第16話 雷魔法と実戦

魔法の事を学び始めて今日で二週間が経つ。

今日から今覚えている魔法を練習する。

ティナ先生と今日まで魔力操作と魔導書の共感覚を鍛えてきた。

もちろん、早朝のレイさんとの素振りも行ってきている。

少しずつ身体が慣れ始めてきたからか、筋肉痛も前よりは酷くなくなってきた。


あと、母に回復魔法の事を話すと申し訳なさそうに謝ってきた。

僕も無茶なことをお願いしたことを謝ると母は少しホッとした顔をしていた。

実際に少しは効果があるから僕も勘違いしていたし、母が悪いわけではないのは解っているため、お互いに謝罪をして仲直りした。


いつも通りティナ先生の家に向かい、僕は挨拶をする。


「おはようございます、ティナ先生。今日もお願いします。」


「おはよう~エド君。じゃ~今日も村の外に行こうか。」


ティナ先生と手を繋ぎ、魔力操作しながら村の外へと向かった。


「魔力操作が前よりなめらかになってきたわね。エド君、頑張っているね。」


「家でも暇があるときは魔力操作をするようにしてますから。」


ティナ先生に褒められて、僕は照れながら答えた。ティナ先生は満足したように頷き、僕に今日行うことの話を始めた。


「今日から、覚えている魔法の訓練を始めます。じゃ~とりあえず魔導書を出そうか。魔導書を開いてみて。魔導書に自分の魔力を流すと今使える魔法が頭に浮かぶはずよ。魔法の操作の仕方も解るはずだから、あの木に向かって使ってみようか。」


僕は魔導書に自分の魔力を流すと、頭の中に魔法の情報が入ってきた。

今までに無い感覚にとまどいながら、手を木に向けて魔法を唱える。


「サンダーボール」


手から魔力が抜けていくのを感じる。眩く光る手のひらサイズの玉がゆっくり木に向かいぶつかると、ドンッと大きな音がした。


ぶつかった場所に黒く焦げた痕が残っていた。

僕が予想していたよりもサンダーボールのスピードが遅かったが、威力はしっかり確認できた。

僕は初めて使う魔法に興奮していた。


「まぁー初めてにしては上出来ね。操作があまくて魔法の早さも出てなかったし、実戦ではまだまだ使えなさそうだけど、魔法がしっかり発動していたし、一応は木まで魔法が届いたから及第点ね。」


厳しめの評価だが、ティナ先生の顔は喜んでいた。


「魔導書のおかげで頭の中ではどうすればいいかわかったと思うけど、魔法の事を理解して、イメージを高めないと今のまま成長しないからね。」


僕はティナ先生の話を聞き、前世で見た雷がどうだったか思い浮べる。

ティナ先生に了解を得てから再度魔法を唱えることにした。ティナ先生は操作の他にイメージも大切だといった。

僕は体内の魔力を先ほどより早く循環させた。

やはりまだ慣れてないせいか、かなり疲労してきた。

僕はこれ以上は無理だと判断して、木に向かい魔法を唱えた。


「サンダーボール」


先ほどより手から抜ける魔力が多く勢いよく抜ける感じがした。

サッカーボールほどの大きさの玉がすごいスピードで木に飛んでいった。

玉が木に当たるとズドンッと大きな音をたてて木が倒れた。


僕とティナ先生は唖然とした顔で倒れた木を見ていた。


「エド君、本来そんな簡単に制御できないわ。ましてや2回目でそこまで修正してくる子供なんてほとんどいないわよ。理解力があって嬉しいと喜べばいいのか、教え甲斐がなくて悲しめばいいのか複雑だわ。」


「ティナ先生が僕に解りやすいように指導してくれているからです。だから先生のおかげです。本当にありがとうございます。」


最初は少し困惑した顔のティナ先生だったが、僕がフォローすると笑顔に戻った。

実際にティナ先生の教え方は解りやすいので嘘を言ったわけではない。

僕は自分のステータスをながめた。


エドワード 10歳(46歳) 男 Lv4


体力:26

魔力:43

筋力:23

敏捷:27

知力:38

器用さ:30


スキル

アイギスの盾 Lv1

回復魔法(聖)Lv2

雷魔法    Lv1


剣術 Lv2

盾術 Lv1 

弓術 Lv1

魔力操作 Lv1


称号

異世界転生者

アモルの加護

アモルの使徒


スキルに魔力操作が増えていた。本来は授かったスキル以外を増やそうとした場合、努力を重ねてようやく増える。年単位で頑張っても増えない人もいるという。

魔力操作も二週間近くで身についた。

僕はこのことからも、称号の『アモルの加護』が何か成長補正がはたらいてるのではと思い始めていた。

今日の練習を終え、明日は僕とティナ先生とレイさんで少し森に入ることになった。


次の日、朝の素振りは今日はお休みだ。

森に入るための準備をして、待ち合わせの村の入り口前に向かった。

僕が着いたときには、2人はすでに居た。

2人に挨拶をすませ、僕たちは森の入り口まで向かった。


今日は2人が魔法を使いながらの実戦をみせてくれる。

レイさんを先頭に、真ん中に僕、最後尾はティナ先生で森へ進んだ。

今日はなかなか魔獣と遭遇しない。

前に行った川辺付近で休憩を挟むことにした。


「今日は中々魔獣と遭遇しませんね。」


「最近、オズとここら辺を狩りしていたから、警戒していないのかもしれないね。」


僕とレイさんが話をしていると、お花摘みにいっていたティナ先生が戻ってきた。


「向こうに魔獣の足跡があったから行ってみましょう。」


僕たちはティナ先生を先頭に先ほどと逆の隊形で足跡のあった方へ向かう。

レイさんは足跡を見ると、


「ビッグボアかもしれない。僕を先頭に、エド君は真ん中、ティナは最後尾で周囲を警戒しながら進もう。」


レイさんの後について行き、30分位歩いたところで魔獣の鳴き声を聞いた。

すると、100メートルほど先からビッグボアが真っ直ぐこっちに突進してきた。

僕は焦っていたが、2人は全く動じてなかった。

ティナ先生はビッグボアに魔法を唱える。


「エアカッター」


ビッグボアの足に直撃したのか、ビッグボアは体制を崩す。

レイさんは一瞬でビッグボアに駆け寄り、一閃する。

ビッグボアは何が起こったか解らず、立ち上がろうとしたとき、ゆっくり顔が地面に落ちた。

僕は二人の流れるような動きに固まって見ていた。

あんな大きな魔獣をいとも簡単に倒した二人に、僕は興奮する。


「二人ともすごいや!僕もレイさんやティナ先生みたいになれるかな?」


レイさんとティナ先生は僕を微笑ましくみながら、『エド君ならなれるよ』と、二人は僕を優しく抱きしめた。


ビッグボアを狩ったあと、血抜きをしてマジックポーチにしまった。

森からの帰り道はゴブリンも現れた。

見つけると、直ぐさまにティア先生が魔法を唱える。


「ファイアーボール」


赤い火の玉がゴブリンにぶつかると、ゴブリンが燃え上がり瞬殺した。


レイさんは剣に魔法を纏わせる。


「エアエンチャント」


剣を振ると、風の刃がゴブリンの首を撥ね飛ばす。

二人の多彩な魔法を見て僕は心が躍っていた。

僕のそんな眼差しをみるのが心地良いのか二人は機嫌が良さそうだった。

森を出ると僕は二人に感謝した。


「今日は色々見させていただきありがとうございます。僕にはまだ難しいかもしれませんが、二人のようになれるように頑張ります。」


「エド君なら大丈夫よ。いつも真面目に私の授業を聞いてくれてるもの。それに教えたことはすぐに吸収するんだから。」


「エド君の素振りの動きも少しずつ良くなってきているよ。私もエド君に教えるのを楽しんでいるからね。人が成長していく姿をみるのは楽しいものだよ。」


三人で今日起こった出来事を話しながら楽しく家に帰った。


そして、僕は今日も願わなかった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る