1-3 助けてもらっておいてアレなんだが・・・本当にすまん。
★13番隊隊長のお部屋★
「奴を部屋に押し込めたか?」
「へい。一応見張りは立てておりやす」
「なら明日、この集落の近くまで送ってやんな」
「それはかまわねぇんでやすが、なんでそこまでされるんで?
その、同郷ってやつの為ですかい?」
「馬鹿かてめーは。
なんで何の役にも立たなそうなもやし小僧の為に何かすると思ってやがんだ?」
「へ?」
「この集落、覚えてんだろ?
年寄りしかいねーから若いもんは出せねぇとほざきやがった場所だよ」
「へ、へぇ、本当に食糧もろくにありゃしねー場所でしたぜ」
「そこによ、若者が居たらどうよ?」
「・・・どうなるんでやすか?」
「奴らは嘘をついたって事だ!
この俺様に楯突き偽りをほざいて言い逃れしたって事だ!」
「なるほど!それで!」
「潰してやるんだよ!見せしめ含めてな!!」
「ヒャア!汚物の消毒ができるわけですかい!」
「もしかしたら若い奴らを隠してる可能性もあるからな。
潰すついでに戦利品もがっぽり頂けるって寸法よ!」
「ヒャア!最高だぜぇ!!」
「・・・まぁ、本当に爺や婆しかいなきゃ、ただ潰しちまうだけだけどな!」
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「案内できるのはここまでだ。
これ以上同行して、おめーまで俺らの仲間と思われたら保護してもらえねーだろうからな」
「何から何までありがとう。
カイザーにもお礼を言っておいてくれよ」
「いいからとっとと行け!誰かに見られてもしらねーぞ!」
「お、おう」
翌日、俺は目覚めと同時に近くにあるっていう集落付近までバイクで送ってもらった。
二人乗りではなくサイドカーに乗ってだ。
何が悲しくてヒャッハーの後ろにすわらにゃならんのだ。
それはさておき。
ヒャッハーのにーさんはとっとと去って行ってしまった。
どうも俺が気に入らないのか、話しかけんなの一点張り。
まぁ最後だけああいうやりとりできたからまぁいい。
さて。
「誰だ!」
俺は集落近くまで歩いていった。
鉄材とわずかな木材でつくられた掘立小屋・・・のほうがまだマシって言えるくらいに、
とりあえず屋根あればいいだろレベルの数点の小屋が立ち並んでいる。
倒れないようにしているのか、隣り合わせで作られている。
こりゃひでぇ。本気で世紀末だわ。
「誰だと聞いているんだが?」
「あ、あぁ・・・すまん、えーと・・・」
「・・・?
怪しい奴だな。動くなよ」
長い棒を突き付けられて、俺は両手を上げる。
見た目は40代後半くらいの男性だろうか。
「その、なんていうか、遭難者って言えばいいのか・・・?」
「遭難・・・?
どこからきたんだ?」
「えーと・・・」
さて困った。
どこから来たと言えばいい?
あの世から?
別世界から?
別の集落からとか言ったらそれはどこの集落だ、って聞かれるのがオチだし、
カイザーの所から来たとかは言えない。
さて、なんて答えればいいやら。
「なんじゃ、さわがしいのう・・・」
答えを考えあぐねていると、初老の男性がこちらに歩いてきた。
「長!近づいてはいけない、コイツが何者なのかわからんのですぞ!」
「なに、少なくとも悪党には見えんわい。
少年、どうした。迷子かの?」
「あ・・・はい。
行く当てもなく彷徨っていたら集落が見えて・・・」
「ふむ・・・」
人のよさそうなじーちゃんみたいだ。
なんとか味方につけていい感じでとりなしてもらおう。
「どこかの集落にいたのかの?」
「えーと・・・」
さて、どうするか。
集落に居たと言えば、どこの集落かを聞かれる。
壊滅させられて逃げてきたと言ってもいいけど、そうなると結局どこなのか聞かれる。
で、調べられたら1発だし、そもそもどこに集落あるのか知らないし。
となれば・・・。
「その、逃げてきたんです」
「逃げてきた?」
「どういうことじゃ?」
「13番・・・なんとかっていう奴らから」
すまんカイザー。
お前さんのことをネタにさせてもらうぞ。
助けてもらっておいてアレなんだが・・・本当にすまん。
「太陽党の奴らか!」
「それは・・・難儀じゃったな。
よかろう、しばらくこの集落ですごすがよかろう」
「よいのですか?長」
「まぁ・・・今のが偽りじゃとしても、悪意は感じぬ。問題なかろ」
あ。これ嘘ってばれてる?
なんかじーちゃんがにやーっとこっち見て笑ってるんだけど!
「ほれ、ついてきなされ。案内しよう」
「す、すみません・・・ありがとうございます」
俺はたいして広くない集落を一通り案内してもらった後、
ひとまず今日は休みなさい、と掘立小屋の1つを使わせてもらうことになった。
といっても俺一人だけの小屋じゃない。
なにせ人数分の小屋があるわけではないんだ、当然だろう。
まぁ、同居人は子供の兄弟みたいだけどな。
「にーちゃん、なんてーの?」
「あー、そういやあのじーちゃんにも自己紹介とかしてなかった」
「そーなの?あ。僕はリトっていうんだ」
「俺はカイトな!」
「俺はユウキ。よろしくな」
そんなわけで、二人にいろいろと質問をすることにした。
もちろんこっちも質問されたりはしたけど。
「おや、ずいぶん打ち解けたようじゃな」
しばらく話し込んでいると、はじめにここに案内してくれたじーちゃんが顔を出してきた。
「長じーちゃん!」
「じーちゃん、どうしたの?お仕事?それともまた隠れる?」
「いや、彼の様子を見にの」
「あ。自己紹介遅れました。俺、ユウキっていいます」
「ユウキ君か。かわった名じゃの。
わしはこの集落の長をしておる・・・が、
まぁ1番歳を取っているからという理由だけでそうなったんじゃがの」
ほっほっほとほがらかにわらうじーちゃん。
この子たちに慕われてる感じがするし、いいじーちゃんなんだろうな。
「それでじゃ、改めて聞きたいのじゃが・・・」
よっこらせっと座り込むと、リトがそのじーちゃんの膝の上に座り込み収まる。
よしよしとじーちゃんがリトの頭を撫でてる。
うん、いいね。なんだか胸がぽかぽかするよ。
「おぬし、何者なのかの?」
うん、やばいね。胸がどきどきするよ。
「えーと・・・その」
「なに、正直に話してみなされ。
大丈夫じゃ。少なくとも人となりはじゅうぶん示されておるからの」
「・・・??」
んんんん??人となりが示された?
「こちらの話じゃ。
で、どうじゃ?話してみぬか?」
「・・・そう、ですね」
なんとなく、ここは話したほうがいいと思い、俺はこれまでの出来事を全部正直に話すことにした。
「転生者であったか。なるほどの」
「あ。普通に受け入れちゃうんすね」
「珍しいと言えば珍しいが、ないわけではないからの」
ほっほっほと笑いながら膝の上でゆらゆら動くリトの頭をぽんぽんしている。
完全に孫と祖父だな。
「じゃが気になるのは13番の太陽党のやつじゃの。
何故おぬしを無事に解放させたのか・・・」
「隊長のカイザーが同郷だからとか言ってたんですが」
「いやいや、そんなことで親切心を出すような甘い奴ではないぞい?」
えっ。そーなの?
じゃあなんで俺一晩泊めてもらった上にここまで送って貰えたんだ?
うーん?って考えていると、
突然ガンガンガンガンという鉄を叩くような音が響き渡った。
「む、イカン、おぬしら、いつもの場所に行くのじゃ!」
「わ、わかったよじーちゃん!
リト、それとユキトにーちゃんも行くよ!」
「お、おう?」
さ、早くと手を引っ張られて俺は移動させられることに。
え、なに?何が起きてんの??
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