第4話 何を願う?

僕はゆっくりと眼を開く。


眼を開くと、先ほどの教会の祭壇でなく白一辺色の部屋だった。

何事かと思い身体を動かそうとしたが、全く動かない。


目の前に徐々に女性の輪郭を帯びたナニカが現れた。

眩しくて最初は見えなかったが、目の前に人とは思えないような美しさをもった女性が姿を現した。


ほとんど裸のような透けた絹を纏っているだけの姿だ。

だけど、性的ないやらしさは無く、ただ眼をそらせないほどの魅了をもった女性だった。


「汝、何を願うか?」


透き通った声で、僕に尋ねた。

僕は何を言われたか解らないようなポカンとした顔をしていた。

僕は我を戻し、綺麗な女性に尋ねた。


「あなたは神様ですか?」


神々しいと言って誰も文句は言わないだろう。

綺麗な女性は笑みを浮かべ、僕に語った。


「私の名はアモーディル。人は私をアモルと呼びます。」


天使のような汚れの無い笑みを浮かべ、名を語った。


「ぼ、僕はエドワードです。父様と母様にはエドと呼ばれています。」


僕は焦って、自分の自己紹介をしてしまった。

アモル様は優しく僕に尋ねた。


「エドは何をお願いしたいの?」


僕は、少しだけ躊躇したがアモル様にお願いをした。


「僕の生まれる前に付き合っていた女性の幸せです。僕は彼女を幸せに出来ませんでした。今誰かと幸せになってるかもしれません。本当は僕が幸せにしてあげたかったけど、今僕にはそれが出来ません。だから、彼女の幸せを僕は願います。」


アモル様は少し困ったような笑みを浮かべ、


「自分のことを願わなくて良いの?人より良いスキルが欲しいとか、人より優れたいとおもわないの?」


僕はアモル様の眼を見て、はっきりと答えた。


「たしかに、大切な人を守る力が欲しいと思います。だけど、僕は前世に大切な人を守れませんでした。泣かせたまま相手と離れることになりました。だから、僕は最初に願うことは前世の彼女だった愛子の幸せです。」


それを聞いたアモル様は最初は難しい顔をしていたが、僕に条件をつけてきた。


「彼女を幸せにするという願いを叶える代わりに、エドはこの世界で多くの人を幸せにしてください。そのための力も与えます。エド、あなたの答えを私に聞かせてください。」


僕は躊躇うこともせずにアモル様に答えた。


「僕はこの世界の人を少しでも多く幸せにする努力をします。だから、お願いします。」


僕が出せる声で力強く答えた。

アモル様はさっきと同じような天使の笑みを浮かべ、僕に応えた。


「私とエドに契約を交わします。エドは私の使徒としてこれから多くの人の助けとなってください。次に会うのは五年後の洗礼の時になるでしょう。それまで努力し、精進するように。」


光が辺りを飲み込み、僕は眩しくて眼を閉じた。



「異世界の旅人に幸あらんことを。」



次に眼を開くと、教会の祭壇だった。

司祭様は、何事も無かったかのように、


「これでエドくんにはスキルが授かられたでしょう。あとは、ステータスが見られるようになってるはずです。後で一人で確認してください。ステータスの内容はあまり人には言わないようにしてください。何か悪用しようとする人も、残念ながら少なからず居ます。」


司祭様の話を聞いた後、僕たちは宿に戻りゆっくりすることにした。


両親は僕を一人にして街に出かけていった。


僕は心の中でステータスとつぶやくと、



エドワード 5歳(41歳) 男 Lv1


体力:8

魔力:15

筋力:7

敏捷:9

知力:20

器用さ:13


スキル

アイギスの盾

回復魔法(聖)


称号

異世界転生者

アモルの加護

アモルの使徒


ステータスを見て驚いたのは、まずはスキルが1つではなく、2つもらえてる事だ。

アモル様の使徒になったことで優遇されたのかまでは解らないが、これはあまり人には言わない方がいいのはわかった。


称号がどんな効果あるのかも解らない。

ただ、両親にどこまで話すべきか迷った。

少なからず、称号は話せる気がしなかった。


スキルも現状どちらを話すかと言えば回復魔法の方が良い気がした。

母は回復魔法が使えるので、怪しまれないと思う。


少し経ったら、両親が帰ってきた。村の人たちのお土産をたくさん買って帰ってきた。


父から木刀のお土産をもらった。


「これから、少しずつ剣術、弓術を教える。魔物の狩りもいずれ手伝って貰うと思う。エド、何か聞きたいことはあるか?」


僕は、母の顔を見ながら、


「アイリ母様に回復魔法の事を教えて貰いたいです。今日、回復魔法のスキルを授かりました。オズ父様は盾術は使えますか?僕は剣術も弓術も学びたいですが、守るための力も身に付けたいです。」


両親は驚いた顔をしたが、すぐに嬉しそうに了承してくれた。

次の日、村への帰り道、よほど嬉しかったのか、いつも以上に母は僕にくっついてきて、父が少し寂しそうな眼で僕たちを見つめてた。







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