4.グラランず、中毒者の同胞から話を聞く

(前回までのあらすじ)

危険薬物【ナイトアイ】の出所を調べるため、中毒患者が収容されているという診療施設を兼ねた始祖神ライフォスの神殿を訪れるグラランず。

患者との面会を希望する彼らの前に現れたのはグラスランナーの女性だった。



中毒グララン : 「お、おお…ヤクの話? ヤクをくれるなら、なんだって話すわよ。アタシはここから出してもらえないから買いにいけないのよ」


ミエン 「どうやら薬の中毒性は本物のようだね」


ニーナ 「はい、これあげる」(その辺で集めた白い砂を袋に包んだものを渡す)


中毒グララン 「ちがう!ちがう! そんなのじゃあないの! 粉薬じゃない、もっとどろどろとした黒い液体よ!」


ニーナ「【ナイトアイ】は黒い液体。情報ゲット」


ミエン 「治療中の中毒患者に薬のことを思い出させるのは、良くないんだが仕方ないか」


中毒グララン「ねえ、あなたたち。ここに閉じ込められてるアタシの代わりにさ、【ナイトアイ】を買ってきてくれないかしら? 神官プリーストさんたちには内緒でさぁ。同じグラスランナーの同胞じゃない」


ゾーラ「残念やなぁ。ウチらその薬がどこで売られとるんか、知らへんのよ」


ミエン 「【ナイトアイ】はどこで売っているんだい?」



GM(おっ、話の転がし方がうまいな。それじゃあNPCに話させる形でシナリオに記載されてる情報を渡して一気に本筋を進めよう)


中毒グララン「場所はだいたい闇市ね」


ミエン「だいたい?」


中毒グララン「時間によっては違う場所にも薬売りが現れるのよ」


ニーナ「他にはどこにでるの?」


中毒グララン「夜はだいたいスラム。明け方になると冒険者ギルドのある迷宮街区にも出回るって話も聞いたわね。昼間は飯時前はこの辺りにも来てるらしいけど、絶対に会わせてもらえない。午後になれば入門街区の周りをうろついているのを見たって噂も聞いたわ」


ミエン 「とりあえず薬に手を届かせる手がかりは手に入れられたようだな」


ニーナ「重症だと思ってたのに。こいつ割とはきはき喋る…」


しまったな。

こう言う情報は情報メモよりはキャラクターの口から言わせたほうがプレイヤーにシナリオへの没入感を与えられるんだけど、何事にも加減があります。

知らなそうなことまで喋らせてしまったり、今のようにキャラクターの設定に合わないような言動をしてしまうと逆に没入感が損なわれる諸刃の剣です。


何か設定に合わせた描写を…そうだ!



GM「中毒グラランは早口で捲し立てるように喋るけど顔が君たちの方を向いてない。まるで君たちの隣に誰かいるみたいにそちらへ向かって話していたよ」


ニーナ「やっぱりダメだったかぁ…」


ラル「どうやら私達には見えない何かがいるようだ……ああ、そこにいる幻影の君、なにか知ってるなら話しかけておくれ」

 

ジエン「頭だけじゃなくて目までどこかやってしまったみたいやねぇ」


GM(おっ、『目』って言ったな。ここは拾っておこう。)


中毒グララン「目! そう、目だよ!」


ゾーラ「…?」


中毒グララン「ヤクが欲しい時にはね。売人に『目はあるか?』と尋ねるの。それが買うための合言葉」



プレイヤー「割とすごい情報出ましたね」


ラル「合言葉、それは仲間であるシグナル……ありがとう、これで私達も、君の仲間になれた」


ゾーラ「こないな状態で仲間になられても困るんやけどねぇ」


そろそろ切り上げ時かな。


ライフォス神官 「すみません、冒険者様方。これ以上は患者の負担も大きいかと。どうか今日のところはおかえりくだされ」


ラル「仲間と共にもっと語らいたいところだったのだが、神の代弁なら仕方あるまい」


ミエン 「ああ、これで失礼するよ。その聖書で殴られてはたまらない」


ゾーラ「せやね。ただでさえこんまいのに、ぺしゃんこになってまうわ」


さて、思ったよりもガッツリと同胞から情報を聞き出せたグラランず。


ミエン 「ふむ、しかしバイヤーを捕らえたところでトカゲの尻尾だろう。やはり大元に近づかないと」


ラル「それならば闇の深淵へと飛び込む勇気が必要になるだろうね」


GM「そういえば、言うのを忘れていたけど地区間の移動や先はどの面会で時間が経ってるからもう午後になってるよ」


ゾーラ「お昼も食べんで、働いて疲れたわぁ。そろそろどこかで食事でもせぇへん?」


GM(食事、食事かぁ。シナリオの準備をしていた時のアレが使えそうだな)


ここでGMは思いつきのアドリブで用意していたシナリオへの合流を図ります。


遺跡ギルドでの聞き込みです。


【遺跡ギルド】

ぶっちゃけて言えば「盗賊ギルド」です。

遺跡王国グランゼールにおいて犯罪者互助会が表看板として『遺跡で』集めてきたアイテムの鑑定や販売取引などを行うという建前で立ち上げている組織。遺跡ギルドにお金を納めると、なぜかゴロツキどもが商店に迷惑をかけたり、物を盗まれなくなったりするらしい。不思議だなあ〜(棒読み)



GMの私は、盗賊ギルドなどの裏の仕事をしている組織が料理店や酒場を営んでいるシチュエーションが好きなんですよね。


特定のメニューを注文するのが合言葉になってて、頼むと「なるほど、それを知ってるってことは裏の仕事か」って店の人が盗賊ギルド側の顔になる…みたいなシーンが!


GMはプレイヤーにそのことを伝え、

食事を取りに盗賊ギルド…もとい遺跡ギルドへと行くのはどうかと提案します。


プレイヤーたちも面白そうなので、遺跡とうぞくギルドで食事を取ることに同意してくれました。


GM「それじゃあ、適当に注文してくれればそれを合言葉ってことにするから」


と言うわけで一行は食事処が併設された遺跡ギルド支部へ向かうことに。


ラル「おっと、もうそろそろ食事時か。食は心を満たす光だからね」


ミエン 「どこに食べに行こうか。そういえば最近量が異常な麺料理を出す店が出来たとか……」


ラル「野菜が山盛りだというかの店かな?」


ミエン 「そうそう。我々が食べるには少々厳しいかな?」


プレイヤー「グラランは小さいからね」


ニーナ「みんなで一杯分け合えばいいのでは?」


ミエン 「違いない」


店員「へい。いらっしゃい4枚様。ご注文は?」


ラル「『アブラニンニクカラメヤサイマシ』を頼むよ」


店員(こいつ、裏のメニューを!?)



待って待って、なんだか想像してた雰囲気と全然違うんだけど!?


じ、次回。犯罪者ギルドとのダークでダーティな話が進む。…進むのか?


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