8.グラスランナーは止まらない!
(前回までのあらすじ)
シナリオを脱線した結果、犯人を勘違いしたまま突き進むグラスランナーたち。一行は下町にある【泉の迷宮】まわりが怪しいと狙いをつけて探しに行くが…
さて、グラスランナーたちは犯人を誤認している。
しかし、幸か不幸か犯人以外の推測は当たっているのだ。
グラランずは『犯人』である魔術師ギルドの学生が、【泉の迷宮】の周りで【ナイトアイ】の製造拠点を構えていると予想をつけて調査に進んでいる。
困ったことになったぞ。
手元のシナリオに書かれた記述を読み返してGMは困ってしまう。
『プレイヤーが確信を持ち、大量の水が必要だと知っているなら、目的の建物を見つけるのは難しくありません』
さて、グラスランナーたちは犯人当てこそ間違えているけれど、大量の水が必要だという情報はちゃんと入手している。
そして、犯人を間違えてしまっているが故にこの捜査に必要なピースは全て揃ったと言う確信も持っている。
…これ、薬品製造拠点の場所を見つけてしまうよな。
GM「最後の確認になるけど、君たちは当てずっぽうでなく、ちゃんとした確信を持って【泉の迷宮】周辺を調べ上げるんだよね?」
ミエン「何か問題あるかな?」
GM(問題はあるんだけど!あるんだけど!)
GM「それじゃあ、君たちはめちゃくちゃ条件の揃った怪しい建物を見つける。【泉の迷宮】から伸びた太い水路から水を引くための新しい支流が引かれた先に、全ての窓を閉めて門扉に鍵をかけた施設がある」
ニーナ「うわぁ…」
ラル「ビンゴ! やはり件の学生はこの建物で危険な薬を製造しているに違いないね」
ゾーラ「決まりやな。ほんなら、早速中に忍び込もうか」
GM「表門から堂々と入るかい? それとも裏口からこっそり忍び込むかな?」
ニーナ「裏からこっそり」
裏口の扉には鍵がかかっています。
この門を開ける鍵は【ナイトアイ】の売人を捕まえ、売人に【ナイトアイ】を流していた仲介人を探し当てて戦闘で倒すことによって入手できます。
つまりこれがコンピュータRPGなら、
「適切な鍵を持っていないので、まだ入れない場所」ということになります。
…なるんだけど。これはTRPGなんだよな。
ジエン「鍵がないからと言って開かないとは限らへんのよ」カチャカチャ
GM「ピッキングするなら達成値12の解錠判定を成功させる必要があるよ」
ジエン「…達成値16。楽勝やね」
なんなく裏口の扉は突破されてしまいます。
GM「静かに扉を開けて中を伺うと扉の先に2つの影が見える。まだ向こうはこちらに気づいていない。魔物知識判定を振っていいよ」
全員が判定に成功して、2つの影の正体がフッドであることに気付きます。
【フッド】
ソードワールド2.5における定番の雑魚蛮族。他作品における『ゴブリン』の枠をイメージしてもらえれば、そう違わない。
ニーナ「ここから【狙撃】はできる?」
GM「流石に扉の隙間から狙撃するのは無理があるかな。ニーナ自身が隠密判定に成功できたなら、気付かれずに中に入って狙撃のための1ラウンドを確保できたものと見なすけど…」
まあニーナはシューター特化だから隠密のための技能取得をしてないし問題ないでしょ。
ニーナ「はい、成功」
GM「(マジか) じゃあ、フッドに狙いをつける十分な時間が作れたよ。戦闘開始時に、ニーナは前のターンから【狙撃】を宣言していたものとして扱う。それ以外のみんなは通常通りの形で戦闘に入ることになるよ」
フッド戦PC側1ラウンド目
ニーナ「狙撃!」
【狙撃】
よーく狙いをつけるために、2ラウンドに1度しか攻撃できない代わりに非常に高いダメージを与えられる可能性がある戦闘特技。
ニーナ「命中。ダメージは28点」
GM「フッドはその一撃で沈むよ」
ニーナ「ヘッドショットを喰らえ〜」
ラル「私も同じクロスボウ使いとして負けていられないな。残りの1匹は私が仕留めよう」
ラルの装備はリピータークロスボウ。
ニーナの【狙撃】とは逆に1ラウンドに複数本の矢を連射する方向でダメージを伸ばす武器です。
ラル「命中したのは…3本。ダメージは…おっとクリティカル。おや? またクリティカルだ。」
ニーナ「今フッドが3回死んだ気がする」
ゾーラ「格下の魔物やから大したことあらへんなぁ」
2人のクロスボウ使いによってフッドたちは騒ぐ暇も与えられずに絶命しました。
この見張り番のフッド達に仲間を呼ぶ暇を与えずに制圧できたので、この後に控えるボス戦でかなりの有利が得られます。
GM「さて、では見張りのフッドたちを倒した君たちは建物の中を観察できる。怪しげな大釜に【泉の迷宮】から流れてきた水が注ぎ込まれグツグツと煮込まれている。目にクマを浮かべて必死に鍋をかき回す人たちがいる」
ミエン「どうやら予想通り、ここは魔術師ギルドの学生が【ナイトアイ】を作っている工場のようだね」
GM「さらに君たちは
ラル「魔物と手を組むまで堕落してしまったようだね…」
GM「聞き耳を立てることで彼らが話している会話を盗み聞きすることができる。挑戦してみるかい?」
ここでパーティメンバーの全員が聞き耳を立てるのですが…ミエンだけ失敗してしまいます。
そして、問題となるのが…
GM「それじゃあ聞き取れた人たちにはこんな会話が…待って、これ言語通じるのか…?」
慌てて蛮族と人間の話している言語とプレイヤーの習得している言語を比較します。
…あー。惜しい。聞き耳に失敗したミエンだけが彼らの言語を理解できるチャンスがありました。
GM「それじゃあ聞き耳に成功したグラスランナーたちには知らない言語で黒幕たちが自分の計画をペラペラ喋るのが聞こえるよ」
ニーナ「ぎゃーぎゃーうるさい」
GM「それではここで今回の依頼についておさらいしておこう。この拠点について衛士隊に報告すれば晴れて任務達成となる。君たちは報告に戻ってもいいし、このまま黒幕を奇襲してもいい」
ミエン「悪そうだし捕まえて衛士隊に突き出すか」
ラル「彼らの話は理解できなかったけど、まず首謀者ということでいいだろうね」
ジエン「そもそも依頼がここまでってことグラスランナーの頭では覚えてられん気ぃするわぁ」
ニーナ「たたかう」
GM「OK. 君たちが戦うなら今隠れている物陰から出る必要がある。そうなると黒幕たちの他にいる蛮族たちとも戦闘になるだろう。さて、覚悟の準備はできているかな?」
ミエン「大丈夫。ああ、だけど先に魔物知識判定で蛮族の正体を確認してもいいかな?」
GM「もちろん、振って構わないよ」
ミエン「それじゃあ…(コロコロ) すみません、自動失敗です」
本当に大丈夫か?
次回、いよいよ黒幕がどんな魔物でどんな計画を練っていたかもわからないままボス戦開始です!
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