第3話 第七血位パーティー (前)
【
だが、この帝国では【遺跡士】の待遇は決してよいものでない。故に【遺跡士】の数が少ないため、代役として【錬星術士】である私が任命されるケースも多々ある。
「レイはさあ、荷物持ちもできない非力なんだねぇ」
耳にするだけで、不快極まる感情がドッと押し寄せてくる声。
道中でチクチクと口撃を挟む人物に、一瞥だけして無視を決め込む。
「レイは役立たずを物語っているねえ。お前の筋肉もそう囁かないのか?」
いや……私は君らみたいな、
アーク、キミが何気なく持ってるその【
なんて言い返してやりたいものだが、そんな余裕はもはやない。
身体的な疲弊はもちろんだが、それよりもまず目の前の光景に心を奪われたからだ。
「ここが【
【
それは突如として近隣に現れた巨大な雲の壁、【竜の巣】の探索だ。
そこまで説明されれば、ああ、なるほどと納得した。
竜、それは古くから神をも殺す存在として畏怖され続けている幻想獣。
そんな竜を生成すると囁かれてる未知の存在が【竜の巣】である。
一説によれば【竜の巣】そのものが【
まあ
神々が絶対であるこの世界で、理解しえぬものがあるとすればそれは【
すぐ近くに危険性の高い【星遺物】が出現したのなら、それの調査をさせるのが定石。
結局は私を利用するために罰を解いたのだと理解すれば、神々とは常に人を食いつぶす存在であると再認識できた。
だがそれは些細な事であり、【星遺物】の収集と研究は私の本願であるのが重要である。が、おそらくは、この愚かしい欲求すらも神は看破し利用しているにすぎないかもしれない。
「おいおいアーク、
「わかってますって、バーンズ様」
今回、選抜された探索パーティーの1人がアークを嗜める。
名をバーンズ・イェーガーといい、炎のような前髪をがさつな所作でかき分ける。
『生命力に溢れている』というのは、バーンズのような男を指すのだろうな。大柄の骨格に、野太い筋肉という名の鎧に覆われた見事な肉体。圧倒的な武を身にまとうその覇気に、さすがは
バーンズはアークよりも上位の【
そんな2人へ不機嫌そうに一言添えるのは全身黒ずくめの中年男性、ノラ・オルガノだ。
「――――五月蠅い、控えろ。リヒテス様の御前ぞ」
こちらもバーンズに負けず劣らずの偉丈夫であり、物凄く渋いナイスミドルである。
古風な葉巻をくゆらし、鷹のように鋭い視線を2人に浴びせれば、当人たちは黙りこくった。言わずもがな、先の2人よりも高位の【
「――して、レイよ。
ノラ・オルガノにその名を呼ばれた美青年が――
この場の誰よりも高位である人物が私に話しかけてくる。
「はい、リヒテス様」
「ふん……して、貴公はこの場をなんと捉える」
リヒテス・ノルディアート。
自らの血族を【
長い金髪を優雅になびかせ、氷より青く透き通った双眸を私に向ける。
女性であれば彼の美貌っぷりに色めき立つだろうが、男の私からすれば冷たい視線に込められた意味を把握するのが重圧であるだけだ。
「おそらく、こちらが【竜の巣】であるかと」
「おそらく……?」
咎めるような問いに私は無言でうなずく。
彼の蒼き瞳は、
リヒテス様が私への不信感を抱くのも当然で、【
その原因は私の判断ミス、もしくは【
リヒテス様の父上が『何かの間違いかもしれない』と私を庇ったらしいが、起きてしまった事実は消せず、失った者の大きさから遺恨や疑念を簡単に払拭するのは不可能だろう。
それ以前にリヒテス様は私への不信感を抱いていたようだが、あの日以降は更に風当たりが強くなった。
「おそらく……だと? その憶測とやらで、貴公は再び私の部下や仲間たちを危険にさらすのか?」
弁明の余地なし、結果で示せとゆるぎない瞳がそう語る。
「レイ。父上に認められた錬星術士ならば、正確に、慎重に、言葉は選びたまえ」
リヒテス様の声音は、聞いた者全てが底冷えするほどの鋭さを伴っていた。
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