1-9 小僧!!貴様か!貴様の仕業だなこれは!!!!!!
一通りの自己紹介や、戦い方などを話し合っていると、
カーンカーンと見張り台から鐘の音が鳴り響いた。
「きたぞー!!
サニーカイザーの部隊だーー!!」
「きたね。
少年、あんたは避難しておくんだ」
「そうはいくか。俺もボウガンで戦うからな」
「馬鹿言うんじゃないよ。
あんたは十分に戦った。ここまでやったなら、
あとは私達の仕事さ」
「・・・けど」
「大丈夫。
少年の居場所は私達が守る。
だから、言うとおりにしなさい」
くしゃりと俺の頭を撫でるアリサさん。
完全に子ども扱いなんだけど、悪い気はしない。
もし俺に姉が居たら、アリサさんみたいな人だったんだろうか。
けど。
アリサさんには悪いけど、戦わずとも、せめて状況と結果は見届けたい。
「わかった。でも、せめて見届けさせてくれよ。
それくらいはしたい」
「少年・・・」
「あいつらがここに攻め込むきっかけを俺が作っちまったんだ。
だから、せめてそれだけはさせてくれ」
「・・・分かった。
ただし、見張り台の1番安全な場所でだよ。いいね?」
「約束する」
「よし」
遠くから砂煙が見えてくる。
同時に多数のエンジン音。
けたたましい笑い声や叫び声なんかも届いてくる。
来た。
奴らが、暁の太陽団とかいう奴らが。
数は50を超えていた。
といっても皆が皆一人ずつバイクとかに乗っているわけではなく、
二人乗りしていたりサイドカーに二人詰め込んでいたり。
今にも壊れそうな車両に何人も乗っていたり。
バイクは30台あるかどうかか?
ただ、その中でひときわ目だつ車両が1つ。
ゴテゴテした外装でワゴン車かあれ?
運転しているのはモヒカンのヒャッハーなんだけど、
車の天上に座席みたいなもん設置して、そこに座る巨漢の男が一人。
「サニーカイザー・・・」
そいつらはこちらに到着するなり、
騒いでいた奴らがだんだんと静かになる。
一部はなんか慌てふためき始めた。
「おいおい、なんだありゃ。あんなのあったか?」
「壁と門だと?」
「ハンターまで居やがる!!
あくまで反抗する気だぜ奴ら!!」
「隊長!どうしやすか!!」
「・・・」
サニーカイザーが忌々しく壁と門、そしてハンターたちを眺め視る。
そのあと、見張り台に気付き、・・・あ。俺を見た。
ってまさか見えるのか。そんなわけないよな?
「こ・・・」
「こ?」
サニーカイザーが立ち上がる。
明らかに俺に気づいてやがるアレは。
銃眼向こうの俺に気付くのかよ、どうなってんだアイツの視力。
「小僧!!貴様か!貴様の仕業だなこれは!!!!!!」
よく響く怒声が俺の元まで届くのだった。
「うへぇ・・・おっかねぇ」
「よくも俺様を騙したな!!
後悔させてやるぞ!!ひょろもやしのジャップごときが!!!!!!」
ジャップて。
いやまぁ日本人だけどさ。
サニーカイザーに比べりゃひょろもやしだけどさ。
つかジャップの意味判るの俺だけだろ。
あぁ、一応説明すると、ジャップってのは日本人を蔑称、バカにする言い方な。
別に知らんでも生きていけるから忘れて問題ないぞ。
「野郎ども!!ぶっ壊せェェェ!!!」
「ヒャッハアアアアアアアアア!!!!!!」
サニーカイザーの怒声の合図にヒャッハー達が一斉にこちらへと向かってくる!
「よし、やるよ!!」
「ふん、雑魚掃除は任せるぞジュリア」
「あー。あたいもカイザー倒してうはうはしたいのにー」
「なに、賞金は山分けだ。当然だろう?」
「あ。じゃあ雑魚相手に楽しちゃうねー」
ジュリアさんのバギーが走り出す。
バイクと衝突する!という直前で少しだけ右に車をずらし、
側面のとげとげホイールにバイクのタイヤをぶつけ、タイヤをパンクさせて無力化させる。
「それそれそれ、しっかり逃げないとひき肉にしちゃうわよー!」
縦横無尽にバギーがバイクを翻弄していく。
次々にバイクが使い物にならずただの騒音を鳴らす屑鉄へと変化していく。
「よし撃ちこめ!ハンターに当てるなよ!!」
ボウガン片手に、いや両手に皆が次々にボルトを撃ちこんでいく。
そう簡単に当たるものではないので、次々に地面に突き立てられる大き目のボルト。
しかし相手には効果覿面。
でかめの、命中すれば即死まったなしなボルトが地面に突き立つんだ。
怖くないわけがない。
「くぁwせdrftgyふじこlp!!」
「ちょおま!反則だろこれ!!チートだ!!チーターだ!!!!」
時折がぎょおおんとかいう音を立ててボルトがバイクに命中する。
元々おんぼろバイクだったんだろう、ろくな手入れもされていないバイクはそれだけで分解して、
ヒャッハーたちを投げ飛ばす。
「アイェェェ!!」
「はわらばーーー!?」
勿論他のハンターたちも黙っちゃいない。
各々の獲物片手に門や壁へと殺到するヒャッハーたちを的確に撃ち倒していく。
描写は・・・うん、ちょっと控えるわ。つか吐きそう。
頭パーンてなってるやつもいるし。
けどこれが現実なんだよな・・・こえぇ。
死が身近にあるよ・・・マジヤベェ・・・。
「おい坊主、もう気が済んだなら下に降りとけ」
「そうだぞ、無理に見届けなくていい。
吐いてこいよ、顔真っ青だぜ」
「うぐ・・・でも・・・」
「ここまでしてくれたんだ、
今さらおめーさんに文句いう奴なんざいねぇって」
「んだんだ。
殺し合いはおめさんみてーな小僧にゃはえーべな」
「俺たちおっさんどもにまかせときゃーいい。
かっこいいところ見せてやるから、もう下がっとけ」
皆がやさしい。
なんか泣きそう。
結局俺はこれ以上は限界だと判断し、
口を押えて降りることにした。
おりてすぐ、吐いた。
------------------
★アリササイド★
「はは、こりゃ楽だねぇ」
獲物片手に突っ込んでくるモヒカン馬鹿を突撃銃で的確に撃ち殺し、
倒れて滑ってくるバイクを飛んで避け、側面からやってきた別のモヒカンをそのままソバットで蹴り飛ばす。
勢いの乗ったモヒカンが綺麗に足の裏に頭をぶつけてくるために首の骨があっさりと折れる。
「やるじゃねぇかハンターども!!!」
車両が轟音を上げてこちらに迫ってくる。
サニーカイザーを乗せた車両だ。
前面に無数のぶっとい棘をぎざぎざに伸ばしたそれにまともにぶつかれば流石に死ぬ。
横っ飛びに避けてそれをかわす、けど奴は既に車には居ない。
自分に影が差す。悪寒が走る。
即座に前へと前転しながら飛ぶ。直後。
ずどおおおおおおん!!!
「うわ!?」
衝撃が私の身体を襲い、数歩たたらふんでしまう。
音の正体は見ずともわかる。
さきほど私が居た場所に何かが飛び降りて、何かをした。
まぁ、誰かなんて分かりきっている。
「チッ、そうか、それがあんたの『ギフト』かい」
そこには地面に両腕を叩きつけているサニーカイザーが居た。
地面が衝撃で若干陥没している。
まともに受ければたとえ車両でもぺちゃんこになるのは間違いない。
なんてバカ力だ。
「へっへ、上玉かと思ったが、なんだ年増か。
俺は年増には興味ねーんだよ」
「煩いね。確かに結婚適齢期は過ぎていると自認しちゃいるけど、
あんたみたいなブタ野郎に言われたくはないね」
「言ってくれるじゃねぇかハンター風情が」
「ブタ野郎には豚小屋がお似合いだ。
今すぐあんたの首を吊し上げてやるから覚悟しな!」
アサルトライフルを構え、照準を合わせる。
しかしそれがどうしたと言わんばかりに仁王立ちするサニーカイザー。
チッ、こいつ、鉛玉も効かないようなギフト持ちだってのかい?
もしロックと同等とかだとシャレにならないんだけどねぇ・・・。
「やれるもんならやってみな、ババア!!」
サニーカイザーが駆ける!
即座に引き金を引く。
バースト射撃により3発の銃弾がサニーカイザーの顔に向けて発射される。
しかしそれを分かっていたのか、両腕を顔の前でクロスさせてガードする。
「なっ」
ギギギン!という甲高い音が響き、
無傷のサニーカイザーが眼前に迫る。
こいつの皮膚、まさか本当に鋼鉄並に硬くなるのか!?
プロテクターどころかバンテージなんかも巻いてすらいない素手の皮膚が銃弾を弾くのに流石に驚きを隠せない。
「死ね」
駆けこんだ勢いのまま拳をフックよろしく繰り出してくる。
辛うじてそれを紙一重で躱すが。
「ぐう!?」
すさまじい剛拳から繰り出された攻撃は、
かすっただけなのによろけそうなくらいの衝撃が伝わる。
慌てて後方に飛び体制を整えようとするが、
ヤツの追撃がそれを許さない。
「どうしたどうしたババア!!」
右を振りぬいた後は左、次に右、
拳圧でも起こしそうで起きないちょこっと残念な剛拳が次々に襲い掛かる。
それを左に右に後方にかわしながらもなんとか反撃しようと銃を構えるけど、それを許しちゃくれない。
しかし気になった。
さっきから拳でしか攻撃してこない。
こいつまさか。
「いい加減死ねや!!」
右から繰り出されるブローをしゃがんでかわし、そのまま足払いを仕掛ける。
「うお!?」
サニーカイザーがあっさりとその場ですっ転ぶ。
そのスキを逃さず銃器を頭に向けて構える。
咄嗟にサニーカイザーが頭を守ろうと腕をクロスさせるが、
それによりこちらへの視界が途切れる。
すかさず狙いを変え、足へ照準を合わせる。
奴が気付く前に、銃弾を撃ち込んだ。
「ぐおあ!?」
先ほどと違い撃ち抜かれるサニーカイザーの足。
やはり!
続けてもう片足も撃ち抜き、立てないようにする。
やはり問題なく撃ち抜ける。
「ば、ババァてめぇ・・・」
「やはりね。あんたのギフトは腕の強化。
どういう名前かは知らないけど、それ以外は普通なんだろ?」
はじめはヤツの皮膚が鋼鉄にでもなるギフトなのかとおもった。
だが違う。
奴は顔を守った。
それは顔は鋼鉄にはならないということ。
そして攻撃は両腕の攻撃のみ。
ならば、である。
両腕は確かに凶悪だった。
守りにも攻めにも使えるギフトなんて厄介以外のなにものでもない。
けど。
「ギフト便りの脳筋ザコに、ハンターが負けるわけないだろ」
再び左右の足を撃ち抜き、両肩も撃ち抜いて両手を動かせなくする。
完全に動けなくなった後、頭に照準を合わせる。
「ま、まて、やめろ、やめてくれ、俺は、俺は」
「この期に及んで命乞いとはね。
所詮悪党は悪党でも小悪党ってことか」
「た、たのむ、俺はやれと言われてやってただけなんだよ、
な、なあ、ここには俺と同郷の人間がいるんだ、そいつに免じて見逃してくれよ」
同郷人?
・・・あぁ、さっき小僧とか叫んでいたが、そいつのことかね。
「誰だそいつは」
「最近ここに来たはずだ。
その壁を作ったのもそいつだろう、
たのむ、もう奴らの言いなりにはならねーから、な」
「・・・」
あの少年と同郷人というのはどうしても気になった。
1回顔合わせだけでもさせるべきかもしれない。
「変なマネするんじゃないよ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます