第2話 破滅の序章
身体からの倦怠感。
頭もまわらない。
ベッドの上で目が覚めた。
起き上がりリビングへと通じる扉をあけると、床には13枚の紙が並べられていた。
「俺はいつか殺される。俺が殺されたら交際相手の中村莉乃を疑ってほしい。この人は何をしでかすかわからない。必ず殺される。ここから逃げたいけれど金がないから逃げられない。俺の仕事の邪魔をし、妨害する。資金源も稼げない。俺は人として扱われてない。この人は俺の話を聞かない。聞いていたとしても理解力が皆無。こんな人とどう生活しろと言うのか?俺はこの人に飼われている状態だ。常に監視をされてる。俺の行動を全て監視している。俺が寝ている間に刺殺されるかもしれない。殺されて消される可能性がある。俺の存在自体消す可能性がある。この人の知り合いには暴力団組員が多数いる。その人達の協力の元、俺は消される。殺される。殺される。消される。消される。」
私はその紙を一枚一枚広いあげ、まとめて彼のいる自室へと向かった。
「この紙は何?」
彼は何も話さない。
彼は携帯電話を使い誰かにメールを打っていた。
その携帯電話は私のものだった。
私が寝ている間に携帯電話を取り上げられたらしい。
「この紙に書いてあることを説明して!」
私は声を荒らげていた。
彼は私の携帯電話を投げつけるとまた包丁を手に取りこちらに向かってきた。
「俺はいつかお前に殺されるから証拠として全部文章で残したんだよ!!」
また私の目の前に包丁を突きつけられる。
「私はあなたを殺したりなんかしない!!」
彼は壁に頭を何度も打ちつけはじめた。
「殺される、殺される!!」
何度もそう叫びながら包丁を振り回した。
私は自分の携帯電話を無我夢中で拾いあげ、震える指で110番をプッシュしていた。
「こちら、新宿警察署です。事件ですか事故ですか?」
やっとの思いで警察に繋がった。
「交際相手が自宅で刃物を持って暴れています。助けて下さい!!」
きちんと住所を言えたのだろうか?
名前を言えたのだろうか?
記憶にない。
気づいた時には警察官が家に4名いた。
私は女性警官に保護された。
彼は男性警官に取り囲まれていた。
「もう大丈夫だからね。安心してね。」
女性警官のその言葉だけが記憶に残っている。
どうやって警察署に連れて来られたのか記憶がない。
気づいたら取調室にいた。
私は彼の名前・交際歴・どのような経緯でこうなったのかを説明した。
男性警官が私に問う。
「彼は違法薬物などはやっていませんか?」
「違法薬物はやっていないと思います。ただ精神的に不安定なところがあるので精神薬を処方されて飲んでます。」
そう、彼は精神科で治療を長年受けている。
「申し訳ないのだけど、中村さんの方も尿検査に協力してもらっていいかな?女性警官と一緒にトイレ入ってもらって、このカップに尿を採取して下さい。」
―――― 中村さんの方も。
その言い方からして彼も尿検査を受けたのだと分かった。
尿を採取されるとまた取調室に戻された。
男性警官は無機質に言う。
「これから薬物検査をします。ここに尿を少量垂らして陰性か陽性か調べます。」
スポイトで尿を採取し、薬物検査キットに垂らしていった。
「この反応は陰性反応です。薬物反応は出なかったので待合室の方でお待ち下さい。」
私は取調室から出された。
待合室の窓から外を見ると真っ暗だった。
私はその間に携帯電話をチェックした。
私の友人の愛ちゃんに彼はメールを打っていた。
「莉乃の彼氏です。このようなメールをして申し訳ありません。この人を助けて下さい。この人はたくさん嘘をついています。この虚言癖を治す為にも愛さんの協力が必要です。俺はこの人に殺されそうになっています。助けて下さい。」
私は唖然とした。
すぐさま愛ちゃんにメールを打った。
「今、警察で取調べ受けてる」
その間に何人かの人が取調室に入っていた。
私もまた取調室に呼び戻された。
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