第5話:スーパー四十路大戦(洋子先生と美玲先生がガチ喧嘩?!)

「ふぁ、眠いなぁ」


 昨日は夜遅くまで漫画を読んでいて、寝たのは夜の1時過ぎだ。

 友達に借りたバトル漫画が面白くて、ついつい熱中してしまった。

 お陰で授業中は眠くて眠くてしょうがなかった。しかも、美玲先生の授業だったし。


 廊下を歩くボク――三島惟幾みしまこれちかは、そんな風に今日の反省をしていた。もう絶対夜更かしはしないぞ。絶対にだ。


 と、その時。


「三島君」

「ひっ、美玲先生」


 青髪デコ出しボブの数学教師、美玲先生が目の前に立っていた。

172センチの長身でボクを見下ろし、中華系のキツそうな顔で睨みつけ、非常に冷たい口調でこう言う。


「アナタ、今日の授業中眠たそうにしていたわね」

「あっ、えと」

「夜更かししたんでしょ。全く、アナタって子は……」


 ため息をつき。

 ボクを叱る美玲先生。

 

「ごめんなさい……」

「ふふ、罰としてみっちり個人授業したげる♡ さっきの授業で頭に入らなかったところ、全部叩き込んでアゲルわ♡」

「ひっ」


 逃げようとボクは後退りする。

 だが美玲先生がジリジリと近付いてくる。


「おら♡ 逃げるな♡ 臆病者♡」

「ごべんなざいっ」

「男のクセに情けないわねぇ……ますますその腐った根性叩き直したくなったわあ。私好みの男にしたげる♡」

「そんなのなりたくないーーっ!!!」


 美玲先生がやってくる。

 もうダメだ、捕まる!

 そう思っていた時。


 ぼふっ。


「あら、三島クンじゃない」

「よ、洋子先生」


 後ろから歩いてきた養護教諭の洋子先生にぶつかってしまった。

 清楚な色合いの黒髪ロングをふわりとなびかせ、優しげな印象を受けるタレ目でボクを見て、そしてその先にいる美玲先生を見つけると、


「もしかして、彼女にイジめられたの?」

「えっと……」


 洋子先生は母性溢れる笑顔でふわっと笑い、ボクを抱きしめてくる。


「可哀想にねぇ……こんな可愛い子イジめるなんて……酷い先生ねぇ」

「ちょっと、別に私はイジめてる訳じゃないわよ。これは指導なの。この子の将来に関わってくる問題なの」

「指導ですって、やーね……♡ 伸び伸び育てたほうが立派に成長するに決まってるじゃないですかぁ。……じゃ、保健室でおねんねしよっか♡ 先生が添い寝してあげるね♡」


 そう言ってボクの手を握り。

 連れていこうとする洋子先生。

 だが美玲先生はそれを許さない。

 洋子先生の前に立ちはだかり、ギロリと睨み付けこう言う。


「アンタのそういう所が嫌いなのよ。この淫乱女が」

「あら、そのお歳になってまだ人をイジめることに悦びを覚えてるサド女サマには言われたくないですわぁ……♡」


 バチバチと二人の視線の間に火花が走る。

 この二人はいつも仲が悪いんだよな。

 この前も、職員室に置いている美玲先生のマグカップを勝手に洋子先生が使ったとかで、一日中喧嘩してたし。もうそこまで行くと仲良しなんじゃないかとは思うけど。


 美玲先生は洋子先生を罵倒する。


「このデカパイ女が」


 それに言い返すように洋子先生が言う。


「ドS教師なんかもう流行遅れですよ……? あ、しょうがないかぁ、もうお歳ですものねぇ……♡」


 二人はお互いの胸が密着するくらいまでくっつき、睨み合う。洋子先生のおっ○いは美玲先生よりデッカイけど、美玲先生のおっ○いは洋子先生のより形がいい。その二つの魅惑的な果実がムニムニ擦れる。この二人に挟まれたい生徒は後を絶たないだろうな。って、何の話だコレ。


 と、その時後ろから明穂先生がやってくる。


「あ、先生こんにちは」

「やぁ少年。こんな所で何してるのかな」

「あー、えっと……今は二人の熟女がバトルしてるのを見ているところです」

「な、なるほど。それはとても貴重な……」


 ボクらが話している間にも。

 洋子先生と美玲先生は罵倒し合う。


「お母さんキャラなんか流行らないのよ。ってか、アンタの母乳酸っぱそうなのよ!」

「あら、美玲先生の母乳は何だか苦そうですわぁ……! 赤ちゃんが渋い顔しそう(笑) あ、でもピーマンは食べられるようになるかもしれませんわね〜」

「ぐぬぬ、何よアンタぁ」

「ふふ、美玲先生こわーい♡」


 四十代の女達がガチで罵りあっている光景なんか普通に生きていれば見る事が出来ないだろう。下手なバトル漫画よりも迫力がある。あるいはグラー○ンVSカイ○ーガよりも。


「あ、そうだ惟幾君。先程またショートケーキを買ってきたのだが、食べるかね」

「え、やった。食べます……! わぁい、ボク、ショートケーキだいすきっ」

「ふふ、そうかそうか。よし、じゃあ行こうか」


 二人の熟女が罵り合う中。

 ボクらはその場を後にするのだった。

 今日は四十路の女達のガチバトルという、すごいもの見ちゃったな。こんなの見ちゃったら、もう普通のバトル漫画じゃ物足りなくなっちゃうよ!


 なんて、くだらないことを考えるボクだった。


 




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