第3話 地球存亡の危機だそうです


 俺が生まれた異世界に行ってみたいが、簡単に行けるとも思ってはいなかった。



「ん~簡単ではありませんよ~? 今の悠斗君なら行けるかな~って思ったんだけど~」



 そう言って沙織さんは悠菜を見た。



「愛美と蜜柑は私が一緒に居るから、悠斗に見せてあげたら良い」



 そう言って悠菜は愛美と蜜柑の前に立った。



「え? もしかしてお兄ちゃん、今から異世界へ行くの⁉」


「愛美ちゃんは蜜柑ちゃんと待っていてね~? 今の悠斗君なら連れて行けるの~」


「う、うん……分かった」



 愛美が心配そうに俺を見るが、大丈夫だと言う様に悠菜に後ろからそっと抱かれた。


 

「じゃあ、悠斗君ついて来て~」


「あ、うん」



 俺が沙織さんについて行くと、そのまま家を出て沙織さんの家へ向かう。


 家の前の道を曲がって暫く歩くと、沙織さんの敷地に植えた高い生垣に沿ってさらに歩く。


 間もなく沙織さんの家に着くが、俺はあまりここへ来た事が無い。


 愛美は何度か来ている様だが、俺にはここへ来る用事など無かったのだ。



「で、でっけー!」


「あらそ~?」



 やはり近くで見るとその家は大きい。


 洋館の様だがその高さは四、五階建てのビル位ありそうだ。



「さ、入って~」


「あ、うん」



 玄関へ入るとそこはホテルのロビーの様で、正面左には広い階段があった。


 その階段を上がって二階へ来ると、沙織さんに勧められるがまま近くの部屋に入った。


 そこには特に家具等は置いて無く、駄々っ広い広間だった。


 そして直ぐに気づいたのは、床に描かれた魔法陣の様な幾何学模様である。



「沙織さん、これは?」


「うんうん~ここへ立ってね~」



 そう言って俺の手を引くと、魔法陣の中央へ立った。


 その時、沙織さんが祝詞を唱えると辺りの視界がパーッと光り輝き出した。


 なっ、なに⁉


 眩しさに一瞬目を閉じて直ぐにその目を開けた時には辺りは一変していた。


 目の前に遥か彼方まで広がる草原と、清々しく青い空が広がっていた。



「なっ、なにここっ⁉」


「ここがエランドールよ~そして、これが私と悠斗君が生まれた場所~」


「俺と沙織さんが……」



 そう言われて見たその先には、見た事も無い大きな木とその根元に光り輝く泉がある。



「あ、あそこっ⁉」



 沙織さんは微笑んで頷いた。


 しかし、何と無くだがこの光景を見た記憶がある。


 これがデジャヴってやつ?


 そして、ずっと向こうに真っ白な建物がある事に気付いた。


 そこだけじゃない、向こうにも建物がある。



「沙織さん、あれは?」


「あれはそうね~神殿と言えば分かりやすいかな~?」


「神殿……?」



 そう言えば、あんな建物の柱を見た覚えがある。


 歴史書だったっけかな。


 それよりも、空気が良い。


 既に俺の脳内解析は済んでいる様で、潜在意識では目新しいとの判断はしていない様だ。


 やはり、この場所は初めて来た場所では無いという事か?


 俺はもう一度大きな木と泉を眺めた。



「あの泉で啓子さんの染色体と~私とユーナちゃんと、セリカちゃんの染色体も使って悠斗君は生まれたのですよ~」


「え……よ、四人の染色体っ⁉」



 てか、セリカちゃんて誰よっ!



「あの泉は生命の泉って呼ばれてて~悠斗君のお母さんは誰かってなると、あそこになるのよ~?」


「そうだったんだ……」



 不意に、さっき沙織さんの産道を思い出そうとしていた自分が恥ずかしくなった。



「私もあそこで生まれたから、地球で言えば悠斗君と私は姉弟って事になるね~」


「あ、そうなんだ……」



 沙織さんは嬉しそうな笑顔でそう言うが、俺にとっては何とも複雑な気持ちだ。


 沙織さんが憧れの女性だもん……お姉ちゃんに恋しちゃダメでしょ?



「あれあれ~? 何だか残念そうな表情ね~」


「あ、いやいや! 嬉しいってばっ!」


「ん~嘘は下手ね~悠菜ちゃんの様な無表情も覚えないとね~」


「え……あれを覚えるの?」


「うんうん~きっと必要になるわよ~?」


「そうかなぁ~」



 あれが必要になるとは到底思えないが。


 そんな事を話しながら、俺と沙織さんはゆっくりと泉の前まで歩いて来た。



「ね、悠斗君。ちょっとだけ、この泉に触れてみて~?」


「え? 触れるって、手を入れて良いの?」



 何だか凄く神聖な気がしてならない。


 俺が手を入れても良いのだろうかと躊躇してしまう。



「勿論ですよ~こんなに成長した悠斗君を報告してあげて?」


「あ、はい」



 そう言われて泉にそっと手を入れてみた。


 水……じゃない?


 水よりももっとトロッとしている感じだ。


 かと言ってベトベトしている感じでも無い。


 そう思っていたその時、泉に触れた手がジンジンと何かを感じた。


 なっ、なにっ⁉


 次の瞬間、全身に強い衝撃が走る。


 頭の中に行き成り数多くのファイルが、バタバタと絶え間なく開く様な感じ。


 例えると、まるでPC画面が悪いウィルスに感染した様な現象?


 いや、実際には見た事は無いんだけど、そんな感じがしてる。


 頭のどこかでは凄く焦っているんだけど、俺本体は身を任せてたりと変な感じ。



「あ、きっとそれはギフトなのよ~」


「え? ギフト?」


「ええ~地球で例えると~成人のお祝いって言うのかな~?」


「そ、そうなの?」



 ギフトと言われても、何を貰ったのかはさっぱり分からない。



「さてと、あんまり長居しちゃうと面倒だから~行きましょ~?」


「え、あ、はい!」



 沙織さんはそう言って俺の手を取った。


 その瞬間、全身に軽い電気が走った様な感覚があった。


 ――っ!


 静電気の様な痛みは無い。


 だが、直ぐに辺りの変化に気付いた。


 沙織さんに手を繋がれたままの俺は、いつの間にか神殿の祭壇の前に居たのだ。



「じゃあ、戻りましょ~ここに入って~」


「こ、ここっ⁉」


「心配しないで大丈夫~」



 って、ここに入るのっ⁉


 てか、ここに入れるのっ⁉


 祭壇の上の靄を見つめる。


 微かに蠢いているが、沙織さんが俺に危険な事をさせる筈は無い。


 意を決してその靄へ頭から上半身を突っ込んだ。


 その途端、沙織さんに手を繋がれたのは分かったが、全身の重力が消えた。


 なっ! 何これっ!


 そう思った次の瞬間、俺はあの魔法陣の真ん中に沙織さんと立っていた。



「さーてと、お家へ戻りましょ~」


「あ、うん……」



 沙織さんが俺の顔を見てそう言うが、もう何がどうなって異世界へ行ったのか理解出来ない。


 動揺して足が縺れるのを悟られまいと堪えらがら沙織さんの後を追う。


 理解出来無い事も多いが、まあ慌てる事は無いか。


 これから追々訊くとしよう。


 その後、愛美達の待つ部屋に来たのだが、彼女達はビックリした表情で俺と沙織さんを見た。



「えっ? お兄ちゃん、行かなかったのっ?」


「ん? 行って来たよ?」


「異世界だよねっ? 生まれた場所見に行ったんでしょ?」


「うんうん、見て来たよ? すっげー綺麗なとこ」


「そうなの? 何だかすぐ帰って来たからびっくりしたー」


「え? そうだった?」



 そう言われて壁の時計を見たが、出て行った時間を見て無かったし、良く分からん。



「あ~理解出来ない所も多いとは思うけど~この世界とは別の次元にある場所なの~」


「こことは時間の概念が違う」



 沙織さんの後に悠菜が付け加えたが、それでも俺達には理解出来ない。



「何だか、凄いんだね~!」



 愛美は理解する事を諦めた様だ。


 俺も同じ様なものだが。



「ま、まあ、なんだ。家族会議ってこの事だったのか~」


「ええ~そうです~」


「俺はてっきり悠菜も年頃だし、俺との同居に色々問題もあるのかなとか、あれこれ考えちゃってたよ」


「え~? どういう事~?」


「あ、いや、その、男と若い女だし?」


「あ、それって、繁殖行動とか~?」


「え?」


「は、はんしょくこーどー?!」



 愛美がびっくりした表情で声を上げた。


 しかし沙織さん、ハッキリ言うなあ。


 まあ、地球人じゃないからかもな。


 でも愛美はまだ高校二年生ですよ?



「あ、違った? えっと~生殖行為?」


「いや、沙織さん、言い方変えても……」


「せ、せいしょくこういって……」


「ん~性交? あ、セックス?」


「――っ‼‼」



 沙織さんが追い打ちをかけてそう言うと、愛美はハッと悠菜を見たがすぐに下を向いた。


 そのちょっとした間が、永い沈黙の様に感じた。



「ま、まあ、俺達も子供じゃないしさ! あれだよね!」



 そう言って沈黙を破って見たが、あれって何だ?


 何を言ってるんだか、俺は。


 そもそも、言ってみたものの、あれってのが良く分からん。



「悠斗くんと悠菜ユーナちゃんが良いなら、それもアリなのかな~?」


「え、えーっ!」



 俺が声を上げる前に、愛美が声を上げた。



「そ、そんなのアリなのっ⁉」



 あ、ありとかないとか、そこじゃないでしょ、愛美さん。



「その辺りは、本人同士の自由では~?」


「う……そ、それはそうだけど」



 そう言われた愛美は言い返せない様だが、横の悠菜は相変わらずの無表情だ。


 やっぱ、こいつすげーわ。


 あー本当は年上だしな。


 も、もしかしたら、もうあれは経験済みとか⁉


 それも年上ならあり得るよな……。



「建て前は、ユーナちゃん達の種族存続が名目だしね~」


「だ、だからって、お兄ちゃんとお姉ちゃんが……」



 愛美は絶句して下を向いているが、沙織さんは屈託のない笑顔で、愛美の顔を下から覗き込んでいる。


 それに、建て前ってなにさ。


 あ、もしかして愛美を弄ってる?


 うん、あの表情は間違いない、沙織さんこのひと遊んでるわ。


 この流れで弄ぶんだ……。



「まあ、悠斗くんは男の子だけどね~ユーナちゃんとも仲良くして欲しいし、愛美ちゃんとも仲良くして欲しいから~」


「な、仲は良い……と思う」



 俺は悠菜と愛美を交互に見ながらそう言った。


 これまで喧嘩などした事無いしな。


 そもそも、この二人と喧嘩になる原因が生じない。



「その辺りは、今まで通りでいいんじゃな~い? ね、ユーナちゃん?」



 悠菜は無表情のまま頷いた。



「わ、わたしはお兄ちゃんと血が繋がってるんだよね?」



 愛美が恐る恐る沙織さんにそう訊いた。



「悠斗くんと血縁関係が無いとは言えないかもだけど~こちらでの兄妹血縁とはかなり違いますよ~?」


「え? そうなの?」


「あ、悠斗くんと繁殖行為も問題なく出来る筈ですよ~? そもそも近親相姦とは……」


「ぶっ!」


「えっ! ちょ、ちょっと沙織さんっ! そんなことっ!」



 思い切り飲み物吹き出しちまった。


 鼻からも出たし、目頭と言うか鼻の奥がツンと痛む。


 しかし、まさか沙織さんがこんなストレートに愛美を弄るとは……。



「でね、悠斗君」


「あ、はい?」



 沙織さんが急に真面目な表情になって俺の目を見た。



「最近の身体の変化を教えてくれない~?」


「え? 変化?」


「うんうん~私には悠斗君の変化がハッキリと分かるんだけど~分かる範囲でいいので~口頭で教えて欲しいの~」



 え?


 俺の変化分かるんだ⁉



「そう言われても、何か変かあったかな……あっ、あれかな?」



 俺は昼間感じたあの女性のログを話し始めた。


 あれは確かに新しい変化と言える。


 そして、目の前の沙織さんと悠菜の数値が見えるのもそうだ。


 少し意識して沙織さんを見ると、新たにログが流れる。


 ルーナ……。


 やはり沙織さんの別名が表示された。


 だが、愛美のログと違って、沙織さんの全ては理解出来なかった。


 見た事も無い言語で表示されてある箇所が多いのだ。


 そしていい機会だと思い、毎朝感じる体温と室温の差や、外気中の成分を感じる事を話した。


 これは前に話した事があったが、今ではハッキリと理解出来る様になっている事を話した。


 他にも両親や愛美、悠菜や沙織さんが近くに居たらその方向や距離、自分の位置からの高低差等が分かる事等を付け加えた。



「今はその位かな?」


「ん~そっか~」



 沙織さんは悠菜と目を合わせると、ニッコリと微笑んだ。



「って、なにそれー! お兄ちゃん凄いじゃん!」



 それまで大人しく俺の話を聞いていた愛美がいきなり声を上げた。



「そっ、そう?」


「うんっ! やっぱり、お兄ちゃんエスパーだったんだっ!」


「はっ? エスパー?」


「だってさ、昔あたしが迷子になっても、すぐにお兄ちゃんが見つけてくれたじゃん?」


「あーそんなこともあったなー」


「かくれんぼしても、後ろから脅かそうとしても絶対に気がついちゃうし」


「あーまあな」


「あの時、あたしは絶対にお兄ちゃんには敵わないって思った……」


「なんだそりゃ」


 

 こいつはいつか俺と戦うつもりでいたのか?


 ともあれ、こうして思いがけず真実を知った俺の、ハイブリッドな生活が始まった。



 ♢


 思いがけないカミングアウトから二か月後。


 梅雨入り宣言が発表されると、この間までのぐずついた天気が一変して、晴れた日が続いたりすることありますよね。



霧島悠斗きりしまはると十九歳です。


 近くの大学へ通う一年です。


 そして異世界人とのハイブリッドです。


 二か月ほど前になるが、四月に唐突に告白カミングアウトされちゃいました。


 改めて思い起こすと、これまで幾つか思い当たる事があったけどさ。


 それを考えると俺ってどれだけ鈍感なのかと、残念な気持ちにもなる。


『ホントに楽天家のーてんきなんだから!』


 ちょいちょい妹の愛美まなみにそう言われてるが、これでは否定出来ない。


 ともあれ、この春から幼馴染の悠菜ユーナと大学へ通い始めた。


 この悠菜ってのが、実は異世界の人。


 俺が地球人として馴染んでいるかどうかを、監視役を含めて色々観察している訳だ。


 見た目はまるで人間なんだけど、染色体構造だか何かが全くの別物らしい。


 そして、彼女の母親だと思っていた沙織さおりさんも、実は母親役をしていた異世界の人。


 俺の成長経過を異世界へ報告したり、問題があれば迅速に対処するべく、いつも傍で待機していた。


 こんな俺をこれまで育ててくれた母さんと、異世界人との混合種ハイブリッドとして試験的に創られたらしい。


 ユーナとセリカさんの種の保存が目的らしいが、今の俺には詳しい事は良く分からない。


 ま、俺という試験体の保護観察を沙織さんと悠菜がしてる訳だ。


 それを打ち明けられてカミングアウトされてから、俺の生活は激変するだろうと思われた。


 だがしかし、これが然程さほど変化なく過ごして来ている。


 まあ、これまで普通に生活してきたわけだし。


 そんな訳で、今日も変わりなく保護監査官の悠菜と大学へ来ています。



  ♢   


 俺達は午後の講義が終ると、施設内にあるフードコートに来ていた。


 悠菜が珍しく誘って来たからだが、その彼女はここへ来た時から携帯を弄っている。


 この前の家族会議以降、彼女は髪を銀色に染め、目には銀色のカラコンをしている。


 お洒落に目覚めたらしい。


 これが大学デビューって奴?


 しかし、この悠菜が理由も無く俺を誘ってここへ来る筈は無いのだ。


 何か理由があるに違いない。


 俺は適当な店で飲み物を買うと、中央のテーブル席一つに座って辺りを見回した。


 ランチタイムも終わっているが、まだ多くの人が利用していた。


 普段何やってる人たちなのだろうか。


 イギリスじゃあるまいし、午後の紅茶タイムとでも言うのか?



「で、悠菜、ここへはどうして?」


「もうすぐわかる」



 あ、彼女、愛想ないでしょ?


 これはいつもだから気にしないでね。


 ん?


 これは……ルーナっ⁉


 突如、視界の端にルーナの位置情報が現れた。


 間違いない、これは沙織さんだ。


 するとその時、携帯を見ていた悠菜がその顔をゆっくり上げた。



「来た」 



 悠菜の視線の先を見ると、沙織さおりさんがフードコートへ入ってくるのが見えた。



「あ、やっぱり沙織さんじゃん!」



 スラリとしたスタイルと長い脚に、ショートパンツが良く似合っている。


 そして、胸元が大きく開いたサマーセーターからは、胸の谷間がガッチリと見え、その大きさを容易に想像させる。


 彼女とすれ違った人その殆どが振り返る。


 中には、沙織さんの後ろ姿を舐める様に見ている奴もいた。


 ちょっ、あいつ見過ぎだろっ!


 実は、つい二か月前までは悠菜の母親だった沙織さん。


『本当は悠菜の母親では無い』


 その事実を知った時は、勿論驚いたけどすぐに納得した。


 見た目も若すぎだし、最初から設定に無理があったわ。


 しかも俺の事を、私達の子供とか言いだした時には、沙織さんのお腹やらおへその下まで、かなり色々想像してしまった。


 あの時はとち狂って、生まれた瞬間までを思い出そうとしてたし……。


 実際には沙織さんと俺は姉弟に近い様だ。



「あー! いたいたー! おーい! 悠斗くーん!」



 辺りをぐるっと見回していた沙織さんは、程なく俺達を見つけると嬉しそうに両手を振って駆け寄って来る。


 だが、綺麗過ぎるし一際目立つんだよな……。


 しかも、そんな……子供みたいに呼ばないでよ。


 声を聞いた他の人達が、一斉に沙織さんと俺らを交互に見ている。


 かなり恥ずかしいが今は手を挙げておくか。


 あえて人目を無視して軽く手を振ってみる。


 ああ見えて沙織さんは拗ねたりもするのだ。


 天然要素たっぷりの姉でもある。



「えとね、悠斗くん! 実は大変な事が分かっちゃったの~」



 そう言いながら俺の横に座る沙織さんだが、その口調からは全く緊張感が無い。


 しかも、満面の笑みである。


 だが、彼女がここまで話に来るって事は、それなりに重大なのだろう。


 急用でなければ、家で帰って来るのを待っていればいい訳で……。



「大変な事?」


「うんうん~!」



 そうは言っても、大変な事の意味はまるで見当はつかない。


 しかし、沙織さんと悠菜が居ると、どうしてもここでは目立つ。


 他の人達が俺達を遠巻きに見てるじゃん。


 まあ、俺だって異世界生まれだしそれなりに覚悟はしているが、彼女達こそ異世界の人ってバレたらいかんでしょ?


 しかも、こっちを見ている人が多過ぎる。


 なんせ、銀髪と金髪の綺麗なお姉様だからな。


 大声出したりしたらここじゃ目立つ訳だ。



「あ、それより何か飲む~?」



 俺の空いたグラスを指差しながら、沙織さんは辺りの店を見回した。


 え?


 俺の追加オーダーよりも大変な事が起きたんでしょ?


 その大変な事って、後回しでもいい事なの?


 やはり拍子抜けする。


 悠菜に目を向けると相変わらずの無表情で、こちらの様子をジッと伺ってる。



「俺はいいですけど、大変なことって?」


「ん~お姉さん、カフェ・ラテがいいかな~?」


「へ?」


「ユーナちゃんも飲むでしょ?」


「うん」


「あーはいはい。アイスですよね?」


「そうね~冷たいのがいいな~」


「はーい。で、悠菜も同じのでいい?」



 悠菜は黙って頷いた。


 はあ、まったく。二人共マイペースなんだから。


 この辺りはこの二人、いいコンビなのかもな。



「愛美ちゃんに一度行った方が良いって言われて、いい機会だから来ちゃった♡」


「へ? それがここへ来た理由っ⁉」


「あ、大変な事が分かったからですよ~?」


「はいはい、そうですか。取り敢えず買って来ますね」



 しかし、カフェ・ラテって言ってたが、ここにあるのかが疑問だ。


 カフェ・オ・レなら何処にでもありそうだが、沙織さんあのひとはカフェ・ラテと言っていた。


 カフェ・ラテはエスプレッソコーヒーにミルクを入れた物であり、カフェ・オ・レはドリップコーヒーにミルクを入れた物らしい。


 そもそも、元になる珈琲の抽出方法に違いがあるのだ。


 要は、前者はイタリア、後者はフランスって訳だな。


 お?


 あれは!


 意外にも、一番近い店にカフェ・ラテが売っているではないか。


 店内を見回してみるが、エスプレッソマシーンの様な物は見当たらない。


 が、メニューに書いてあるから信じるしかない。


 ここにそう書いてあるんだから、この店ではカフェ・ラテなんだろう。


 これがここではカフェ・ラテなんだ。


 改めて俺は自分にそう言い聞かせ、店員さんにアイスカフェ・ラテを二つ注文した。


 その時、ふと脳内にアラームが響いた。


 ――っ⁉


 いや、実際には何も音は鳴ってはいないのだが、そう言う感覚。


 だが、それが何なのかがすぐに理解出来た。


 沙織さんと悠菜に話しかけている二人の男達が居るのだ。


『君達ここの学生さん?』


『違うよね? 見た事無いもんね~』


『え~? 私達ですかぁ~?』


 こんなに離れていても俺の脳内には、その会話が聞こえて居るかの様に理解出来た。


 沙織さんが受け答えをしているが、悠菜は男達には興味を示さず、その場から俺の方をジッと見ている。


 ああ、俺の保護観察官ですからね……。


 どうやら沙織さんがここへ来た時に、こっちを見ていた奴らに違いない。


 あいつら何者だ⁉


 そう思った瞬間、脳内に男二人のステータスが流れ、それが脅威では無いと判断出来た。


 ログの一番上には彼らの名前がある筈なのだが、未知アンノウンとなっている。


 だが、年齢は二十一歳らしい。


 やっぱ俺より年上か……。


 すると、俺の心がざわざわと騒ぎ始めた。


 凄く嫌な気分になったのだ。


 瞬時に奴らを排除したいと言う衝動に駆られ、その手段を脳内のどこかで模索している感じだ。


 まるで俺の中に別の何かが居る感覚でもある。


 これが犯罪心理⁉


 俺ってサイコパス⁉



「お待たせしましたー」


「あっ! あ、ありがとうございますっ!」



 唐突に店員さんに声を掛けられ、ハッと我に返った俺はアイスカフェ・ラテを二つ受け取ると、心逸りに沙織さん達が居るテーブルへ戻った。



「はい、お待たせです」


「――っ⁉」


「なっ、何だ。さっきの奴か……」



 男の一人がそう呟いたのが聞こえたが、俺は動揺を隠しながら手に持ったグラスを彼女達の前にそっと置く。



「悠斗く~ん! ありがと~!」


「ありがとう」



 早速、沙織さんはカフェ・ラテを飲み始めたが、俺は男二人に敢えて口頭で尋ねることにする。


 何故、敢えて口頭かって?


 その時の俺はどういう訳か、早くこの二人を彼女達から遠ざけたい衝動に駆られてしまって、今すぐにでも力尽くで跳ね退けたかったのだ。


 それを堪えて訊いてみた。


「で、あなた達はここで何を?」


「はあ?」


「おいおい、野暮な事訊くんだなー。お前、はるとだってー?」



 男達は怯む事無くニヤニヤと俺を見ている。


 やはり気分が悪い。


 やっぱり弾き飛ばしていいですか?


 だが男達は俺を無視する事にした様だ。


 直ぐにまた彼女達に話しかけた。



「そうだ、二人共時間あったらドライブ行かない?」


「そうだね! 今日はいい天気だから絶好のドライブ日和だよー?」



 俺の問いは華麗にスルーされている。



「んー今は身内のお話があるので~」


「み、身内?」


「え?」



 沙織さんにそう言われて、再度男達の視線は俺に戻った。



「まあ、家族だから」



 急に男達は媚びを売る様な表情となった。



「あ、何だ、そうだったのかー」


「そりゃ悪かったよ! はるとくーん」



 何だか馴れ馴れしいのは良いとして、二人を傷付けるのだけは絶対阻止する。



「二人は姉妹しまいか何か? こちらがお姉さんで……こちらは妹さん?」


「んー二人共君のお姉さん? 似て無いね~」


「あ、いや……」



 何だか返答に困る。沙織さんと悠菜の染色体を使って生まれたしな。



「とにかく~今直ぐに家族で話がしたいの~」


「あ、ごめんごめん!」


「じゃさ、名前とID教えてよ!」


「ん~困ったわね~早くお話ししたいのにぃ~」



 そう言って沙織さんがチラッと俺を見た。



「あのね、困ってるんだからもう何処か行ってくれないかな?」



 若干強い口調になってしまった。



「ちっ!」


「っんだよ、弟! ちっと黙ってろっ!」



 男達が俺に噛み付いて来た。


 お、弟……。


 こういう風に弟などと呼ばれた記憶がない。


 何だか新鮮ではあるが、やっぱり気分が悪い。



「てめえ、口の利き方分かってねーなっ!」


「姉ちゃんが可愛いからって調子に乗んなよ?」



 一人は声を荒げたが、もう一人は凄みを利かせた低音で威嚇している。


 どうやら、俺の中の何かが冷静に分析している様だ。


 確かに沙織さんは可愛い。


 何だか……変な感じ……。


 二人がじりじりと俺に近寄って来る。


 と、一人が俺の顔に自分の顔を近づけて来た。



「てめえ、ここの学生かー? あー?」



 そう聞こえた時、既に俺は後方へ移動していた。


 え?


 無意識のまま後方へ数歩移動したのだ。



「おいっ! てめえ、こらっ!」



 もう一人も俺にずかずかと歩み寄って来る。


 交わされた男も一瞬たじろいだが、直ぐにこちらへ向かって来た。



「逃げんなっ! 小僧ーっ!」



 こ、小僧って……。


 小僧とも呼ばれた記憶がない。


 こいつらは俺に新鮮な言葉で罵倒する。


 これが大学と言う場所なのか?


 そして、男達が俺を捕まえようと手を伸ばした時、意識とは別に背後へ飛び退いた。


 そしてその後も、後ろにあったテーブルや椅子を無意識ではあるが、綺麗に避けて移動している。


 俺の脳内に後方のビジュアルがあって、瞬時にそれらの障害物をよける様に、意識しなくとも身体が動いているのだ。


 次第に男達は、中々俺を捕まえる事が出来ずに苛立ち始めた。


 気付くと悠菜が俺のすぐ傍に居た。


 なっ、何だっ⁉


 俺の動きを追って瞬時に移動して来ていたのだ。


 こいつ、流石だなっ!


 こんな状況でも顔色一つ変えずに、素早い俺の動きに合わせて来たのだ。


 これがユーナの能力なのだと改めて思った。



「いい加減にして」



 悠菜が無表情のまま、息を切らし始めた男達にそう言った。



「な、何だよお前っ!」


「すばしっこい奴だなっ!」



 息を荒らしながらもそう俺に言い放つと、二人は顔を見合わせてそのまま離れて行く。


 そのままフードコートから出て行く様だ。


 やっと行ったか。


 俺と悠菜が沙織さんのテーブルへ戻ると、彼女は飲んでいたグラスをそっと置いた。



「あ、悠斗君凄いよ~!」


「え?」


「もう悠菜ちゃんの保護が要らない位かもね~」


「そうなの?」


「うんうん~」


「そ、それじゃ……」



 もしかしたら、もう俺の保護任務は必要無いという事か?



「でも、観察は必要だから~」


「あ、そうですか……」



 そうか、保護観察官から観察……いや、監察官とか言わないよな?



「でも、お姉さんびっくり~こんなに成長しただなんて~」


 

 お、お姉さんって……さっきの奴らの言葉が気に入ったらしい。


 そう言えば、前に異世界へ連れて行かれた時に、地球で言えば姉弟とか言ってたっけ。


 でも、このままこの人のペースにはまったら駄目だ。


 ただでさえまったりで天然な人なのに、こんなに綺麗だから見てるだけで幸せを感じてしまう。


 皆さんも好きな人がいれば些細な事なんか、どうでも良くなっちゃいません?


 彼女はカフェ・ラテの入った大きなグラスを、両手で大事そうに支えて嬉しそうに喉を潤している。


 ヤバい。


 見とれてる場合じゃない。



「で、沙織さん。大変なことって?」



 すると沙織さんはハッと顔を上げ、思い出した様に話し出した。



「そうそう! 大変なのよ~」


 

 そうですか……全く緊張感は感じませんが?


 彼女は深く一息ついてから話し出した。



「実はね。異星人だと思うんだけど、地球にまた接触して来たんだよね~」


「え⁉ 異星人って、宇宙人⁉ しかも、またって言った⁉」



 異星人という言葉と言うか、その存在を忘れていた。


 改めて思うと、宇宙人とか居るとは思うけれど、勿論実際に見た事など無い。


 故にリアル感は皆無だ。



「まあ、どちらも間違いではないけど、正確には地球外生命体かな~」



 それを言ったらあなた方もでしょ。あ、俺もそうだった。



「あっちの話だと、かなり好戦的な種らしくてね。ここも危ないらしいの~」


「え? あっちの話? しかも危ないって……」


「これまでも、あちこちで略奪をしてきてる種だって~」


「りゃ、りゃくだつ?!」



 宇宙人の強盗団かよっ⁉


 危ないと言うその度合いが不明だが、かなり緊張しなければいけない事案だな。


 この人のおっとりした口調に惑わされたらいけない。



「あっちって、エランドールだっけ?」


「あ、うんうん~。ね? 困ったでしょ~?」



 そう言いながらカフェ・ラテを飲み干す。


 困ってるように見えないんですけど……?


 どうするの⁉


 地球が危ないんでしょ⁉


 未曾有の宇宙戦争とか?


 しかし宇宙戦争とか言っても、地球の防衛力で何とかなるものなのか?


 今の技術って、やっと火星に有人ロケット飛ばそうとしてるくらいでしょ?


 しかも、地球外生命体が居るとは、公には認識して無いでしょ?


 居るだろうって暗黙の了解でしょ?


 どこから来るのか分からないけど、宇宙人が略奪しに来るんでしょ?


 相手はそんな事を繰り返す常習者でしょ?


 む、無理じゃないか……?


 パニック起こすどころか、地球人は為す術がないだろう。



「で、その、沙織さんの……そちらの世界ではどうしたら良いと?」


「あ~何だか他人行儀な言い方だ~ちょっと寂しくなっちゃうな~」



 沙織さんは空になったカフェ・ラテのグラスを名残惜しそうに見つめていたが、更に寂しそうな表情になった顔を上げた。



「あ、ご、ごめんっ!」


「ん~基本的には、私たちがこっちの世界に大きな影響を与えるのはタブーなの~」



 まあ俺の存在はちっぽけなものさ。


 そんな俺を創ったんだよね、あなた達が。


 こんな俺の危機なんて守るに値しないって訳?


 ちょっと複雑な心境。



「でもね、悠斗くんの身が危ないとすれば、これは動く理由になるかも~」


「えっ?」


 

 おっ⁉


 おおーっ!


 それでも俺の命は尊重されてはいるわけか。


 これはこれで少し救われた思いだ。



「大切な検体でもあるし~あっちに訊いてみないと分からないけどね~」


「け、けんたい……」



 そう言って沙織さんが微笑む。


 そうですか、心配なのは検体じっけんたいだからですよね。


 しかし、沙織さん達の世界、エランドールでの技術力ならこれに対抗できるのかも知れない。


 あ、良く分からないけど。



「で、何とかなりそうなの?」


「でね、その手の専門に頼んでみるのもいいかな~って」



 そう言って、沙織さんは悠菜を見た。


 悠菜も沙織さんを見ていた様で、そのまま無表情で頷いた。



「その手の専門?」



 その手の専門ってなんです?


 略奪者を専門に対処する部隊でもあるの?


 そんなの想像もつかないのですが?



「えとね~今はエランドールに居る人なんだけど~」


「うん……」


「その人なら、何とかいい方法を提案してくれるかな~って思うの」



 その人って、エランドールの人って事だよね?


 その人に頼むって事?


 これがたらい回しってやつ?


 お役所などが得意な奴?



「その人ってどんな人?」



 何かまた異次元とか異星人とか言い出すんだろうけど、どんな人なのかは知っておきたい。



「元々は地球とも関係ある方ですよ~」



 笑顔で沙織さんがそう言う。


 

 へ?


 地球と関係ある?


 意外な回答に一瞬思考が止まった。


 まあ、異次元の人が目の前にいて、この俺もそれのハイブリッドだからな。


 もうあまり驚いてばかりはいられないが、異世界の人で地球に関係があるって事は、俺の親戚か何かにあたる人?


 いや、簡単に言ってみたらですよ。



「その人って分類は、異星人系?」


「元々はそうかな~ でもね、昔は地球に生活していた事もあったんですよ~」


「へ? 地球で生活してたの⁉ どゆこと⁉」


「ん~ 何て言うのかな~ご先祖さま?」


「ご先祖さまー⁉ お、俺の⁉」


「あ~それはどうなのかな~啓子さんのご先祖様には見えないし~」



 沙織さんがそう言ったところで、これまで黙って見ていた悠菜が口を開いた。



「今夜呼んだから、直接聞いたらいい」



 は?


 呼んだって?


 サラッと凄い事言って無いですか?


 悠菜さん。



「え? 今夜? どこへ?」



 俺はおもわず突っ込み気味に聞いた。



「あなたのいえ


うちかよ!」


「ええ」



 勢いで突っ込んで見たが、まあ、いちいち驚くのもキリがないか。



「あ、そうですか」



 しかし待てよ……いいのか?


 得体の知れない異世界人ってか異星人を、家にサクッと招いちゃってるんだよな。


 それこそ大問題に発展しないのか?


 外交問題とかの次元じゃ無くなるぞ?


 こういう場合、やっぱり事前に入国申請とか必要なの?



「あらユーナちゃん、もう呼んだの~? 久しぶりに会うの楽しみだわ~」



 嬉しそうだな、沙織さんは……。あんなに可愛い笑顔で、本当に嬉しそう。


 だったらいいか。


 まあ、沙織さんも悠菜も異世界人だしな。


 一人増えても今更問題無いだろ。


 て、ホントにいいのか?


 ふと沙織さんの言葉に引っかかった。



「あれ? 久しぶりって、沙織さんも良く知ってる人?」


「ええ! 古いお友達で、とても良い人なの~」


「良い人……ですか」



 これは少し危険な匂いがしてないか?


 【良い人】って、良く聞くけどさ。結構、当たり障りのない言い方じゃないか?


 先ずは、見た目が酷い場合にも【良い人】って言ったりする。


 他にも、特に特徴が無い場合にも【良い人】って使うよな。


 最悪の場合、どうでも【良い人】って使い方もある。


 そういう場合、沙織さんみたいな非の打ち所の無い完璧な女性がその人を【良い人】って言ってもさ、どうせあなたよりも劣るでしょ?


 と、誰もが思うものである。


 しかも、その手の専門って事は武骨な男だと思えるし。



「じゃあ、私は先に帰るけれど、二人とも気を付けて帰って来てね?」


「あ、はい。気を付けて帰ります」


「あ! 帰る前に少し見てこうかな~」



 沙織さんはそう言って席を立つと、店の方へ軽快に歩いて行った。


 スラッと伸びた足の上には形の良いお尻が……。


 しかし、見た目はお姉さん系だけど、行動はまるで女子高生だな。


 気を付けて帰って来いとか言ってたけど、俺からしたら沙織さんの方が心配になる。


 だが、悠菜に言わせると人望も厚く、とても頼りになるらしい。


 まだまだ未知の人だな、沙織さんあのひと



「あ、まずい。愛美に教えとかなきゃな!」



 そうだった。妹の愛美がいる。


 愛美が家に帰った時、玄関先に宇宙人がいたら間違いなく驚くだろう。


 しかもボディーガードの様な蜜柑が、その人に危害を加えないか心配だ。


 パニックになる前に、彼女達と駅で待ち合わせて一緒に帰る事にしよう。


 よし、そうしよう。


 メールして置けばいいかな?



「悠菜、帰りに愛美達と待ち合わせて、そこから一緒に家へ帰る事にしよう」


「わかった」



 彼女は頷きながら返事をするとスッと席を立った。

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