第4話 第七血位パーティー(後)
「父上に認められた錬星術士ならば、正確に、慎重に、言葉は選びたまえ」
リヒテス様の重い諫言により、緊張が一気に高まる。
「はい……各地で語られる伝承や、残された記録から……先ほど私たちが踏破したのは間違いなく【
雲というのは通常、空を覆うようにして広がっている。
だが、【
絶壁とは、地に這いずる人間にかくも天と自分には途方もない隔たりがあるのだと感じさせる雄大な存在だ。しかし、【雲の断崖】が我々から阻んでいるのは天ではなく、【竜の巣】であった。
「私も【竜の巣】をこの目で見るのは初めてですので、未だ確証を突くのは難しく存じます」
暗雲たちこめる巨大な雲を突き抜けた先には、異様とも言える光景が広がっている。
それはひどく幻想的で、そしてひどく不自然だった。
「まさか、山の如き巨大すぎるシャンデリアが、無重力にさらされながら宙に浮いているとは……思いもよりませんでしたので」
鋼色の鈍い光を帯びた燭台に煌めくは、無数の灯などではない。普通であれば蝋燭などが設置されているであろう箇所には、時を告げる古代の遺物、『砂時計』がひしめいていた。
しかも、その砂時計の1つ1つのスケールが桁違いであり、5メルに満たない物から50メルを超える物まで大小様々だ。さらに、かつては固定されていたり吊り下げられていたであろうに、今や空を彷徨う魚の如く揺らめいている物まである。
「おいおいなんだあ、このバカげた数はよお! アークよお、これは腕が鳴るぜえ」
「ええ、バーンズ様。
アークとバーンズの2人は、この光景を見てひどく昂っているようだ。
実を言えば私の内心も彼らとそんなに変わらない。
何せ、あれを目にしたのは
「砂時計型の……神罰兵器……完成させたの、か……?」
「シンバツ、ヘイキ?」
リヒテス様が私の呟きを拾い、説明を求めてくる。
私は自分の中で浮上した予測を確固たるものにするため、鞄の中から【
それらを素早くスクロールしては、目を通す。
「リヒテス様。少々、お待ちくださいませ」
「長くは待てんぞ。何せ、あの巨大な透明の容器には……」
リヒテス様が懸念するのは
遠方を見れる【
「間違いない……【
「レイ。シンバツヘイキとは、巷で噂されている
「……」
思考をまとめるフリをし、あえてリヒテス様の問いに無言で答える。
おそらくこの【竜の巣】は創られてから何千年も時が経っているため、
そしてもちろん私たちも現在進行形で一つの巨大な砂時計の上に立っているわけだ。
「レイ。あれらは何だ? 周囲一帯を漂う宝石の群れのような……」
それは流氷のように美しく、煌めく雨粒みたいに砂時計の周辺に円環を作り舞っている。
もし、【魔導帝国日本】が激しい戦時下により、資源が乏しくなっていたのであれば再利用システムを導入しているはずだ。
そう、記録にも残っている、あらゆるエネルギーや資源を新たな物へと作り直す【
「おそらくは……死んでいった歴代の竜のウロコ、残骸である可能性が高いかと。まさに神をも超える所業です」
そしてそれらは循環する。
新たな竜の礎となるために輝き漂う姿は、まさに竜の巣を守り続ける守護者……連綿と続く、人類が生み出した奇跡の証。
「神をも超える、であるならばレイ。【竜の巣】と呼ばれていたこの場所は、【
「左様でございます。空の
「ふん、貴様だけが聞こえるという故人の
【
だが、その実態は神が創り出した物などでは絶対にない。
私はその確証を深めるために、すぐ傍にあった金属プレートに目を向ける。
すっかり錆び付き、所々に苔や植物が生えてはいるが、しっかりと識別コードを示す表記は残されていた。
:【魔導帝国日本】
どうやらここは375番目に創られた【
どうりで私が把握してない神罰兵器だったわけだ。
しかも、金属プレートの横には端子を差し込む穴があるではないか。
「これは……持ってきた【
そして私は、古代人が残したこの素晴らし過ぎる【星遺物】に夢中になりすぎていた。なぜなら、あれほど辛酸を舐めさせられた相手がいるにも拘わらず、背後から近づく足音に一切の警戒心を抱いてなかったのだから。
人類の偉大さを噛みしめるも、時に人とは、愚かな行為に走る事を失念していたのだ。
たとえそれが
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