略奪愛3

部下夫婦の共通趣味の一つだった陶芸に目をつけた俺は、恋人役となる女性を一人工作員として雇った。


後日、依頼人を呼び出した俺は、アルバイト女性と依頼人の顔合わせをさせた。


「太田さん、呼び出してしまってすみません。」


「いえ、大丈夫です。」


「今回、ご足労いただいたのは今度こちらの女性と太田さんで陶芸教室に潜入してもらいたいと思っております。」


「潜入ですか。てっきり私は何もせずに依頼が完了するかと思ってました。」


「今回は略奪愛なので、部下の奥さんの中で太田さんの評価をあげておく必要がありますから。」


「なるほど。分かりました。」


「理解が早くて助かります。さすがは、超一流企業で働いていらっしゃる方ですね。で、こちらの女性とカップル役をやっていただく必要があるのですが、本当のカップルに見えるように、とりあえず今からこの女性とホテルに行ってきてください。」


「はい?」


太田さんは『突然、何を言い出しているんだ?』という顔をしていた。


「カップルに見えるようにするため、一番てっとり早いのが男女の関係になってもらうことなんで。あ、ちなみにこちらの女性は本業はセクシー女優なので、その道のプロです。今回の仕事も理解した上で協力してくれています。まだ、名前は売れていない駆け出し女優ですが、ちゃんとギャラはこちらで支払っていますので、安心して抱いてください。」


「よろしくお願いします。」


アルバイトのセクシー女優は太田さんの隣に席を移動すると、頬にキスをした。


「別に私は、こちらの女性と男女の関係にならずともカップル役を演じることはできますよ。」


太田さんは俺の提案を断ってきた。


「太田さん、演じるって言っている時点でダメなんです。どうしたって、他人行儀の瞬間が出てしまうのが普通の人間です。まぁ、そんなに重く考えず、飲んだ後に先輩に無理やり連れていかれる風俗って感じで軽く考えてもらえれば良いんで。じゃあ、アカリちゃんよろしく。」


「分かりました。太田さん行きましょ。私、太田さんともっと仲良くなりたいし、太田さんのことを知りたい。」


さすがはセクシー女優だ。一瞬で女優モードに入ったアカリちゃんはそのまま困惑している太田さんを無理やり立たせると、そのままホテルへと向かった。

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