2.わくわくグラランず依頼を受ける。


GM「それじゃあ本日はよろしくお願いします」

PL「お願いしまーす」


今回のセッションで遊ぶのはリプレイコンテストの課題部門にあるシナリオの中から選んだ『夜の目を追え!』というシナリオになります。


冒険の舞台は迷宮大国とも称されるグランゼール王国。

魔剣の力で作られた大迷宮を踏破するために集まる冒険者たち。

そして、その冒険者相手に物を売りたい商人たちが集まって生まれた国です。


さて、グラスランナー達は冒険者ギルド〈女神の微笑み〉亭を訪れます。


いつものように混雑しているギルドの中で、見慣れたギルド職員が彼らに目配せをします。


職員 「おはよう小人さんたち。ちょうど受けてほしい依頼があったの」


ゾーラ「職員さん、もうちょっと頼む面々を選ぶべきだと思うわぁ」


GM「職員は斥候の多いあなたたち向きの依頼だと言ってくるよ」


ミエン 「斥候? パッと見、楽団ですよ我々」


うるさいやい。いくらグラスランナーでも依頼を受けてもらわなきゃ話が始まらないんだよ。


職員「最近、新米冒険者の間に出回っている【ナイトアイ】っていう薬については知ってる?」


ミエン「知ってるかどうかの判定は出来ますか?」


GM「【ナイトアイ】の知名度は16と高めだから知らないと思うけど、見識判定は振るだけ振ってみてもいいよ」


ミエン(ころころ…)「出目が走ったな。16ぴったりだ」


GM「おっと。それじゃあミエンは知っていた。最近グランゼール王国で出回っている危険な薬物だよ」


GMはプレイヤーにメモを開示する。


【ナイトアイ】

基本取引価格:100ガメル

知名度:16

概要:3時間睡眠をとった状態になる。

製作時期:現在

副作用:飲みすぎると幻覚をみたり穢れが体に溜まったりする危ない薬。

ゲームデータも存在するけど、書くと悪用されそうなので濁しておきます。


ミエン「ゲームデータ、あるにはあるのか」


この薬品、ナイトアイ。

確かにシナリオにはゲームデータが乗っています。

ところがその詳細な解説には「飲んでも精神抵抗に成功すると副作用が出ない」ということと、「飲むと斥候に便利な種族特徴【暗視あんし】を得られる」という旨が記されています。


そして、グラスランナーたちは非常に高い精神抵抗力を備えています。

また斥候向きの種族でありながら暗視能力を持ちません。


こんなデータを開示したら絶対にこいつらは飲みはじめるだろ!



職員 「【ナイトアイ】は飲むと眠気が吹き飛んで目がギランギランに冴えて、暗闇でも見通せるっている触れ込みの薬品よ」


ミエン「副作用さえ無ければ是非欲しいくらいだな、それは。新米冒険者が手に入れようとするのも頷ける」


職員「でもね、世の中そんな都合のいい話ばかりじゃないわ。【ナイトアイ】は飲みすぎると重大な副作用があるの」


ゾーラ「ナイトアイ。危ないお薬なんやねえ」


ニーナ「暗視できるようになるってホント?」


職員 「ええ。あなたたちのようなグラスランナーでも…ねえ、まさかあなたたちのパーティ、ナイトアイ飲んでないでしょうね?」


ゾーラ「記憶にあらへんねぇ」


職員 「それならいいんだけど…」


ミエン 「我々グラスランナーは都合の悪いことは忘れてしまうからね」


ニーナ「誰か改良して暗視ができるようになる目薬とか作ってくれないかな~~」


職員「話を依頼に戻すわ。ナイトアイの副作用は2つあるの。ひとつ目はまず中毒性ね。飲むとまた次も手を出しやすくなる」


ラル 「ドラッグ……路地裏に潜む社会の病魔だねぇ」


職員「それだけならまだいいんだけど、この薬を飲みすぎるとけがれが体に溜まってしまうのが2つ目の副作用。飲みすぎれば廃人、あるいは穢れの溜めすぎで生きる屍アンデッドになってしまうの」


ラル「穢れが溜まるだって!? それは大事だね、そんなものが街に出回ってるなんて……」


ミエン 「それは……とんでもないな」


ゾーラ「まさに魔剤、やねぇ」


職員「当然、グランゼール王国としてはこんな薬の蔓延を看過できない。 そういうわけで冒険者ギルドに衛士隊から依頼が届いているの。 衛士隊の仕事は犯罪者のアジトの制圧で、冒険者の仕事はアジトの捜索。 捜索任務は斥候の多いあなたたち向きの依頼だと思うのだけど。 どうかしら?」


ゾーラ「つまり、黒幕を探し当てればいいんやね?」


ミエン「実に我々向きではないかな? 聞き込みと調査は得意分野だ」


ニーナ「私はシューターだけなのでみんなに任せる」


ラル「罪と穢れは心を濁らせる……私としても、ぜひ協力したいところだね」


職員「薬品の製造場所を見つけて衛士隊に報告すれば任務達成。 報酬はひとり1,500ガメルを出してもらえるわ」


ニーナ(目がガメル硬貨になるよ)


プレイヤー「1500ガメル!? 一人当たり!?」「レベル6冒険者ですからね、当然ですよ」


グラスランナーたちは衛士隊の人から預かった【依頼を受けた証の割符】を受け取り、出発します。


ギルドを出る前に職員さんからひとこと。


職員「そういえば衛士隊の人は『無いとは思うけど冒険者風情が黒幕の討伐か捕縛に成功したらボーナスも出してやる』なんて言ってたわね。 衛士隊の鼻を明かしてやりたいなら頑張りなさい。でも命の危険を感じたら本当に報告だけでいいからね」


さあ、いよいよシティアドベンチャーの始まりだ。


シナリオの誘導では「プレイヤーたちは自由に行動していいが、迷ったら選択肢を示すこと」となっている。

まずはプレイヤーたちに任せて動きたいように動いてもらおう。


とはいえ衛士隊からの依頼だし、まずは衛士隊の詰め所へ行って依頼を受けた旨を伝えるっていうのが想定ルートだ。

依頼を受けた証の割符も受け取ったし、きっとそこから行くよね…?

そうすると追加の情報とアイテムが受け取れるんだけど…。


~プレイヤーたちのボイスチャット~

「どうしようか? まずは衛士隊の方に詳しい話を聞きに行く?」

「どうなんだろう。グランゼール王国の衛士隊、頼りにならないからなあ」

「そうなの?」

「今回みたいに調査や捜査は冒険者に丸投げして、衛士隊は最後に逮捕するところだけってサプリメントの『スタートガイド』にも書いてあるんだよね」

「じゃあ、衛士隊に寄るのは黒幕のアジトを見つけてからにしよっか。それまでは行かなくていいよね」


早くも脱線の予感。

でもまあ、シティアドベンチャーは自由度の高さが売りだしね。

臨機応変に対応していくしかない。


次回、グラスランナーに囲まれる者は自分もグラスランナーにならないよう気を付けねばならない。(続く)

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