53 君の隣で

 恥ずかしくて死ぬ……

 見て欲しいのに見ないで欲しいと思っちゃう。


 でも、泉君は私の方を見て固まっている。


「な、何か変かな?」

「ううん、そうじゃなくて……あの、すごく綺麗だなって」

「や、やっぱりおかしいよねこんなの!私、着替えて」

「……もうちょっとだけ、見たいかも」

「う、うん……」


 水着って海で着てたらそんなに恥ずかしくないのかもだけど、こんな部屋の中でしかも明るい真っ昼間からだと何かそういう趣味がある人みたいで、とても変態みたいだ。


 でも、そんな私を気遣ってかすぐにタオルケットを私に被せてくれた泉君は、もう目のやり場に困った様子で伏せてしまう。


「ごめん、やっぱり服、着た方がいいよ」

「う、うん……」


 その一言がとても嬉しいようで悲しい。

 我慢しているだけなのか、それともやはり私では泉君は変な気持ちになったりしないのかという葛藤が私の中でぐるぐる。


 もう、手を出されても何をされてもいい覚悟は持っているのに、そうならないことにホッとしたりもするし、一体どうしたらいいのかさっぱりわからない。


 だから私は。


 暴走した。


「泉くん……触って」

「へ?」

「私じゃ、いや?」

「そ、そうじゃないけど……いいの?」

「……泉くんなら」


 どこかに潜む冷静な自分は「一体何を言ってるの私!」と盛大にツッコミをいれているが、一方で暴走するえちえちな私は「もう脱いじゃえ!」なんて理性の崩壊したことをそそのかす。


 ちょうどその間に挟まれた私自身は、タオルケットをそっと外して、泉君にピタッとくっついてみる。


「あ……」

「……したい」

「え、ええと、氷南さん?」

「エッチなこと、して、みたい」

「う、うん……」


 泉君がゴクリと唾を飲んだ音が聞こえた。

 

 その後で、彼の手が私の体に伸びてくる。

 あたたかい掌が私の胸に当たると、思わず声が出る。


「あっ」

「ご、ごめん!」

「い、いいよ。くすぐったかっただけ、だから」


 くすぐったい、というより少し気持ちよかった。

 恥ずかしいのに、もう裸みたいな格好になっているせいもあってか私はもっと触ってほしいと思ってしまう。


「え、ええと、じゃあ」

「え?」


 彼の手が下の方に。

 私は思わず足を閉じそうになったけど、でもそんなタイミングでチューしたりしたので自然と体の力が抜けていく。


 ……!?


「あっ、やっ」

「だ、大丈夫?」

「う、うん。き、きもちいい、かも」


 こんなことならシャワーを浴びておきたかった。

 汚いよといっても泉君は「大丈夫だよ」といってどんどん私の体を触る。


 男の子ってこういうこと、みんな慣れてるのかな。

 そう思わせるほど彼は段々とぎこちなさをなくしていき、私は胸や足やちょっと言えないところまで触られて汗ばむとともに火照ってきた。


「はあ、はあ」

「氷南さん、本当にいいの?」

「う、うん。ベッド、いこっかな」


 まだ灯りをつけなくてもカーテンを閉めていても明るい時間帯。

 だから一緒に布団に入って暗い世界で二人っきりに。


「……水着、汚れちゃうから。取っていい?」

「い、いいよ」


 スルスルと、私は脱がされていく。

 人前で裸になるなんて経験はもちろんないし、水着がとられた時にはもう失神しそうなくらい恥ずかしくて彼の目も見れなかった。

 

 でも、なぜか体は自然と彼の方に寄っていく。


 そのまま下も脱いで、私は生まれたままの状態になった。

 やがて泉君も服を脱いで、私たちは布団の中で裸のまま抱き合う。


「氷南さん、あったかい」

「い、泉君も。あ、あったかいし、きもちいい」

「俺、こういうの初めてで、へたくそだったらごめんね」

「わ、私は……泉君とだから、嬉しい」

「氷南さん……かわいい」

「ひゃうう……」


 ちょっと冷静になると今自分がどれだけ恥ずかしい状態にあるかがよくわかる。

 布団の中で密着しているのでよく見えないけど、お互い裸で抱き合うなんてこと、少し前の私なら多分リアルに死んでいたと思う。


 でも、なぜか今は心地好さが勝っていて、このままずっとこうしていたいと思う。


 そんな時、私の足元に固いものがあたる。


「あっ……」

「ご、ごめんおれ、もう」

「う、うん。い、いい、よ」

「あの、じゃあ、ゆっくりするから」

「うん、優しく、して」


 ♥


 初めては痛いとか、あまり気持ちよくないなんてこともたくさん情報としては持っていた(えちちな私は昨夜ずっとそんなことばかり調べていたので)


 でも、そうじゃなかった。

 気持ちいいとかまだそんなのは緊張もあってわからなかったけど、なんか一体感というか包まれている充足感がたっぷりで、私は恥ずかしいとか痛いとかそんなことより幸福感いっぱいだったのだけ覚えている。


 そしてすごく疲れる。

 もう緊張の糸が解けて疲労感が一気に押し寄せてきて、私は裸のまま彼の腕の中で眠ってしまう。


 薄れゆく意識の中で、最後に優しい彼の顔を見ながら夢の中にいけたので、なんか幸せたっぷりだった。


 ……私、えっちしちゃった♥

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