三ツ矢って呼ばれてる」

「ええ―! お前そんなにすごいやつだったのか―!」

「……」

「なあちょっと戦おうぜ―」

「断る、ガキのおもりはごめんだ」

「え―」

 三ツ矢は心の中で考える。

(だがあの潜在能力は何だ……初めてゲームをやってレベルが一億だと…故障か何かか…)

 みことは質問攻めになることを見越して早々に切り上げる形をとった。

「さあさあ二人とも質問はこの辺にして学校に行ってらっしゃい、わからないことは学校が終わってから。ね」

「わかったわ」

「へ―い」

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