ふたり
鈴ノ木 鈴ノ子
ふたり
幼い頃の記憶の初めは砂山で遊ぶ君と僕。
君はお山を、僕は料理を作ってた。
お互い知りもしないのに、なぜか仲良くなっていた。
小学校に上がる頃、君は素敵なランドセル。
僕はお下がりのランドセル、羨ましく見えたっけ。
登校も下校も常に一緒、互いに夢を話したね。
語った夢はお互いに幼い夢ではあったけど。
中学生に上がる頃、君は素敵なセーラー服。
僕は目立たぬ学生服
君はとっても美しく、次第に距離は離れてく。
君は夢を叶えると大都会へと旅だった。
高校生に上がる頃、君は推しも推されぬ芸能人。
僕は平凡な一般人。
テレビ、雑誌を目にすれば、素敵な笑顔が溢れてる。
でも、作り物であることが、手に取るように分かったよ。
大人になった君と僕。
君は散々苦しんで、実家で部屋に篭りきり。
僕はしがない勤務医で、急病人を助けてる。
ある朝、君が錯乱し、初めて往診車で駆けつけた。
君は僕を見て駆け寄ると、ただただ僕の胸元でポロポロ涙を溢してた。
君の身体はぼろぼろで、撮影中の火傷の跡が左の殆どを占めていた。
僕は思わず抱きしめて、看護師さんに怒られた。
それから互いに連絡を、取るようになったよね。
君は徐々に笑顔を取り戻し、本当の笑みを浮かべてくれる。
僕は希望の科には馴染めずに、別の科へ転科した。
歳を重ねた君と僕。
君は素敵な奥さんで僕を厳しく優しく叱咤する。
僕はしがない町医者だけど、君のおかげで頑張れる。
小学生の時に話した夢は互いにしっかり叶えたね。
お互い最初の夢の絵は今もリビングに飾ってる。
恥ずかしいよと言う僕に、君はずっと大事に持っていたと呟いて、僕は死ぬほど謝った。
画用紙にクレヨンで書かれた夢の絵は
ふたりの仲良く並んだ姿。
幼き姿のその指にきらりと指輪が光ってる。
ふたり 鈴ノ木 鈴ノ子 @suzunokisuzunoki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます