1-5 アホ!でられねーじゃねーか!!
「今、小僧なにした?」
「なにって・・・え、これ俺のせい?」
さっきまで何もなかった場所に、同じようなバリケードが2枚更に増えていた。
代わりに山にしていた障害物の鉄材や木材が消えている。
「お前さん、もしかしてギフト持ちか!?」
「えっ」
「おーい長!こいつもしかしたらギフト使いだぞ!」
バリケードの事を聞いていたおっさんが長の元に走っていく。
少しして長と共にこっちに戻ってきた。
え、ギフトってこんなこともできんの?
「お前さん、ギフト使いだというのは本当か?」
「いや、俺に言われても・・・」
「いーからもっかい同じの作ってみれ。ほれほれ」
ほれほれって言われてもなー・・・。
えーと、あんときは確かこんな壁を何枚もつなげればいいんじゃね・・・って・・・。
「・・・」
「・・・こりゃたまげた」
「マジかよ・・・」
つなげればとか考えていたら、本当にバリケードの隣にバリケードがひゅっと現れて、繋がっていた。
そして代わりに別の資材の障害物の山が消えている。
「こりゃぁ、もしかしたらお前さん、壁クラフトのギフトかもしれんな」
「壁クラフト・・・?」
え、なにその微妙なギフト。
●●●
俺がバリケードを作れることが集落に知れ渡り、
現時点で山にしているスクラップの障害物をそのまま壁にしてくれと頼まれた。
この俺の壁クラフト?は、近場にある素材を使用して、そのままイメージしたものを作ってくれるようだ。
なので現在、俺は言われた範囲に先ほどの壁・・・より背丈を高くしたものを作っている。
「こいつはいいな。俺らの背丈の倍もある壁とかそう簡単にはのりこえられねーだろ!」
「いいぞ若造!どんどん作ってくれ!」
「じゃあ代わりに資材持ってきてくれよ」
「わーってるって、資材運ぶのは頼むよ」
先ほどまで障害物の山設置をしていた男衆達が、
猫車みたいなのに資材を持ってこっちへと運んでは戻るを繰り返している。
俺はどんどん壁を作っていき・・・
「ふいいいい・・・」
言われた範囲の壁はりを終了するのだった。
・・・ってやべ。
「全部壁にしちまった!」
「アホ!でられねーじゃねーか!!」
俺はぐるっと囲むようにバリケードを張った。
周囲も喜びながらせっせと素材を持ってきてくれる。
だから失念していた。
「入口のこと忘れてた」
「しゃーねー俺も忘れてたしな。おーし、破壊すんぞ!」
完全にバリケードに閉ざしたために、出入り口がない。
慌てて全員で1カ所のバリケードを破壊。
ていうかめちゃくちゃ硬い!なんだこれ。ただの鉄材と木片で作ったバリケードだぞ!?
1枚破壊するだけでバリケード班総出で1時間くらいはかかってしまった。
「やべぇなこの硬さ」
「これならそう簡単に破られることはなさそうだな!」
目の前には無残にも破壊されたバリケードが。
これは素材として再利用するからいいけど。
「そうだお前、バリケード作れるんだから、門もいけるよな?」
「門?え、門??」
「そうだ門。ここに作ってはくれんか?」
門・・・門?
え、バリケードじゃないんだけど。
壁クラフトでいけるんかね・・・?
うーん、門といえばこう、かいもーん!て言われると外開きに開くあの門だよな。
デカくて頑丈で、破城槌でも簡単には壊れないアレ・・・。
・・・アレ?
「お前・・・」
「うわお」
考えを止めてふと前を見ると、
見上げるような巨大な門がそこにあった。
「・・・いや、確かに門作ってくれとは言ったが」
そこに出来上がったのは門だ。確かに門だ。
だが大きさが、バリケードを2枚ほど縦に伸ばしたくらいのデカさと、
バリケードに空けたはずの穴のサイズを2~3倍は超えたモノがででんと設置されていた。
おかげで門の途中にバリケードがある。邪魔くさい。
「だれがここまでせぇ言うた」
とはいえ確かに門であり、開閉自体は問題なく行える。
しかもイメージしたのが鎖で釣るされ、ハンドルを回して前倒しに開閉するタイプになり、
門がそのまま橋にもなる。
つまり、堀なんかを掘ればいい感じの堀付き城門になるということだ。
・・・掘る気があればだけど。
なお、干渉していたバリケードは気合で全員で破壊し、門と旨い具合にくっつけた。
おかげでこれ、誰が破壊してまで入ってくるの?っていう具合のモノが完成してしまった。
「ま、まぁ、守りはこれで完璧・・・完璧すぎんだろ・・・」
若干呆れた具合にバリケードを一緒に作ってたおっさんが脱力したように呟く。
でもここまですれば大抵の奴は無言で首を横に振って立ち去ってくれる。はず。
「折角だしもっと広く作ります?」
「資材足りるか?」
元々即席バリケードを作るために集めてた資材は、
俺の壁クラフト?のおかげで半分以上使い切ってしまった。
というか、むしろ半分以上程度で済んだと言える。
なにせ、即席バリケードは鉄材や木片を適当に積んだだけの山の予定だったんだ。
それでも使い切って今と同じ範囲程度にできるかどうかだった。
なお山の高さは膝上より高くなったらいいな程度。
「以外と消費量少ないんだよね。
足りないと言えば足りないと思うんだけど、けっこう囲めるかと?」
「まぁ・・・今回は諦めよう。
凌げたらその時は頼むと思うぜ」
ばしばし肩を叩いてにやりと笑ってくれる。
どうやら今後もここに居ていいと言ってくれているようだった。
「でもこれだけだと心許ないというか、けっきょく壊されるだけだよなぁ」
「ん?」
今行ったのは、壁と門を作っただけ。
確かに容易には攻め込まれないだろう。
しかし、時間を掛ければ攻め込んでこれる。
はしごを使えばバリケードは越えられるし、門だって爆発物を設置すればいずれ壊れるだろう。
それをどうにかする手段が要る。
「こう、やぐらみたいなのを作ってそこから狙撃できるようにでもしな・・い・・・と・・・・」
「・・・おいィ」
「ごめんなさい」
某スニーキングなゲームに出る、
見張りなどが利用するような櫓・・・というか見張り台。
どうやら残った資材を半分近く利用して、でんっと創り上げてしまったようだった。
え。壁クラフトってこんなのも作れるのか。
「で、なんだ?これ」
イメージしたのがバリケードに丁度隣接するようなものだったので、
いい感じの配置で設置は出来ていた。
門の横、バリケードに切り替わる丁度の位置に、
2~3階建て程度の高さの鉄で出来た見張り台が配置された。
「この階段を上って・・・」
イメージ通りならと階段を上り、
流石に窓などはなく、簡易的な造りであったが、
ちゃんと身を守れるように登った先の場所は銃眼のような作りの壁にもなっていた。
「ここで見張りをする事も出来るし、
銃とかを使ってここから射撃する事も出来る」
「ほう・・・しかもこれ、相手側はこの隙間を狙わんとならないわけか」
「そうそう」
これなら、門を壊そうとしていたり、
バリケードを越えようとしていてもここから攻撃が出来る。
「よし、早速誰かに見張りをさせよう。
おうい、誰か銃使えるやつ呼んで来い!」
結果的に、有事の際にはここから集落に知らせられるように鐘が設置され、
常に二人体勢で見張りが立つことになった。
また、設置したのが門の右側だったこともあり、
左にも同じものを設置してくれと頼まれ、つくろうとしたんだけど・・・
「うーん・・・」
「どうした、ダメか?」
「いや、つくろうとしても作れない。
なんか素材不足してるのかもしれない」
1つ目を作った時は相当数の素材が消費されていた。
木片はつかってなくて残ったけど。
「あー、ならあとでクズ山から持っていくとしよう」
「クズ山?」
「ここから南に1キロほど進んだところに屑鉄の山があるんだよ。
モンスターも住みついちゃいるんでかなり危険ではあるんだが、
こんな完璧な防御建築が出来るなら、持ってくる価値はあるってもんだ!」
世紀末ヒャッハーなだけじゃなく、
モンスターなんてのも確かに居るんだったなぁ。
やべーわこの世界。
「さて、今日はこんな所だな。
明日はクズ山で鉄材資源を獲得しに行くとしよう」
「おう!」
こうして、襲撃前の1日目が終了した。
襲撃まであと2日。
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