ナイトメア・リアルライフ

影迷彩

──




気づいたとき、少女は林の中にいた。


「ここはどこ?」


再び少女の頭に疑問が浮かぶ。

足元を見ると砂利が道を作っていて、少女は何となくその道を辿った。


うっそうと生い茂った林を、少女は慣れたようにすすむ。

頭上の見えない、暗い景色。何も見えない先の景色。ここはどこか、少女が普段生きる世界に酷似していた。

少女はとぼとぼ歩く。走っても出口の見えない、そんな世界だと分かっていた。


ふと、誰かに手招きされたような気がした。

少女は懐かしい感じと共に、その手を追って林の中を歩く。


気がつくと、青空と、そよ風に揺れる草むらだけの世界で、少女は周りを見渡していた。

彼女にとっては生まれて初めての知らない世界で、何もないこの景色が殺風景に感じ、そして平穏な気持ちを抱いていた。


「ここはどこ?」


そう呟いた少女の手に、いつの間にベージュ色の花が包まれていた。

花びらが風に吹かれて散り、遥か先の山を目指して飛んでいく。

少女は一歩踏み出した。

舞い散る花びらの先に、事故死した母がいた。孤独となった彼女にとって、かつて唯一の家族だった母は二度と会えない、かけがえのない人だった。


「ママ!!」


少女は手を伸ばし、母に触れようとする。

だが触れた瞬間、母の輪郭がドロドロに溶け、少女は沼に引きずり込まれた。


「やだ!! ママといたいよ! あんなところにいたくない! 売れるもの全部売ったんだよ、もう生きたくない……」


【精一杯、頑張って生きて】


母の言葉で、少女は下水道の中で目が覚めた。

湿った身体に冷たい風。ここ下水道の入り口で、暗い外に飛び出すことができる。

少女は迷い、そして諦めたようにその場で身体を踞らせた。

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