第1話 目覚めろ、真のヒーロー。


 数日後。創造歴2020年、遥か彼方の地球で。日本国、桜市。

 山と海に挟まれた町並み。ここに、一人の少年の物語が動き出そうとしている。

 少年の名は浮遊戦空(ふゆうせんくう)。

 主人公、戦空は考えなしに考える。

 面白いとつまらないで言うと日常はつまらない。毎日同じことの繰り返し、つまらない。

 だからうちは面白いことを探すために、毎日家を出る。

 外は毎日が冒険で、新しい事を探して外を駆け回る。

 家の中にずっといるのは気がめいってしまうので嫌だ。

 しかしだからといっておなかが減ったら家に帰る、そんな毎日の繰り返し。

 宗教の勧誘とかで耳にする言葉。あなたは神を信じますか? うちは信じる。

 だってこんなつまんない日常の中、神様なんて居たら面白そうじゃないか、ゲームみたいに最終的には神を倒してみたいと思う。そんなつまんない日常の中に刺激が欲しい。

 そんな事を考えるうちは、いつものように目覚まし時計にうなされながら起きるのだった。


 早朝、少年は寝ている。自分で起きようとする気配は全くない。

 目覚まし時計もセットしているのだがその役目を果たしていない。

 ――ピピピピピ! と音はけたたましく鳴るのだが、それを無意識に反射的に消して。

 また寝てしまう、もはや日常茶飯事な出来事なのだ。そしてこれも、いつも通り。

 繰り返し。だが今回は人生初の転校初日。という大事な日なのだが……。

 そして彼はようやく目を覚ます。

「!? やべ―遅刻だ―! いってきま―す!」

 朝の「おはよう」を通り越しての第一声は、「遅刻だ―」である。

 親に対して、「何故起こしてくれなかったのか!?」とか。

 そんなことを聞く暇すら惜しい、そんな登校風景だ。

 走る戦空、そして路地から人影がゆらりと、戦空の前に現れる。

 普通の人間ならすれ違って回避できるところだが、戦空は道を譲るという思考が無く。

 急いでいたこともあり、譲る気が無かった。

「うおおおどけ―!」

 ガン! と木刀の打撃音が響く。戦空の頭に直撃した。

 すこし間を置いてから、木刀をふり抜いてきた少女、名前は凪ノ唄夜鈴(なぎのうたよすず)、彼女は涼しい顔で答える。

「あのねぇ……あんたがどきなさいよ」

 少女の姿に釘付けになる戦空、だがそれもすぐに立て直しあた。

「うるせえ―! なんだお前!?」

「何だって何よ、あんたが突進してきたんじゃないウシみたいに」

「ウシとは何だ!」

「ウシじゃない! ただ直線に走って前に人がいることも知っていながら「どけ―」ですまして少しは避けるとか学習できないのあんたは!」

「なにい!?」

「大体ね、あんたそんなに急いでどこに行こうとしてんのよ!!」

 若干の迫力にも気圧されないで反論する戦空。初対面でここまで反逆されるのも珍しい。

 落ち着いた所で、話題を本題に戻す。

「いや……桜中学校だけど………」

「はあ? 桜? 何言ってんのあんた? 桜にあんたみたいなやついないわよ! 私はね、生徒323名の顔と名前がインプットされてるのよ!」

「いや……だから転校生なんだよ俺はよ……」

「転校生?」

「そう」

「フッ! あはははははは!」

「な……何で笑っているんだよ!」

「だってあんたが、フランケンシュタイン=フルコースの変わりだなんて、可笑しくて」

 交換留学生という風習は無いが、偶然、兎に角そうなったのだ。

 何処のツボに入ったのか解らないが笑い転げる夜鈴。

「だれだそいつ!」

 当然戦空はその人物を知らない、面識も関係性も何も無い。

「じゃあ一緒に学校へ行こっか、こっからなら徒歩数分でで十分間に合うし。でもこれでわかったでしょ、あたしが上で、あんたが下ってことが」

「何もんだ、お前……」

 しばらく二人で歩道を歩く、夜鈴は少年の事が気になったので、戦空に語り掛ける。

「あなたなんて名前?」

「戦空、世界一の武道家になる男だ!」

「私は凪ノ唄夜鈴、夜鈴って呼んでね」

「夜鈴って呼べばいいんだな」

 戦空は夜鈴の耳元を見る、耳たぶには小さな鈴がチリンチリン、と囁くように音が鳴った。

 そして他愛ない会話を済ませた後。桜学校へ到着した。



 とある宇宙、小さな宇宙船アポロ500号の船内。

 決して豪華ではないが、最大12人が入れるくらいのスペースがある。そこに高校生の少年少女。三ツ矢とみこと、という同年代の2人が乗っていた。2人は長旅に疲れていた。

 ので、里帰りのつもり。半ばデート気分で地球の桜中学校へ帰って来た。


 桜中学校。ここで戦空と夜鈴は思いもよらない事件に遭遇する。

 戦空、夜鈴、三ツ矢、みこと。4人が学校へ偶然出会う。

 その時、キーンコーンカーンコーン! と学校のベルが鳴る。

 そのチャイムを異世界への合図とばかりに、学校のグラウンドが謎の結界が貼られる。まるで世界から隔離されたかのように止まってしまっている、時が止まったかのようだ。

 その中で動いているのは、偶然居合わせた4人だけ、そこへ黒い闇が発生した。中から、女の黒魔道師のような姿の人物が現れ。

 黒魔道クラウンがみこと目がけて攻撃してきた、「危ない!」と思い構える三ツ矢だったが。

 武道に長けた戦空と夜鈴が殺気を感じ、いち早く敵の攻撃をガードした。「大丈夫か! に―ちゃん達」と叫ぶ戦空、余計なことをしやがってと思う三ツ矢 敵の事を観察する夜鈴、突然の事に面食らうみこと。

「何こいつらが持ってるあの腕時計、。何故襲ってきたの? まずこいつらの目的は何?」

 ぶつぶつと考えを口ずさむ夜鈴。クラウンは初対面の4人に対して、軽く挨拶する。

「やっと会えたわねマスター三ツ矢! 神の巫女みこと! 我が名は黒魔導師クラウン! 巫女ヒミコ様の命により! 同じ巫女である、明浄みことを抹殺するわ!」

 そこへ三ツ矢が。「狙いはみことか、なら手加減はしね―ぜ!」と腕時計型の神機を取り出す。

「エレメンタル! う!」

 三ツ矢の動作に古傷が悲鳴を上げる。みことが心配な声色で言う。

「大丈夫三ツ矢!?」

「この前の戦闘が響いちまったようだ……」

 それを見て、敵のクラウンは……。

「な~んだクラちゃんがっかり―、てっきり【神の騎士】が相手をすると思って、この魔界の上級騎士アイアンゴーレムを呼んだのに~。これじゃあエレメントの無駄使いじゃない」

 がっかりした声で言う。そのあわただしい内容に、置き去りにされた戦空と夜鈴は身構える。

「なんだか知らね―が、お前悪党だな! 悪い奴はうちがゆるさん!」

「穏やかじゃないわね。この学校での風紀を乱す奴は、生徒会長である私が許さない!」

「おまけにいるのは、ただの子供が二人……」

 三ツ矢は子供たち二人に対しても。

「おいお前ら危険だ、逃げろ」

「「嫌だね! 逃げない!」」

 雄叫びと共に、アイアンゴーレムに突進する二人。勝てないと感知したみことは。

「危険よ! ただの子供じゃ相手できない!」

「ふん! アイアンゴーレム召喚!」

 ゴオオオオ。と鋼鉄の鎧を身にまとった巨兵が、魔法陣の上から出現した。子供二人に乱暴に剛腕な腕を上げ攻撃を繰り返す。とても子供二人で敵う相手ではない、それに対し何の前触れも無く、キレた戦空は……。

「畜生、おい卑怯だぞ! 本人は戦わないなんて、素手で勝負しろ―!」

 このままではまずいと感じた三ツ矢は、2人の中学生に【神機】を投げた。

「使い方は~……」

 その時、脳内に直接使い方の情報が流れる!

「わかった!」

 戦空はトリガーを腕へつけた。一緒に渡されたコイン。

 メダルを親指で弾き宙へ浮かす。飛んだメダルは回転し~以下省略~。

 プレイヤーは声を張り上げる。

「エレメンタル!」

 西部劇のガンマンが、拳銃を抜くように水晶を割る。

「ドロー!」

 エレメンタル発動! 戦空は『風』・夜鈴は『神経』の能力者になる。

 学校全体が風でなびき満たされる。木々がゴオォ! と風に揺れた。


 目覚めろ、真のヒーロー。

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