24 ベイカースワンプ
コンパスの通りに進むと、足場の悪い沼地に出た。木々がうっそうと茂り、じめじめとしている。
水は透き通っていて、水面にはハスの葉や流木などが浮いている。
水中を泳ぐ魚の目つきは非常に鋭い。
刺激しないように、細々と続いている陸地を慎重に進む。
「……ここさあ、本当に通らないといけないの?」
「俺に言われても困るんだけどな。
また、変なところに来ちまったか?」
「俺の記憶が正しければ、ここだけは通っちゃいけなかったと思うんだよなぁ。
メッタクソ面倒な奴らがいたよーな気がするんだよ」
これまで散々、面倒な奴らを相手にしてきた。
通ってはいけない場所と言われるのは初めてだ。
水しぶきが上がり、巨大な影が横切った。
すんでのところで飛び跳ねた瞬間、歯の噛み合う音が聞こえた。
「……マジかよ」
つぶらな瞳のワニがいた。丸々と太り、口もかなり大きい。
先ほどのクマとどちらが面倒だろうか。
「何してんだよ! 早くしねえと管理人がブチ切れる!
後で説明するから! めっちゃ来てんだって!」
言ってる間にも、何体もワニが姿を現している。
会話をしている暇すらない。背を向けて走り抜ける。
水しぶきがかかり、生ぬるい空気を感じる。
ぐうせん真正面から飛び掛かってきたワニを殴りつけた。
運よく急所に当たったようで、そのまま大きな体が横に倒れた。
精霊の顔はさらに青ざめる。
「もっとやべーのが来ちゃったよ! だから走れって言ってんじゃん!」
水中から蔦や虫などをくっつけた泥人形が起き上がった。
鳴き声を発しながら、腰を屈める。
勢いよく飛び掛かるも、蹴り倒せばあっさりと形は崩れた。
どれだけ砕いても、水中から別の人形が現れる。
その数は増え続け、行く手を阻む。鈍足なのが唯一の救いか。
「こんなの相手にしてんじゃねえ、逃げろ逃げろ!」
いくら倒しても水中から無限に湧いて出てくる。
飛び道具は持っておらず、接近戦が得意らしい。
足元をしつこく狙っており、タイミングよく飛び跳ね、闇雲に走る。
時折、精霊の奇声が響く。
どしゃっと背後で何かが崩れた音がした。
泥の塊がそこにあり、気がつけば、沼地を抜けていた。
聞きたいことが多いが、呼吸が間に合わない。
看板の文字はにじんでおり、読めたものじゃない。
「あーもー……やっぱりそうだった」
「何だったんだ、ここは」
先ほどの泥人形はスワンプマンと呼ばれる種族で、この辺は彼らの私有地と化している。彼らはワニ狩りを娯楽としており、狩猟権を握っている。
権利を持たない者がワニを倒すと、権利を盾にして襲ってくる。
この沼地そのものに魔力が宿っており、彼らを倒すことができない。
アンデッドの特性を持つ彼らにとって、都合がよすぎる土地でもあるのだ。
「だから、あんなに急かしてたのか」
「そうそう。逃げるしかないだろ、あんなの」
倒しても立ち上がってくる不死身の種族か。
何があっても逃げるほかないだろう。
落ち着いてあたりを見渡すと、岸辺に小舟が浮かんでいた。
小川の流れも緩やかで、漕いで進めそうだ。
「とりあえず、休憩しねえ?」
「そうだな」
ようやく落ち着ける場所を見つけ、二人は弁当をつついていた。
Result:Success
Roll the Dice:3
Get the boat & Roll the dice twice
Roll the Dice:5,3
Go to Boss:❷
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