1-8 なんでみんなして俺を坊や扱いするんだ・・・

「よし、これならいいだろ!」


「そうだね。ボルトもこれなら問題なく作れそうだ」


俺とアリサさんは、試行錯誤の上、

なんとか両手で持つサイズのボウガンを完成させた。


はじめはデカすぎて両手ですら持てなかったり、

サイズを調節していっている間にボルトのサイズを考慮していない事に気付いて、

気付くまではサイズに比例したボルトのデカさが必要で用意ができそうもなかったり。

っていうか槍でも飛ばすんですかというサイズだったり。


ともかくまずボウガンのサイズを確定させた後に

ボルトの箇所だけ小さくイメージして創り上げたり。

次に真っ直ぐ飛んでくれないのでその調整をしたり。


ともかく試行錯誤の時間だった。

素材どんだけ消費したんだろうな・・・。

いやまぁ、失敗作は壊して素材に戻しつつやってたけど。


そんなわけでようやっと完成にこぎつけたんだよ。

もう日は落ちて真っ暗だったんだけどな。


「やっとおわったのぉ・・・?」


「ボク眠いよぉ・・・」


「ああ、ごめんな。煩くしちゃって」


流石に外でのクラフトはやめておこうってことで、

俺が世話になってる小屋?でアリサさんと一緒にクラフトしまくってたんだが。


「あとはこいつを量産するだけか・・・ふぁ・・・」


「イメージが固まっている今のうちに作っておきたいね。

 10個いけるかい?」


「素材はどう?」


「問題ないね。チャチャっと作ってもう今日は眠っておこう」


「おっけぇ」


こうして、俺とアリサさんによる共同開発が幕を閉じる。



翌朝にはそのボウガン10丁を長さんたちに提供することにした。

ボルト?

もちろん作ったぞ。

500本くらいな。


「なんと、こんなものも作れたのか」


「あぁうん、俺、壁クラフトじゃなかったみたいでさ」


「驚いた。基本的にクラフトのギフトというのは、

 特定のものしか作れないはずなのじゃが・・・」


「少年は壁、門、見張り台にモデルガンのようなもの、ボウガンまで作り上げた。

 あとスプーンもね。

 きっと少年のギフトは『クラフト』なんだろうね」


「ともかく・・・ともかくありがたい。

 これでわしらの何人かも迎撃に参加できる」


「あんたたちは見張り台の銃眼から援護射撃をするんだ。

 矢面には私と、今日来るであろうハンターが立つからね」


「了解した。

 いますぐこれを使えるように仕込まねばならんな。

 おおい、こいつを持てそうな男を集めよ!」



予定では今日、奴らは襲撃に来る。

集落の皆は既にバリケード内部に避難している。

戦おうとしている人たちは各々の武器を片手に集まりだしている。

その中の、猟銃を持っていない10人にボウガンを渡す長。


「使い方は私がレクチャーする。

 猟銃を持ってるあんたたちは見張り台で警戒するんだ」


「分かった!」


もう時間があまりない。

皆がせわしなく動き始める。






ある程度の準備が終わったころ、

見張り台で見張りをしていたあの棒を俺に突き付けてきた人が大声を張り上げる。


「おうい、誰か来たぞ!!」


その声に、長と俺とアリサさんが確認に向かった。






「あれは・・・バイク2台に改造バギー1台か」


3台の車両がこちらに向かい、門の前で停車する。

サニーカイザーたちには見えないけど、あれは・・・?


「どうやら残りのハンターが来たようだ。

 私が出迎えて来よう」


アリサさんが門を開聞させて、3台の車両へと向かう。

なんだか心配になった俺もそれについていった。


「少年は危険だ、待ってな」


「アリサさんだって一人じゃ危険だろ。

 いざとなったらそこらの土で壁作るから」


「そりゃ便利なバリケードだね。

 わかった、一緒に行こうか」


「おう」





「アリサ!遅れてすまない」


「ハヤテにロック・・・それと誰だい?」


「ちょっとアリサ姐ー。あたいを忘れたわけー?」


「冗談だよ、まさかあんたが来るとはね」


どうやら3人ともアリサさんの知り合いのようだった。

よくかおあわせをするのか、お互いに手を叩き合っている。


「アリサ姐、そっちのかわいい坊やはなに?まさか息子?」


「ぶほっ」


「ジュリア、冗談にしては面白くないねぇ?」


「だって可愛いんだもん。どこで拾ったの?」


「この集落の子だよ」


「へぇ。ねぇ坊や、お名前は?」


「なんでみんなして俺を坊や扱いするんだ・・・ユウキだよ」


俺、そんなに童顔とかだったっけ・・・?

これでも20越えてるはずなんだが・・・。


「じゃあユウキちゃん、お姉ちゃんとこれからデートしなーい?

 ほら、ドライブには最高なバギーもあるから。

 あ。お膝の上に乗ってもいいわよー?」


「えぇ・・・?」






ひと悶着?ありはしたものの、

全員この集落を守るために集まってくれたハンターだ。


まずハヤテさん。

二丁拳銃を扱う男性。

すらっとした体形でそこまで力が強そうには見えないんだけど、

早さで戦う人らしい。というか本気で動いたときは姿が見えなかった。

え、これがヤムチャ視点??


次にロックさん。

妙に重装甲な防具を身に着けた男性。

サニーカイザーよりかは小さいんだけど、それでも俺の2倍はありそうな身体のデカさ。

その重装甲で仲間を守ったり、相手に突っ込んでぶっとばしたりするらしい。怖い。


最後にジュリアさん。

見た目がえぐいバギーに乗った、ツインテールのお姉さん。

アリサさんより若いんだろう、俺よりは年上に見えるけど。

なんか俺を見る目が怖いんだけど。え、大丈夫これ?


そんな視線に気づいたのか、いつの間にかアリサさんが俺の前に立ってガードしてくれていた。

頼りになります姐さん。



「さて、それじゃあこの4人が矢面に立って、集落を守るわけだけど、

 それでいいかい?」


「問題ない」


「もとよりそのつもりだ」


「あたいはとにかく轢き殺しまくればいいよね?」


「そうだね。ただ、サニーカイザーにだけは気を付けるんだよ。

 奴の膂力は装甲車すら素手で受け止めると聞いているからね」


「流石にそれはないでしょ」


「いや、分からんぞ。

 ロックだってバギーくらいは受け止められる」


マジかよ人間辞めてるな。


「ロックはギフト持ちでしょー?

 サニーカイザーがそうとは限らないじゃない」


ん?

ロックさんはギフト持ってるのか。

ギフト持ちってそんなに人外的な戦力持ち合わせられるもんなのか?


・・・考えてみたら俺も俺で大概だったわ。

なんだよ一瞬でものを創り上げるって。


それよりも、伝えなきゃいけないな、これは。


「カイザーならギフト持ってるぞ」


「ん?」


「え、そうなの?坊や」


「うん。そう言ってたし」


これはカイザーが言ってたことだ。

流石にギフトの内容までは話せないとは言ってたけど、

そのギフトの能力があったからこそ、隊長の座につけたと言っていた。


「言ってた・・・って」


「坊や、サニーカイザーと会ったことでもあるの?」


「会ったっていうか、1回捕まった」


俺のそんな言葉にアリサさん含めた4人が、なんか俺を可哀想なものを見る目で見始めた。

え、なにこれ。


「そうか・・・何されたかわからんが・・・辛かっただろ・・・」


「まだ幼いが・・・美形だからな・・・」


「大丈夫よ坊や!あたいが汚れた思い出を上書きしてあげるからね!」


なんかジュリアさんが俺を抱きしめ・・・てこようとしてアリサさんに顔を掴まれてた。

この人なにかにつけて俺を攫おうとするんだが・・・。


ていうか幼い?美形?

え、俺が??


・・・そういえば鏡とか見てなかったけど、

もしかして俺、外見変わってんの??

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