5.ダーティな依頼マシマシ

(前回までのあらすじ)

危険薬物【ナイトアイ】の売人が出没するという闇市。その開催場所の情報を求めて犯罪者組織【遺跡ギルド】へ向かうグラランず。遺跡ギルドが隠れ蓑とする料理店に入り、合言葉を告げた彼らは…


GM「君たちが秘密の合言葉である裏メニューを注文したので、対応するために裏の仕事を知っている店員が対応に出てくるよ」


プレイヤー「そもそも斥候向きの種族とは言え、グラスランナーの集団が押しかけてきてまともに取り合ってもらえるのかな?」


GM「合言葉を知ってるんだからそれなりの扱いはしてもらえると思うけど…」


でも確かにグラスランナーひとりならともかく集団で押しかけてくる非常識なパーティだしなぁ。

なんかこうグラスランナーを種族差別しなさそうな奴が対応に出てくるんだろうか…?


GM「じゃあ注文したのがグラスランナーの集団だと分かると呼ばれた男が引き返していく。代わりにフードを深く被ったグラスランナーが1匹でてくるよ。名前は…えーっと。ジロー…ジローラモ・ガーリック・マシマシ」


プレイヤー「名前!」「 場にグラスランナーしかいない!」


ジロー「おう、坊主ども。揃って今日は何のようだい?」


ジエン「ただ、ご飯を食べに来たんやけどねぇ」


ジロー「いやいや、この遺跡とうぞくギルドの裏メニューを頼んだからには表じゃあなく裏の仕事だろ? わかってるわかってる。」


ニーナ「…? 注文したんだから早く出してね」


ミエン「普通に食事も取るつもりだけどね。本題は巷を騒がせてる例の薬物についてさ」


ジロー「なるほどな。まあ、とりあえず看板メニューでも食いながら聞いてくんねえ」


GM「大盛りの麺に野菜がうず高く積まれた皿が出てくるよ。」


ラル「お腹の虫は寂しく泣いているからね。食べ過ぎない程度に分け合わせてもらうよ」


しばらくうるさい音を立てながら食事をするロールプレイなどを挟んではしゃぎ回るグラスランナーたち。


「ズズズーッ!」「うるさいな、黙って食え!」「黙ってはいるだろ!ズゾゾ〜ッ!」「すする音がうるさいんじゃ!」


楽しいんだけどなかなか話が本題に入らない。


ジロー 「…で、裏の話な。【ナイトアイ】だろ。ありゃあ、俺らの仕事じゃねえ」


ラル 「君たちでないというなら、誰の仕業なのか……自分たちの縄張りで勝手に仕事をされてることに気づかないほど遺跡ギルドも抜けた者たちではないだろう?」


ジロー「マジだよマジだぜ、ご同輩。むしろ俺らは被害者だ。【ナイトアイ】を扱ってるのは最近ウチらのシマで勝手に商売してるやつらよ」


ゾーラ「そないなことされて、売人シメたりはせぇへんの?」


ジロー 「それがどうにも逃げ足の速いやつらで見つからない。一体どこに隠れてるんだか」


ミエン 「案外剣の迷宮の中にいたりしてね。何しろこの国だから」


【剣の迷宮】

強い力を持つ魔剣は自身を振るうにふさわしい相手を見極める試練として、周りに迷宮を作り出す。

迷宮王国グランゼールはそうしてできた巨大な迷宮を探索する冒険者や、その冒険者相手にアイテムを売る商人などが打ち立てた国である。


ジロー「ない話じゃあ…ないな。ここらには未踏破の遺跡も、探索し尽くされて枯れた遺跡もごちゃまんとある」


鋭いなぁ…。ミエンの予想は当たっていて、【ナイトアイ】を扱っているヤツらは、探索され終えて人がもう入る理由のなくなった剣の迷宮跡地に潜伏しています。


ラル「いくら夜に隠れても、誰も見てないことはないはずだ。つまり、私達こそが売人の目撃者になればいい」


ジロー「売人の情報ならひとり100ガメル。とっつかまえたら200ガメルで買わせてもらうよ。もしヤクの作り方を教えてくれるなら一人頭で2,000Gまでは兄貴たちから引き出してやれると思うぜ」


ニーナ 「作り方…!?」


ジロー 「【ナイトアイ】自体は問題じゃなくて、ウチのシマで商売されてるのが遺跡ギルドにとっての問題だからな。ヤクの方だけなら俺らだって扱いたいくらいなのさ」


ラル「君たちにしてみればそれもそうだ。こちらの立場が危うくならないか、心配だけどね」


ジロー「お前らの受けた依頼はどんな感じなわけ?」


ミエン「売りさばいている連中のアジトを突き止めろというものだよ。討伐すれば追加報酬が出るとも言われている」


ジロー「ん。流通を止めろって依頼じゃあないのな(ニカッ)」


ミエン 「その通り。言われてないことはしなくてもいいということになるかもしれないね」悪い笑顔


ニーナ「ぱぱ、わるいかおになってる」


ミエン「お前を育てた覚えはない」


ジロー「あんたらは売人を捕まえて衛士隊へ突き出す。ついでに片手間に知った作り方を含めた冒険譚をこの店で食事するときにぽろっと吹聴する…」


ミエン「すると?」


ジロー「兄貴たちが機嫌を良くしてあんたらの前に金貨袋を落とす。グラスランナーの斥候スカウトが落ちてる金貨袋を拾っちまうのは、まあしかたねーことだよな」 


ジエン「交渉、成立やね」


ジロー「ほいじゃあ、こっちもよろしく頼むよ。仲間たち?」


ラル「私達はグラスランナーだからね、今の会話はきれいさっぱり忘れて覚えちゃいないのさ」


ミエン 「ああ。衛士に聞かれてもその時には何も覚えていないだろうねえ」


ラル「なにせ、言葉というものは風に攫われて消えてしまうものだからね」


これだよ!

こういうのだよ!

若干、入り方は想定と違ったけどGMのしたかった「犯罪者ギルドとのダーティなやり取り」ができて私はかなり満足だ。

うん。満足。…あれ?


GM「ごめん、そもそもなんでここに来てたんだっけ?」


プレイヤー「GMが忘れるなよ!」


やりたいロールプレイやグラランしぐさでボイスチャットが盛り上がるあまり本題を忘れてしまった。


プレイヤーからも「GMのグララン化が進んでおります」などと突っ込まれてしまう。

いやはや、申し訳ない。


テキストチャットのログを見返して仕切り直し。


そうだそうだ。

今日の闇市の会場について聞きに来たんだった。


ジロー「ほら、ここだよ」


ニーナ「あの~ほら、あっこをみぎにまがってずーっといって、左にまがってすぐ右に曲がったあたり?」


ジロー「なぜか皆さん、そちらへ行かれるんですよね(パチンコ店風)」


というわけで、グラランずは遺跡ギルドを後にして夕刻の闇市へと向かう。

果たして、【ナイトアイ】の売人を捕まえることはできるのか?

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