10.正体不明のボス戦 (その2)
(前回までのあらすじ)
いよいよ始まるボス戦!
しかし、味方からの有効打はなく敵側からの有効打もない膠着状態になる。
この戦闘はいったいいつまで続くのか?
さて、1ラウンド目の攻防を終えて状況を整理しよう。
まずグラランずからの攻撃は蛮族側に致命的なダメージを通すことはなかった。
一方の蛮族も「当たったら勝ち」な睡眠魔法【ナップ】をやけくそで撃つ以外に前衛のゾーラに手出しができず、【ブロッキング】により足止めされている。
ふむ。膠着状態というわけだ。
このまま互いに何も起こらなければ、判定と抵抗の試行回数が増える分、もしかしてそのうち蛮族側の【ナップ】がうっかり決まってしまい、回避能力を持たない後衛のグラスランナーがひき肉にされてしまうのではないだろうか?
GM「さあ、グラスランナーども! ここまで散々引っ掻き回してくれたが、ここが年貢の納め時! うっかり抵抗に失敗して
ミエン 「では、【アーリーバード】を弾こうか」
GM「ピンポイントメタやめろ! なんでしっかり習得してるんだよ!」
【アーリーバード】
睡眠魔法や催眠能力への対抗手段となる呪歌。
この歌を吟遊詩人が奏でている間に発生する睡眠効果は、まず【アーリーバード】の演奏判定の達成値を上回ることができなければ適用されない。
制限移動で3m前進しながらミエンが演奏判定を行います。
ミエン「ふむ、2d6の出目は…9か。達成値は20」
ラル「どうやら敵が超えるべき壁はとても高いもののようだね」
さて、【アーリーバード】に魔物側の【ナップ】の達成値を上回られてしまいました。
この時点でGMの姑息な「睡眠魔法がうっかり通れば勝ち作戦」は完全に使えなくなってしまいます。
ニーナ「【狙撃】準備おわり、うつよ。命中は… 18点」
【狙撃】は準備に手間がかかりますが、命中判定が回避判定を3点以上超えた場合に与えるダメージが2倍に跳ね上がります。
狙われていたフーグルアサルターの回避は14点。見事に打ち抜くことに成功します。
ニーナ「ダメージは16点」
ラル「さっきのラウンドに【ヴォーパル・ウェポン】で強化を乗せてるから18点だね。2倍にして36点か」
GM「フーグルアサルターのHPは38点だから…生きてる! まだなんとか生きてるよ!」
ラル「命中すれば、倒せるからアサルターに追撃でいいかな」
ラルのクロスボウもぎりぎり1点命中値が上回りわずかに残ったフーグルアサルターの体力を削り切ります。
困ったなあ。
グラランずが魔物知識判定に失敗したために能力を隠しているボスには自身の体を巨大化させる能力があります。
これを使えばキャラクター2人分のサイズとして扱われるようになります。
前衛単騎のジエンが食い止められるのは【ブロッキング】込みで4体まで。
2体分扱いの巨大化ボス+魔物3体であれば、合計5体となり、前線を無視して後衛を荒らしに行けたのですが…今、フーグルアサルターがグラランずのクロスボウ部隊に撃ち抜かれたことで計算が狂います。
ニーナ「GM、何考えこんでるの。そっちの手番だよ」
ええい、こうなれば本当に大人げない手段を選ぶしかない!
GM「蛮族の手番の行動が決まったよ。全員で乱戦離脱を宣言する」
【乱戦離脱】
手番の行動を放棄することで、次のラウンドに乱戦エリアから抜け出して移動することのできるルール。
今回の場合はつまり、「足止め役の戦士であるジエン」を無視して回避能力を持たない後衛へ突撃して直接なぶり殺そうという作戦です。
プレイヤー「あまりにもやることがえげつない」「なりふり構ってない感じがする」「そんなことしていいと思っているのかGM」
なんとでも言えグラランず!
このまま1点もダメージを与えられないままグラスランナーの前衛1匹に完封されるわけにはいかないんだ。
汚い手だと罵られようと後衛のグラランずをまとめて一掃してやるのだ。
こうして、ボス戦は3ラウンド目に突入します。
ニーナはこのターン、ボスを【狙撃】するために制限移動で後退しながら狙いを定めて行動終了。
ミエンはラルの命中率を上げる呪歌【モラル】へ演奏を切り替え、支援を受けたラルがレッサーオーガを狙います。
ラル「乱戦を離脱するものは自身の回避が下がることを忘れてはならないのだよ」
ラルのリピータークロスボウから連射された矢は回避力の下がったレッサーオーガに3本も命中します。
これによりHPが満タンだったはずのレッサーオーガが一撃KO(三撃KO?)
ラル「戦いは数、なのだよ」
続いてゾーラがボスに攻撃するもののダメージが全然通りません。
グラスランナーの近接攻撃力程度ではこのボスには痛くもかゆくもないのだ。
さて、今度は蛮族側の手番。
現状を整理すると残っているのはいつのまにかボスと魔法使い系のフーグルだけ。
前の手番に乱戦離脱宣言をしているのでゾーラの足止めを無視できます。
後衛組は細かな制限移動での調整を繰り返して中衛にミエンを置きつつ他2人はさらに奥へと下がっています。
こうなると蛮族は頭数が減っているので中衛のミエンのところまでで進撃を阻まれます。
まずはフーグルマンサーが移動。魔法使い系であり、移動力が高くないフーグルマンサーがミエンと乱戦を組むには攻撃権を放棄して全力で移動しないといけません。
ミエンに近づき接敵しますが、攻撃はなし。
一方のボスですが、通常移動でミエンに接敵し特殊能力を使い巨大化します!
GM「君たちがボスと想定していた魔物はミエンに向かって突撃しながらその体を巨大化させる。それに伴い受けていた傷も再生していく。巨大な体躯は天井に届きそうな勢いだ。この状態では行動回数も2回に増える。今の巨大化で1回分行動を消費したけど、まだミエンに攻撃できるのさ」
ついにちょこまかと逃げ回り魔法にも耐性を見せつけてきた小憎らしい小人どもにお仕置きする時!
巨大な牙でミエンにかみつきます!
後衛職であるミエンが回避できるはずもなく大きなダメージが入ります。
回復魔法の使えないグラスランナーのパーティではこれはかなりの痛手のはず。
いよいよ敵も味方も王手のかかった4ラウンド目。
まずは【狙撃】を構えていたニーナから、巨大化したボスの頭部にヘッドショット!
ニーナ「クリティカル! さらに【狙撃】でダメージ2倍!58点物理!」
ここでダイスが回った! ボスのHPは大きく削られます。
続いてラルもリピータークロスボウを構えます。
「命中に不安があるからここは【キャッツアイ】を使うよ」
複数技能を手広くとったラルの技能構成が効いてきます。
使うのはMPを消費して能力強化をできる
MPが存在しないグラスランナーは本来この技能を習得しても使用することができないのですが…
ラル「MPを肩代わりするアイテム『魔晶石』があれば、グラスランナーでも
GM「どうした?」
ラル「道中で魔晶石を買うつもりが…忘れていたよ。キャッツアイは無しだ」
ここでグラスランナーらしいポカに気づきます。
そして肝心の命中判定は…
GM「おっと、ボスの回避が1足りたな。キャッツアイがあれば当たっていたのに」
ラル「そんなことある??」
これは勝負はどうなるかわからなくなってきました。
さて、ここまで補助に徹してきたミエンが攻撃に回ります。
ミエン「【シュアパフォーマー】の特技を使う。これにより魔物側は私の呪歌に抵抗できなくなる。さあ、終わりにしよう。【
数ラウンドかけて呪歌を歌い続けることでエネルギーを貯めて放たれる
効果は衝撃属性の複数ダメージ! これによりフーグルマンサーが倒れますが…
GM(魔物知識を失敗したのが仇となったね…)
実はこのボスには「強靭な皮膚」という衝撃属性のダメージを減衰する能力があるのです。
【
プレイヤー側にはゾーラの攻撃が残っていますが、グラスランナーの近接ダメージはたかが知れています。このまま返しの手番で「薙ぎ払い」による複数隊攻撃を含む2回行動ができれば…
ジエン「もう【ディフェンススタンス】はいらへんよね。攻撃に集中させてもらいます。…おっ、命中が6ゾロで自動成功やな」
それでも、ジエンの攻撃ではこのボスの固い皮膚を貫いてダメージを与えてくることはないはず。
ゾーラ「命中判定、6ゾロ! 威力決定もクリティカル!」
に、二回転だと!?
ええと、クリティカルダメージをボスの防護点で減算して…
ああ! ダメージが足りてる!
ボスは倒れました。
ゾーラ「あらあら、終わりかいな?」
ミエン 「ふう、攻撃された時は焦ったが。なんとかなったな」
見事にグラランずはボスを倒しました。
依頼は達成して円満解決。この世に悪の栄えた試しなし。
とはいえ、一筋縄ではいかないグラランず。
ボスを倒したのにもう一波乱ありそうです。
次回、いよいよ最終話です。
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