第8話

 うぅ・・・ん。

 なんだか外が騒がしいですね。神官様は昨晩木の枝にぶら下げて差し上げましたが、またよからぬ事をしているのでしょうか。あら、タローさんがまた殴り飛ばされていますね。女神様に不敬を働いたのでしょう、仕方の無い方ですね。久しぶりに床に雑魚寝でしたから節々が痛みます。お布団もってこれば良かったなぁ。

 

 ストレッチで身体を軽くほぐせましたので、食事を用意しましょう。タローさんの世界では女性も料理をなさるそうです。この世界では台所は神聖なので女人禁制とかいって男性しか料理が作れませんの!私だってお料理したいのに!


 という訳で今のうちに料理をしてみようと思います。えーと・・・包丁でお野菜を刻んで、調味料で味を調えれば良い。たったこれだけです!とりゃー!



ドンッ!ゴンッ!どぉん!

 突然の音で目が覚めた。なんだこの音は・・・ログハウスから?神官は・・・そこに居る。女神もそこでのけぞっている。となるとキュティに何かあったのだろうか?女神と神官に目配せをして、ログハウスに突入する。玄関の両脇を神官と女神が固め、神官がそっと扉を開ける。


 エアガンを構えて壁沿いに走る!続けて女神、神官が突入!・・・キュティが泣きそうな表情でこちらを見てくる。台所が燃えているし、やはり何者かに襲われた様だ。敵の突入孔は・・・あれ?ないな。敵影も・・・ない。


「キュティ!なにがあった!?」

「えっ・・・あっ・・・あの!」

「随分怯えてるわね。燃えてるし、誰かに襲われた?」

「え・・・いえ・・・あの・・・」

「よく燃えとるの。さっさと消火するぞい。よっと・・・」


 いつの間にか和尚が消化器を持ち出し火元を消していく。炭になった部分にもしっかり振りかけて再燃を防ぐ。


「で、これは?」

「うっ・・・だっでぇ・・・あだしだってぇ・・・お料理じだがっだんだもん・・・」グズッジュルッヒック

「ほらほら、良い年頃の子が鼻水だらけにしちゃ駄目よ。はい、チーン」


ズビー!ジュルルル・・・

「爆発したのはオーブンのようじゃの。」

「もしや、これが爆発クッキング・・・伝説の・・・。ってそれはそれで、オーブンなんていつの間にできたんだ?昨晩は囲炉裏だった気がするんだが?」

「あぁ、囲炉裏を持ち上げるとオーブンになる様に作っておったのじゃ!」


 なんと便利な設計だ。囲炉裏の灰が落ちるんじゃないかとか色々突っ込みどころはあるが。


「そうかぁ、キュティは料理残念組かぁ・・・」

「タロー、あんまりそういうことをストレートに言うのは良くないわよ?」

「そうだな。すまなかったキュティ。で、何を作ろうとしていたんだ?」

「えっどね・・・。野菜とベーコンのオーブン焼き。」


 それでなぜ爆発するのか?残念ながら常識人である俺には理解ができない。黙っていると神官がオーブンからほぼ消し炭になった料理を取り出す。

「これが、オーブン焼き・・・?」

「ね?神官様、食べてみてくれますか?」

「わ、儂か?」

「ちょっと食べられそうなところ有るじゃない?」

「し、仕方ないのぅ。女神様にも言われては断れん・・・。ええい!」


 ◇


 神官の体がとれたての魚のように跳ねる。息も荒くなって少しよろしくない状態のようだ。あっ動きが止まった・・・。

「し、神官様?」

「・・・」

「このままだとあの神官死んじゃうかも。」


 なんだと!ここは一つ手助けをせねばなるまい。

「神官、秘蔵の写真集はもらってよいか?」(こそこそ)

「いかん!あれは儂の大事なものじゃ!」


 ものすごい勢いで神官が飛び起きる。さっきまで瀕死だったのに大したものだ。秘蔵の写真集は適当だったがうまく行って何よりだ。


「よかったー。ところで神官様?」

「なんじゃ?」

「秘蔵の写真集とはなんですか?」

「ここで話したら秘蔵ではなくなるじゃろ。」

「それはたしかに!」

「タローさんは黙っていてください!帰ったら詳しくお話伺いますからね!」

「ま、とりあえず依頼のあった山まで行こう。」


 荷物を整理し、小屋を出る。目指す山はすぐだが朝から疲れたぜぃ・・・。

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