略奪愛4

ホテルから帰ってきた二人は、3時間前のよそよそしさが嘘のように親密になっていた。


「カフェに入ってきた二人を見たら、本当のカップルのように見えましたよ。」

俺は太田さんの気分を盛り上げるために、嘘をついた。その嘘を真に受けた太田さんは、照れている様子だった。


「じゃあ、二人がカップルに見えるようになったところで、今日はこれで解散です。あ、アカリちゃんと連絡先を交換したいなら、してもらって構いませんので。じゃあ、来週はこちらの陶芸教室に来てくださいね。」


俺は太田さんに陶芸教室の情報を渡すと、カフェを後にした。


事務所に戻ると、ヒカルがお茶を淹れてくれた。

「お帰りなさい。どうでした?」


「あぁ、とりあえず依頼人とアルバイトを偽カップルにすることには成功したよ。セクシー女優と楽しいことがタダで出来るって聞いて断るような男性はこの世には存在しないよ。」


「本当に男ってアホですね。やれれば誰でも良いんですよね、どうせ。」


ヒカルは呆れている様子だった。


「で、次は陶芸教室だ。次は、ヒカルお前にも働いてもらうからな。」


「社長の相方役ですよね。私たちは男女の関係にならなくて大丈夫なんですか?」

ヒカルが笑いながら冗談を言ってきた。


「俺たちは大丈夫だ。お前、ちゃんと計画書読んでるか?」


「読んでますよ。私たちはカップル役じゃなくて、単純に一人で陶芸を楽しみにきた寂しい独り身役ですもんね。」


ヒカルは少しふて腐れているようだった。


「そんな不満なら、お前が太田さんの彼女役でもよかったんだぞ。」


「それは嫌ですよ。部下の奥さんを略奪したいっていうような気持ち悪い男に抱かれたくないです。私の身体は綺麗なままでいたいんです。」


「依頼人を悪く言うなよ。お金をちゃんと払ってくれているんだから。」


「はーい、すみません。」


ヒカルは反省している様子が全く感じられない返事をした。

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