1-7 俺の手に収まってるこの拳銃は何だよ。

どうせ使うなら、掘りにするような感覚で土を使用したほうが好都合だ。


ということで。

壁手前の土を使う感覚で、土壁を張っていく。


ただ、素材として使用する場所までは完璧に選ぶことができないみたいで、

かなり歪なあなぼこが続く状況になってしまった。


だけどバリケード班のおっちゃん達がシャベルやスコップみたいなもん片手に旨い具合に整備してくれたため、

バリケードと土壁の手前側にいい感じの堀が完成したのだった。


「これで水でも流せば大阪城も真っ青な完璧な守りだな」


別に大阪城に限らないか。水堀なんて。

つか大阪城じゃダメか。堀埋められちまうし。


「貴重な水を流せるわけないだろう」


俺の呟きを聞いていたのか、アリサさんが俺の肩を小突きながらそう答えてくる。


「そりゃそうか。

 けどこれで下手な車両でも突っ込んだ所で堀に落ちるだけになるよな」


「あぁ、バリケード自体も背が高い。

 はしごで乗り込もうとするならかなりの長さと頑丈さのあるはしごじゃないと折れるだろうね」


なかなかいいものが出来た。

ていうか守りだけならピカ1じゃないかこれ。


「あとは戦力だね。

 攻撃できなきゃなぶられるだけだ」


「一応猟銃みたいなのはあるみたいなんだけど・・・」


この村の戦力は猟銃4個。以上。


本当はもっとあったらしいんだけど、

今回ハンターを雇う為に売ってしまったらしい。


本末転倒じゃね?それ。


「4個じゃねぇ・・・」


折角銃眼付きの見張り台を作ったというのに、

利用するための武器がない。いみねーし。

しかも猟銃は1発ずつ手動で装填するタイプだ。リロードに時間がかかる。


「そうだユウキ」


「おん?」


「あんた、銃器は作れないのかい?」


「はい?俺、出来るのは壁。

 ギフトは壁クラフトだよ?」


今度は何を言い出すんですかねぇ。

俺は壁を作る壁クラフトでしょ。

銃なんて作れるわけがないじゃないか。

そもそも作れるなら今頃大量生産してるわ。

全く。

どうせ作るならあれだよな。

装填数の多いグロッグとかだよな。

あれ確か装填数17発だっけか?

確か見た目がこんなんで、持ちやすくて・・・。



・・・



・・・おいィ。

俺の手に収まってるこの拳銃は何だよ。


「それは?」


当然俺の手元に出来上がったものを確認するアリサさん。

俺が聞きたいわ。


「・・・拳銃?」


手にしっくりくるサイズで収まっているそれは、

なにかのゲームとかで見た記憶のある拳銃だった。

ただ・・・。


「あー、ダメだ。見た目だけだコレ」


試しに地面に撃ちこもうとしたけど、グリップをいくら引いてもカチっとすら鳴らない。

そもそもマガジンが出てこねーし。カチャっとリロードする感じのスライドもびくともしねーし。


「けど、つくれたじゃないか」


「いや聞いてた?見た目だけよ?」


「そうじゃない、ユウキはさっき壁クラフトと言ってただろう?

 けどそれは壁じゃない。どう見たって拳銃だ。

 まぁ完成はしていないけどさ」


「・・・」


そういえば。


「え。俺壁以外も作れんの?」


「そうなんじゃないかい?

 ためしにスプーンとか簡単なの作ってみたら?」


そうだな・・・。

どれ、試しにこの拳銃の出来損ないを素材に作ってみるか。


・・・


・・・


・・・


あれ?


「できないじゃん」


「えっ。そうなのかい?」


スプーンをイメージしてみるも、全然できない。


「やっぱ駄目だな。スプーンは作れないのかもしれない」


「こんなものを作っておいてスプーン1つ作れないっていうのは、おかしな話だね」


「俺が聞きたいわ」


「そりゃそうか、はっはっは」


ばしばし俺の背中を叩きながらアリサさんが豪快に笑う。

大阪のおばちゃんか!


「ところで素材もなしに作れるもんなのかい?」


「ん?いや、この銃もどきを使って作ろうかと思って」


「あぁ、なるほどねぇ・・・もしかしたら」


「?」


アリサさんが何か思いついたのか、一旦どっかに移動し、戻ってくる。


「こいつでもう1度作ってみな」


と手渡されたのはバリケードづくりでも使用した鉄クズスクラップ。

まぁ、出来たらいいなという程度の意識でイメージしてみる。

すると・・・


「出来た」


「やっぱりね」


スプーンが出来上がった。え。なんで??


「多分だけどさ、素材からじゃないと作れないんじゃないかい?」


「素材から・・・?」


今までバリケードを作ってきたのは、木片と鉄クズからだ。

確かに素材と言ってもいい。

土壁を創り上げたのは足元近くの地面を材料にしてだ。

まぁ、地面は素材といってもいいかもしれない。

そして今回失敗したのは拳銃もどきを使用して、だ。

確かに素材にはなるかもしれないが、見た目は拳銃。素材には見えない。


「マジか。これマジなのか」


となると俺のクラフトは、壁限定ではなかった!

どこまで出来るのかは知らんけど、イメージ出来る範囲であればできそうだ。


しかし・・・


「拳銃はできそうもないなぁ」


少なくともガワしか知らない俺の知識では、

内部構造までは想像できない。

バネとかギアとか。あるのかすら知らんし。


「ふむ。なら簡単な武器ならいけるかい?」


「簡単って、どんなの?」


そう尋ねると、アリサさんがズボンのすそを片方めくりあげる。

ちょっと筋肉質だけど綺麗な素足があらわになり、

その足にくくりつけられていたのであろうものを取り外す。


なんだこれ。ボウガン?


「こいつならどうだい?」


手のひらサイズの小さなボウガンを差し出しながら確認してくる。

ふむ、ボウガンなら確かに拳銃ほど複雑じゃないとは思うけど・・・。


「どれ」


小さなボウガンを受け取り、一旦ボルトを地面に発射させた後にくまなく確認する。

確認中に撃ち出されでもすればたまったものではないし。


一通り確認を終えた。

頭の中で設計図というか構成というかを思考する。

さて、どうだ?出来ればいいんだけど。


用意された素材が消費されて、俺の手に全く同じ見た目のボウガンが出来上がる。


「お、出来た」


「よし、じゃああとは使えるかどうかだね」


アリサさんがさっき撃ち出したボルトを地面から引っこ抜き、

俺の手に取っているボウガンにセットする。


「さて・・・」


ボルトは問題なくセットできた。

アリサさんがボウガンを壁に向け、引き金を引く。


ヒュッ トッ。


ボウガンが壁に当たり、ボルトが突き刺さる。

うわ、これ刺さったら普通に死ねるわ。


「うん、問題ないね」


どうやらこれなら量産できそうだ。


「ただ、これはあくまで緊急用の武器だから、

 威力は控えめだし飛距離も短い。

 もう少し大きなサイズ、そうだね、両手で持つようなサイズがいいね」


ふむ、そうなると今の手のひらサイズより3倍くらいのデカさかな?




俺とアリサさんは、

飛び道具の確保のためにその日一日を費やすことになった。

明日はいよいよ襲撃のある日だ。

それまでになんとしても完成させたい。

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