第10話

「あぁ~、何か面白いことないかなぁ~」


 うさぎの吉法師に連れられ数刻、山の奥深いところまで来ると二足歩行のヤギがもしゃもしゃしている。

 あれがバフォメットか?人畜無害な間抜け面だが・・・


「やや!そこにいるのはうさぎさんとニンゲンじゃないか!あれ?なんか変なのも2人いるね」


「おっ、女神様、変なモノ扱いされてんぞ?」

「あら、こんな美少女女神様を指して変人扱いだなんて、タローも偉くなったわね?」

「そっちの人の雄っぽいのはこの世界の人間っぽく無いな。隣にいるのはそもそも人間じゃ無いな。かたちだけだな。」

「あれまあ見抜かれたぞ。」

「まぁ私は、超絶美女神ですから!そりゃー一目見れば普通では無いのはわかるでしょうね。」


 薄い胸をそらせて鼻息荒くドヤる。これくらいならかわいいもんなんだがなぁ。


「ねえ、タロー。今かわいいって思った?」

「思ってない。」

「ふふーん?しょーじきに言えば良いのに!」


 女神が指でつついてくる。鬱陶しいからやめて欲しい。かわいいと一瞬でも思ったのは浅はかだったな。


「ねぇねぇそこのお二人さん、イチャイチャしないでよ。というか僕になにか用事があってきたんじゃ無いの?」

「そうそう。そこの異世界人のタローがどっかの村から依頼を受けてここまで来たのよ。」


 バフォメットの目が赤く光る。

「どういう依頼なの?」

「んーとね。山を荒らす奴がいて困っているのでなんとかして欲しいって。」

「そっかー。僕たちは木の芽を食べているだけだけど・・・。そういえば少し前にニンゲン達が山菜採りに来ていたね。」

「それで?」

「僕たちの食べる分が減っちゃうから、出て行って貰うようにお願いしたんだけどね、断られたのでこの角で串刺しにしたんだよ。そしたらアロハシャツを着たじいさんがションベン漏らしながら逃げていったね。あれは傑作だったよ。」


 愉しそうに嗤う。とは言えバフォメットの言葉を信じるなら、餌場を荒らしたのは村人の方だからバフォメットを討伐する理由にはならんな。


「そういえば、ニンゲンは畑で色々作るんでしょ?今度奴隷として連れてこようかな。手始めに皆さんに奴隷になって貰うね。」


 バフォメットから瘴気が漏れ出る。魔獣化したらしい。俺たちを奴隷にしようとは良い度胸じゃないか。

「ふぉふぉふぉ。儂らを奴隷にするとな?舐められたもんじゃわい」

「痛い目を見ないうちに僕の奴隷になったほうが身のためだよ?ほら。」


ドスッ!

「ごほぁ!あっ・・・がっ・・・」どさっ


「し、神官様!」

「大丈夫だよ。急所は外しているし殺しはしていないよ?」


 キュティが飛び出さないよう女神に抑えて貰う。

「俺も戦闘職ではないのだが・・・日本人に流れるカマクラの血が騒ぐな・・・」

「カマクラ・・・?」

「ああ、俺たちの祖先はカマクラ武士という戦闘民族なんだ。人質をとられたら人質ごと切り捨て、城に逃げ込んだら死んだウシを投げ入れ、調練の際に家の前をたまたま誰かが歩いていたら射かけるなど、傍若無人が服を着て歩いていたようなもの達なんだ。流石に現代でそんなことをする奴はいないがな!」


 カラカラと笑うが、キュティと女神は若干引き気味だ。一体何がおかしかったのだろう?


「ふん、それがどうした。そんなことを言うならそうだな・・・この爺が殺されたくなければさっさと帰るんだ。」

「し、神官様!」

「タローどうするの?」

「殺っていいのか?」

「お、鬼!悪魔!わしはまだ死にとう無いぞ!人質を助けるのが当然であろう!?」

「えーめんどくさいー。まあ帰るってなら殺されないみたいだし?俺はいったん帰るね。」

「え、帰るの?」

「いや、君、帰れって言ったよね?」

「言ったけどさ、ここはバトルする流れなんじゃ無いの?」

「いやー俺さ、平和主義者なんだわ。戦わずにすむならそれが一番良いと思うんだ。めんどくさいし。」

「さっきのカマクラの血の流れとかも全く意味なしてないよね?」

「んーまぁほら、ノリってやつだよ。」

「くそー。この役立たずの爺め!」


 バフォメットはどうやら業を煮やしたらしい。神官が適当に放り捨てられる。

「この俺が貴様らを易々と帰すと思ったか!この地に踏み入ったのが運の尽きよ!しねぇ!」


 どうやら一戦しなければ帰れないようだ。やれやれ困ったもんだ。


つづく?

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