第36話 さよならの街角
物語の
乃白瑠達は再び優城美町が書いた『誘拐犯』から生まれた『想像国家』にダイヴした。
『剣撃文庫』の冒頭は北海道大雪山から始まっている。
乃白瑠達は、犯人の梶瓦麗人を追って、彼が隠れている山小屋に向かった。
このままでは、乃白瑠が書いた『剣撃文庫』と同じような展開になってしまう。
言葉の輪廻から解脱する方法として、その時いなかった楓さんに予想外の行動をして貰った。突然歌を歌い始めた楓さんに改めて惚れてしまった我王が、トリップアウトせずに、この場に残った。きっかけはいつも小さな事だ。歴史を変えるのもちっぽけな事。
そして
すると梶瓦は、罵倒大王の力を借りて、子供を誘拐する鬼子母神を召喚した。
自分の子供達を呼んで戦わせる鬼子母神。
だが
空気中の水分がキラキラと凍結し、気象の妖精達が幻想的な言葉を交わしている。
その時、皆は釈迦如来の言葉を聞いた。人類は皆私の子供だと。
罵倒大王の憤怒尊が穏やかになり、馬頭観音様に戻った。観音様本来の菩薩形に。
しかし、これは乃白瑠が考えた筋書きではない。明らかに……。
「まさか、これも甲乙龍之介の書いたシナリオとでも言うのか?! 乃白瑠君!」
編集長は声を荒げる。
物語中でも此処で大音声でウィズダムが叫ぶ。だが、甲乙龍之介は乃白瑠の更に上をいっていた。その怒声が響く山の山腹から雪崩が起きたのだ。
皆はその雪崩に巻き込まれないように脱出した。
「そうか。そうきたか……」
我王がそう呟いて、沈思黙考する。
そこに小桜と楓が必死な形相で訴える。
「お願い乃白瑠君! 龍之介も救って!」
「お願いします! 乃白瑠さん! 私の姉も龍之介さんに合体しているんです!」
「そのつもりです」
「私は、子供が欲しい愛王流花の為にピーターパン、梶瓦麗人を使って子供の魂を誘拐し、彼女をウェンディーにするつもりだったのだ……」
悲しい甲乙龍之介の呟きに心を奪われた小桜と楓達。
「でも、お姉さんの為とはいえ、恋人だった小桜さんとユラリアさんが可哀想……」
優しさがスピードアップして、涙の二乗に思い出を足した、その重さで潰れそうになった小桜に、そっと視線を送る楓の心に去来するのは、哀愁のラヴソングだった。
今なら優しくなれるのに ああ……。失くして輝き知ってゆく……。
ああ、何処かで偶然、逢うのなら、ああ、輝くあなたで居て欲しい……。
ああ……。何処まで走れば掴めるの。寂しい二つの幸せを……。
(『さよならの街角』 歌結城梨沙)
赤い光弾ジリオンオリジナルビデオアニメ(OVA)「歌姫夜曲」ED
第36話 了
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