21 トートシティ遺跡


綺麗にならされた土から見覚えのある灰色が混じっていた。

アスファルトの道路や崩れてた鉄筋コンクリート製のビルがある。

突如、なじみ深い建物が現れ、思わず壁に手をついた。


「まさか、俺と一緒に来ちまったってのか?」


「え、お前の世界にあんの?」


ここはトートシティと呼ばれている古代遺跡だ。

はるかに高い技術を持つ民族の集落があり、背の高い建物がいくつもあった。

一つの文明を築いていた彼らだが、突如消えてしまったという記録が残っている。

付近で起きた大規模災害や宇宙人との抗争など、様々な議論を呼んでいる。


「建物の材質もこの世界にない物だから、色々な噂があるんだけど。

ここに来てまさかの新説登場だな。ここの住民実は異世界人だった説」


「勝手に話を作るな」


そうは言っても、その説を全く否定できないのが困ったところだ。

多少形は違うものの、どれもこれも自分の住んでいた世界にあった物だからだ。

現代科学に勝るとも劣らない。今までの世界は何だったんだと問いたいくらいだ。


「で、コイツが今のところ一番の有力候補だな」


「……本当に、これがその原因なのか?」


「あくまで噂だけどね」


これだけ高度な文明を築いていた彼らを絶滅するまでに追いやった物を見て、京也は絶句した。それは広場のど真ん中にある小屋の中にあった。

黒曜石で建てられており、朽ちていた建物の中で異彩を放っていた。


扉を開けると、設備がかなり豪華になったトイレがあったのだ。


センサー式の照明、手洗い場にも同じ仕組みの蛇口が使われている。

最も、これは人の魔力を感知して反応する仕組みらしい。

その他にもウォシュレット機能など、無駄に充実している。


さすがに管理する人がいないからか、紙までは用意されていない。


「何でここだけ無駄に発展しているんだ……」


古代遺跡であるにもかかわらず、原形をとどめていること自体がおかしい。


「それは知らないけど、このトイレに取り憑かれて狂い死んだって話さ。

お前の世界のところもこんな感じなの?」


「まあ、大体似たようなもんだけど、人が絶滅する理由にはならないかな」


静かに扉を閉めた。本当に何があったのか、こっちが聞きたいくらいだ。


「この遺跡、いつからあったんだ?」


「ウン千年も前のことだよ……魔法すらない時代からここに人が住んでたんだ」


「なら、こんなの建てられなくて当然か」


「古代人の技術とやらが解明されれば、話は別だろうけどね。

お前の世界とある程度似てるってのが気になるけど、接点がないんだもんなー」


精霊はつまらなさそうに口をとがらせる。

このトイレが異世界転生者の末路だとしたら、まったく笑えない。

不気味な何かを感じながら、この遺跡を後にした。


Result:Success

Roll the dice/3

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