第17話 身体強化魔法とエンチャント
レイさんとティナ先生が村に来てからから、一ヶ月半位経った。
最初、村の人たちは警戒して二人に近づこうとしなかったが、時間が経つにつれて二人の人柄の良さや性格の良さが解り、徐々に二人と話す人が増えた。
ましてや二人は美男美女である。村の女性はレイさんと話すきっかけをいつも伺っている。村の男性はティア先生とはあまり話さないが、遠くから眺めて拝んでいる人が居るくらいだ。
「この村は温かい人が多いから、ずっとこの村で住みたくなるよ。あと、一ヶ月半でこの村から帰るのを思うと寂しいと思ってしまう。もちろん、エド君と別れるのも寂しいからね。」
「レイさん達は村に引っ越せないんですか?周りの人ももっと居て欲しいって言ってます。」
「この村に住めたらいいんだけどね……やらないといけないことも多くて、中々難しいんだ。」
「僕が大きくなったら、レイさんが住んでる街に行ってみたいです!」
「エド君ならいつでも歓迎するよ。大きくなったらおいで!」
「はい!その時はお願いします。」
僕とレイさんは素振りをしながら再会を約束する。
あと、最近驚いたことがある。
「エド君、おはよう~!お兄ちゃんもご飯が出来たから早く食べてね。」
レイさんとティナ先生は異母兄弟らしい。
詳しい事情までは聞いてないが、父親は同じで母親が違うらしい。
最近まで僕は夫婦だと思っていた。
ティナ先生がうっかりお兄ちゃんと呼んだのを聞いて僕は驚いた。
レイさんは今年30歳で、ティナ先生は22歳になるらしい。
僕たちが生まれる前、僕の両親とレイさんの仲が良く、レイさんの後ろを付いて歩いていたのがティナ先生で、母が可愛がっていたそうだ。
だから、再会したときに母は思わずティナ先生を抱きしめたみたいだ。
最初、ティナ先生は恥ずかしくて僕の前では取り繕っていたみたいだが、僕にレイさんが兄とバレてからはレイさんをお兄ちゃんと呼ぶようになった。
「あと、今日はお兄ちゃんがエド君に魔法を教えたいらしいから、私との授業はお預けだよ。」
僕にそれを伝えるとティナ先生は家に入っていった。
僕とレイさんは苦笑いをして
「と、いうわけで私が今日はエド君に魔法を教えるよ。いつも通りに家に来れば大丈夫だからね。じゃーまた後で。」
僕に伝えると、レイさんも家に入っていった。
僕もご飯を食べに家に帰り、今日の準備を始めた。
家を出る少し前に、機嫌の悪い妹が僕に話しかけてきた。
「お兄様、今日も遊んでくれないんですか?最近、お兄様が全然構ってくれません。」
妹が少し悲しそうにして僕に訴えてきた。
「エリー、ごめんね。あと少しでレイさんとティナ先生が村から出て行ってしまうんだ。それまでは二人から色々学びたいんだよ。あと少し我慢してくれる?」
妹は少し嫌そうな顔をしたが
「解りました。その後はぜっ~たいに遊んでくださいね。」
しぶしぶ妹は了承してくれた。
「うん。約束するよ。」
僕は家を出て、レイさんのところへ向かった。
今までレイさんとは座学をしたことないが、最初は座学をするみたいだ。
「今日は最初に私の戦闘スタイルを学んでもらおうかな。私はティナほど魔法に優れてないんだ。だけど、剣技においては誰にも負けないように努力してきたつもりだよ。だから、魔導書を媒介にしなくてもいい方法を考えたんだ。私の強みは剣だから、剣に魔法を纏わせれないか考えて、今は剣に魔法を纏わせる『エンチャント』に力をいれている。
利点は魔法を唱えて、相手に魔法をぶつけるよりも制御が簡単であつかいやすいところにあるんだ。属性魔法の切り替えも早くできるからね。
人それぞれ得意な属性と苦手な属性があるがけど、『エンチャント』するだけなら私は基本属性すべて使えるようになったよ。
これを、私が村に居れる間にエド君に覚えてもらおうと思う。
後は身体強化魔法についても少し話そうか。
前にビッグボアを倒したとき、私が一瞬で相手のそばに移動したのを覚えているかい?あれは身体強化魔法を使ったから通常より早く動けたんだ。
もちろん、属性魔法ごとに身体強化魔法はある。
火なら力に特化するし、風なら速さに特化し、土なら防御に特化する。
自分と同じ属性の身体強化魔法なら覚えやすいから、近接戦闘する人は身体強化魔法を覚えている人が多い。
私は自分の属性の身体強化魔法と無属性の身体強化魔法を覚えている。
基本的には無属性の身体強化魔法を使う事が多い。
属性魔法の身体強化魔法が一点特化に対して、無属性の身体強化魔法は全体的に強化されるから使い勝手が良いんだ。
私からエド君に課題を出そうと思う。エド君には、エド君の属性の身体強化魔法と、無属性の身体強化魔法を自分で考え、覚えてもらおうと思う。
教えて学ぶことも大切だけど、自分で考えて学ぶことも大事なんだ。」
レイさんは『エンチャント』は教えるが、『身体強化魔法』は自分で考えて覚えろと言った。
多分だが、レイさんはもうヒントはくれているんだろう。
少なくとも、『エンチャント』と『身体強化魔法』は何かしら関係してると予想はついた。
レイさんがこの村に滞在している間に、どれだけレイさんから学び、技術を盗み取れるか僕は考えた。
僕たちは座学を終え、村の外に向かった。
「まずはエド君、木に向かって今使える魔法をぶつけてみようか。魔導書を使っても大丈夫だから力を抑え気味で使ってみて。」
「解りました。『サンダーボール』」
最近少しずつだが、威力の調整が出来るようになってきた。
魔力操作も始めた頃に比べ、意識せずに出来るようになってきている。
「前より力の調整が出来てるみたいだね。短期間でよくここまで成長したよ。じゃー少し難易度をあげようか。今使った魔法を人差し指からだし、指先にそのまま留めることは出来るかな?」
「やってみます。『サンダーボール』」
今までは手のひらから出すイメージだったが、それを右の人差し指に集中させた。魔法が前に飛びだそうとするのを糸で引っ張るようなイメージをし、指先に留めるようにした。
どうにか前に飛びだそうするのを抑え、人差し指の前で魔法を留めることに成功した。
「いや、エド君には本当に驚かされるね。やるのは今日が初めてでしょ?普通は一度聞いてそれをすぐには成功させれないよ。これは確かに教え甲斐がありそうだ。よし、いったんその魔法を解いて良いよ。次にやることは魔力の質を見極められるようになってもらいたい。質といっても難しいか。魔力の色といった方が解りやすいのかな?ティナと魔力操作はやっているよね。エド君は自分自身とティナの魔力の違いは解るかな?」
「はい。ティナ先生の魔力は熱いです。僕の魔力は少し痺れるような感覚があります。」
「エド君は感性が鋭いのかもしれないね。今の時点でそれだけ感じることが出来るなら、魔力の質を見極められるようになるのも早いかもしれないね。
それでは私と一緒に魔力操作をやってみようか。私の手をにぎって、私が送る魔力の質を見て欲しい。」
レイさんと手をにぎると、僕にナニカが流れ込んでくる。涼やかでそして包み込まれるような感覚がした。レイさんは嬉しそうに頷き、もう一度魔力流すからといって再度魔力を流し込んできた。
すると、先ほどの静かなイメージとは違い、肌が切り裂かれるような荒々しいナニカが流れ込んでくる。
僕は驚いてレイさんの手を離してしまった。
「どうかな?違いが解った?」
「はい。全然違いました。驚いて手を離してしまいました。」
「やっぱり感覚が鋭いみたいだね。時間があればアイリやオズとも魔力操作をやってみるといいよ。属性によって質が変わるから勉強にもなるだろうからね。魔力の質を見極められるようになるには、色々な魔力に触れてみることだよ。じゃー今日はこのくらいにして帰ろうか。」
僕はレイさんと別れ、家に帰って部屋に籠もった。
レイさんと魔力操作をやってから、自分の体内の奥底に今までとは違う魔力を感じることが出来た。僕は集中してその魔力を体内に巡回させた。
すると、どこか温かく優しく包み込まれるよな感覚が体内を巡る。
魔力操作をやめると、今日一日魔力をたくさん使ったからか眠くなり、僕は意識を手放した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます