1.キャラクター集合


GM「キャラクター作成お疲れ様でした。全員グラスランナーという縛りの中で大変だったと思いますが、なんとか形になったと思うので前衛の方からキャラクターの技能などの紹介をお願いします。」


ゾーラ「ほんなら、ウチからやな。ジエン・ゼノ・ゾーラ。女。軽戦士フェンサー斥候スカウトに技能レベルを振った定番のグラスランナーやね」


GM(堅実な構成だ)


ゾーラ「戦闘特技はまず【ディフェンススタンス】や」


GM「【ディフェンススタンス】!?」


【ディフェンススタンス】

あまりにもピーキーな戦闘特技である。

回避力・抵抗力のいずれかを選び、10秒間その判定に大幅なボーナス修整を得ることができる…といえば聞こえはいい。

しかし当然なんのリスクもなしでそんな恩恵にあずかれるわけがない。

使用者は防御に集中するあまり効果時間の間、ほぼ全ての判定に大幅なペナルティを受けることになる。

例えば攻撃の命中判定などもこのペナルティの対象だ。


【ディフェンススタンス】は一見回避盾として仲間をかばうキャラクターを作るのに向いているが致命的な欠陥がある。

敵対者を挑発してターゲットを自分に集中させる【挑発攻撃】との併用が難しいのだ。


魔物側に人並みの知能があれば「攻撃を避けるだけのやつは無視して、他の前衛を袋叩きにしてやろう」と画策するだろう。

【ディフェンススタンス】は回避盾向きなのに挑発ができないというピーキーな特技である。


GM「大丈夫? 知能が低い魔物ならともかく、そうじゃない魔物は他の前衛の方に集中して攻撃することになると思うけど…」


ゾーラ「かまへんよ。そもそもこのパーティに前衛はウチひとりやさかい」



GM「は?」



グラスランナーは基本的に魔法を扱うことができない。

高すぎる魔法抵抗ゆえにMPをもたない種族だからだ。


攻撃系魔法使いソーサラー支援系魔法使いコンジャラー回復役神官プリーストもいない魔法使い系皆無のパーティで残りがみんな後衛????


なんだか嫌な予感がしてきたぞ。


GM「それ、ゾーラが敵を食い止められなかったら回避判定を行えない後衛職の仲間はタコ殴りにされて全滅するんじゃ…」


ジエン「それを防ぐための【ブロッキング】やな」


【ブロッキング】

前線を抜けて後衛職に突撃してくるような敵を足止めする戦闘特技。

これがあればジエンひとりで4体までの敵を足止め可能になる。


GM「なるほど。一見ピーキーだけどちゃんと理のある構成にはなっているんだね」


戦闘ゲームとしてのソードワールド2.5を日々やりこんでいるプレイヤー陣だけあり一見おかしくてもやはり堅実に組まれているように思える。


GM「それじゃあ、次は後衛職の人たちにキャラクターを紹介してもらおうか」


ニーナ「はい。ニーナ・ラヴリー・ティンバーレイク。女グラスランナー。戦闘技能は射手シューターだよ。主な戦闘特技は【狙撃】。武器はAランクのクロスボウ《アーバレスト》」


GM「なるほどね。魔法が使えないグラスランナーだけど弓やクロスボウを使うことはできる。後衛からクロスボウの狙撃でボスを狙うんだね。戦闘外技能は何をとったの? 射手シューターだし野伏レンジャーとかをかじってる感じかな?」


ニーナ「何を言っているの? ニーナは射手シューターだよ?」


…?

おかしいな。

GMは事前に「戦士系技能を4レベル以上にした想定です」と伝えて、

レベル4の戦士系技能に探索系の戦闘外技能を添えられるように経験点を与えていたはず…。


不審に思ってキャラクターシートに目を落とすとそこには

「シューター 6レベル」と書き込んである。


ニーナ、こいつ! 一点特化の極振りビルドを持ち込んできやがった!!


GM「つ、次のプレイヤー。キャラクターを紹介して」


ラル「フフっ。ついに私の番が来たようだね。待ちかねたよ。一日千秋の思いというやつさ」


GM(なんだか喋り方に癖があるな。吟遊詩人バードなのかな?)


吟遊詩人バードかあ。

グラスランナーの吟遊詩人バードは定番と言えば定番の構成なんだけど、

それはどちらかといえば「厄介さ」の定番なんだよなあ。

面倒くさい相手になりそうだ。


ラル「私はラル・カン・セル。グラスランナーの男さ。職業は手広く抑えているよ。射手シューター斥候スカウト錬金術師アルケミスト練体士エンハンサー


GM「それに加えて吟遊詩人バードとは多芸だね?」


ラル「いや、なんのことか分からないな。吟遊詩人バードはとっていないのだけれどね。いたずらな風の囁きがGMの元には届いたのかな?」


GM「吟遊詩人バードじゃないのに、その癖の強い話し方はなんなんだよ!」


ラル「私は自分の心の赴くままに言の葉を紡ぐだけの男さ…」


GM「キャラクター性がみんな濃すぎるんだよな。ほい、最後の人」


ミエン「ミエン・フィル・ルッパ。45歳のグラスランナー男性。パーティの学者セージ枠だ」


ゾーラ「私ら20代やから、お父ちゃんみたいな年齢やね」


ニーナ「パパ〜」


ミエン「私はお前たちのパパじゃない。妻も娘もいるんだ。勘違いされそうなことを言うな」


こ、これは…!

ついに来たか!? 常識人枠!

パーティを支えてくれる精神的支柱!

助かった! これでセッションはなんとか進行できそうだ。


GM「助かった~。ミエン頼りにしているよ。ところでメインの職業技能は?」


ミエン「吟遊詩人バードが5レベル」


GM「お前が吟遊詩人バードなのかよ!!!」



次回、いよいよセッション開始!

グラスランナーに囲まれたGMの明日はどっちだ!?

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