第9話

 さて、依頼にあった山に到達したが、なんの変哲もないただの山にしか見えない。少し変わったものと言えるのはうさぎがお茶会していたり、狼が羊に追い回されたりしているくらいか。


「思ったほど変ではないように見えるが・・・。」

「タローさんの世界ではうさぎは紅茶をのんだりするのですか?」

「んー。なうさぎは紅茶のむかなー」

「ふぅん・・・。不思議な世界ですね。」


 キュティは不思議そうに眺めている。確かに普通のうさぎが茶を楽しむとは思えない。・・・これが村長の言っていた困り事か?不思議だが困るほどでは無いように思う。


「とりあえず話しかけてみるか」


 片手を挙げて営業スマイルで話しかける。


「はろー。今日はいい天気ですね。」

「やや、これは人間じゃないか!こんなところで見かけるとは思わなかった!」


 人の良さそうなうさぎが椅子を勧めてくる。一礼し、向かいに座る。


「珍しいな、このあたりには滅多に人間は来ないんだ。っと申し遅れました、僕は吉法師というんだ。」


 おいおい第六天魔王ついにうさぎになっちまったよ。人畜無害な面してなんかえげつないことしてくるかもしれんな。


「君たちは、何しにこの山に?」

「ああ、すまない。俺は山田太郎という。よその世界からそこの女神に拉致されてきたんだ。」

「わー女神様って怖いんだね。」

「あらぁ、怖くないわよぉ?ねぇ、タロー?」


 無言でいたら殴られた。十分凶暴じゃないかと思う。神官とキュティが自己紹介する。


「ふぅむ、なるほどー。つまりそのムラオサって人に頼まれてここの調査に来たんだね。」

「理解が早くて助かる。」

「山を荒らすやつかー」

「心当たりは有るのか?」


 うさぎの吉法師は腕を組み考え出す。記憶をたどっているのかと思えば、おもむろに抹茶を立て始めた。


「ささ、お茶でもどうぞ。・・・で山を荒らすやつって言うとあいつかな。」

「いただきます。・・・うまい茶ですな。あいつとは?」


 うさぎの吉法師が言うにはこの山の奥にバフォメットの集落があり、時折麓まで降りていくということらしい。


「なるほど。対象はバフォメットか。元の世界ではおとぎ話の存在だったんだがな。」

「どうする?行くの?」

「まぁ依頼だしな。俺だけで行くよ。」

「面白そうだし私も行くわよ。」

「ふぉふぉ。せっかくここまで来たからのぅ。儂も行こうかの。」

「じゃあ私も行きますね。」


 うさぎの吉法師を先頭にバフォメットの集落へと向かうこととなった。

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