1-4 誰がしわくちゃババアだこのすっとぼけじじいが!!

★集落入口前★


「よーじーさん。よくも俺たちを謀ってくれたよなぁ???」


「な、なんのことじゃ。おぬしらを謀るなど恐れ多い・・・」


「しらばっくれんじゃねーぞ?

 ここはじじいとばばあしかいねーとかほざいてただろ!」


「そ、その通りじゃ。

 ほれ、見てみなされ。あのしわくちゃババアを。

 わしの嫁じゃぞ。

 まさか欲しいのかの?」


「誰がしわくちゃババアだこのすっとぼけじじいが!!」


「うるさいわい!まーだ若いつもりかお前は!」


「ハン!そこらの若造にだってまだ美貌では負けやしないよ!」


「・・・だそうじゃが・・・欲しいか?」


「いるか!!    ・・・ってそうじゃねーよ!!

 お前らの集落に若いのが居るのは分かってんだよ。

 謀られた隊長はカンカンだぜ?」


「しかし、本当に」


「そういうのはもういいんだよ。

 で、どうするよ?隊長のご機嫌を取る方法は1つだけだ。

 隊長が満足するだけの若い奴らを貢ぐこと、

 あとは食糧と名のつくものを全部明け渡すこと。

 もちろん水もな!」


「そ、そんな・・・」


「できないってならここをぶっ潰すだけだ!

 いいか、三日くれてやる!それまでに用意しておくんだな!!ヒャッハー!!!」




------------------


「と、いうことじゃ」


「なんてこった・・・遂にここも目を付けられちまったのか・・・」


「いや元々目は付けてたんだろう、

 ただ若者が居ないというのを真に受け続けて見逃していただけでな」


「つまり何もかもコイツが悪いんじゃねーか!!」


びしーっと棒で俺をゆびさす・・・えーと、確か門番みたいなことしてた人。


「よさぬか、彼はきっかけにすぎぬ。いずれこうなってたはずじゃ」


「だけどよォ!!」


「そうだよ、コイツが原因ならコイツを突き出せば納得するんじゃないか!?」


え、ちょ、ま。

それはちょとsyれにならんしょ・・・。


「無駄じゃよ。

 奴らは満足するだけの若者と言った。

 なら彼だけ差し出したところで満足はせんじゃろ」


「う、く・・・」


「そんな・・・」


人を犠牲に、人身御供にしろてきなことを言っておきながら、

それが無駄だと分かると肩を落とすお前ら、俺のガラスのハートを舐めんな。

人柱にされそうになった俺のほうがショックだよ!


「・・・どうする?」


「どうするったって・・・」


ざわざわとみんなが話し合い始める。

逃げるか、なんとか差し出せるものを差し出して許しを請うか。

そんな話ばっかり出ていた。


だけど俺にはひとつ考えが思い浮かんでいた。

けどこれ言って大丈夫かね・・・?


・・・いや、いいや。

言うだけ言ってやれ。

決めるのは俺じゃねーし!


「なぁ、傭兵とかを雇ったりは出来ないのか?」





「傭兵・・・?」


「雇うって、俺らがか?」


「無駄だろ、傭兵で勝てるわけがねぇ!」


「いやしかし、それなら傭兵じゃなくハンターを雇えばいいんじゃないか?」


「ハンター・・・?

 おいおい、こんな集落まで来てくれるようなハンターいるのか?」


「それは出せる賞金次第だろ?」


「だが確実に来てくれるかわからん上に勝利できる確証がないんだぞ?」


俺の言葉に新しい選択肢が生まれたのか、一気に話し合いの内容が変化する。




--------------


さて、唐突だがこの世界について分かったことをまとめておこう。


まずこの世界は、

核戦争含めた色んな結果で1回文明がズタズタにされた荒廃した世界。

しかもその理由が色々凄い。

つかヤバい。

なんで人類生き残ってんのてきなレベルで。


まず世界戦争が勃発した。

はじめは核は使わなかったらしい。

使ったら終わるし。

んだけど、お互いに引くに引けなくなり、とある国は強化した動物を利用した強化兵を。

とある国は人工AIを創り上げて完璧な作戦を任せ、

とある国は結局核を不意打ちで使用しようとした。


その結果、人工AIは人に反逆して核弾頭をぼこすか撃ち上げる。

強化された動物は人の言う事なんか一切聞かずに野生化してモンスター化。

不意打ちで核を打ち上げたはいいけど結局自分たちにも核が飛んで来たりで自滅したり。


まぁそんなわけで荒廃しちゃったわけだ。


それから何十年もたって放射能も落ち着いて、人類はしぶとく生き残った。

だけど野生化した強化生物はさらに生態系を複雑化させて人を襲うわ

人工AIは更に工場を建設したりして殺戮自動兵器を創り上げるわ

放射汚染の影響で変異した生物や人が化け物化してやっぱ人を襲うわで

ほんっと、よく人類生き残ってるよなって感心したくなる状況なのがこの今の世界。


まぁ人だって黙って駆逐されつづけてるわけじゃない。

生き残った人たちがかきあつめた残りの技術と兵器やらを利用して

有象無象を撃退しながら生息圏を確保。

居住生息できるエリアを徐々に確保しながら生き延び続けていた。


そんな中生まれたのが、ハンター。

殺戮兵器や強化・変異生物などのモンスターを倒し生計を立てるという戦士たち。

そしてそのハンターを支援するのがハンターズギルド。


ハンターは並の戦士や兵士などと違い、

戦い慣れしまくっている一騎当千が多いらしく、

その気になれば一人で盗賊部隊を壊滅させるのもザラらしい。

特定のギフトを所持している場合に優遇されたりするので、けっこう人気もある。


ただし、あくまで彼らはハンター。

モンスターや盗賊などのいわゆる善良な市民を脅かすような存在を倒すことを前提としているのであって、

傭兵とは違い人同士の戦いには関与しない。勢力争いとか。


そして、ハンターのもう1つの特典として、賞金首制度がある。

たとえば先日俺が出会ったサニーカイザー。

アイツ、25000ゼニドの賞金首らしい。

1ゼニドでリンゴ1個と交換できると考えれば

とんでもない賞金額だという事がお分かり頂けるだろうか。

なおこの賞金首制度、正式なハンターでないと賞金もらえない。

なので、賞金首目当てのハンターなんてのもいるらしい。



-------


まぁ、その賞金首情報もエサにできるんじゃね?ってことで、

早速この集落でバギーを持ってるあの俺に棒を突き付けた男性が、

村中からかき集めた2500ゼニドを引っ提げてハンターズギルドへと車を走らせたのだった。


「来てくれればええのう・・・」


「一人でも来てくれれば希望はある。

 なにせハンターは一人でも1部隊に匹敵すると言われているからな」


「すげーなハンターって」


全く人間離れした奴ってのはどんな世界にもいるもんだーね。

俺の世界には居なかったけど。


いや居るか。一応。

常識範囲内だけど。


「さて、それじゃあ俺らも戦う準備だけでもするか」


「そうじゃな・・・ひとまずバリケードを簡易的なものでもいいから作らねばな」


ハンターが戦ってくれるとしても、

集落側としても戦えるヤツは戦わないと、ってことで、

早速必要最低限の範囲を鉄クズや木くずを利用したバリケードとは名ばかりの障害物を設置することになった。

勿論俺も手伝うよ。


で、手伝うのはいいんだけど・・・。

これ、あってもなくてもかわらなくね?って言う感じのが並べられ始めている。


「ほんとにこれ役に立つのかよ・・・」


疑問に思いながらも出来る事なんてこれくらいだよな、って思いなおす。

そもそもバリケードってのはもっとこう、背の高い壁みたいなものでな?


ん?


なんだいつのまにいい感じのバリケードがここにあるじゃねーか。

こいつを並べたほうがマシじゃね?ちと聞いてみよう。


「おーい」


「おう、どうした坊主」


「これ、こういうのあるならはじめからこれ並べたほうがいいんじゃねーの?」


と俺が指差すところに、大人の身長程度の高さのある木と鉄材で出来た壁がある。


「・・・なんだこりゃ?こんなのここにあったか?」


「へ?」


あったか?って、あんたらの集落だろ?

こんな感じのバリケードをさ、こうやって並べれば。


「ほら、こう2枚3枚と並べりゃいい感じの壁・・・に・・・」


・・・あれ?


おかしくね?


なんで俺が指差した場所に壁増えてんの??

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