第7ウマっ!

(キーンコーンカーンコーン)


 放課後のチャイムが鳴る中、一人の男の子が鉄棒で苦戦している。どうやら「蹴上がり」が出来ないようである。


「痛っ!マメがつぶれちゃった…。なんで僕は蹴上がりができないんだろう」


 そう一人で呟きながら、マメがつぶれた小さな手で鉄棒をしっかりと握り締め、反動をつけながら地面をける。足だけが時計の二時の角度まで上がるがそのまま真下に落ちる足。


「くっそー」


「おつかれぼーい!」


「え?誰?」


 ツインテールの頭にサングラスを乗っけたかわいい女の子。ロリポップキャンディーをカコカコ鳴らす女の子が、鉄棒を離し、その場に座り込んだ男の子の上から話しかける。


「蹴上がりしてんすかー?」


「そうだよ。でも僕は全然出来なくて…」


「蹴上がりは鉄棒を蹴るイメージっすなあ。そしてこれ大事やねんな。ええか。腰のベルトのあたりを鉄棒にくっつけて、体を真っすぐ。足が下におりるとその反動で体の上は鉄棒の上にあがるっすよ。ほーい」


 そう言って豪快な蹴上がりを披露するツインテールの頭にサングラスを乗っけたかわいい女の子。


 ぐるん!


「蹴上がりウマっ!」


「まだまだっすなあ。いくっすよおー。ほい!しんしんとかちぇふっす」


 細い両腕で鉄棒を大車輪のように回りながら、「しんしんとかちぇふっす」の言葉と同時に鉄棒から手を離し、落下時に再度鉄棒をがっちり掴む。


「伸身トカチェフウマっ!」



 それから二人で蹴上がりの練習。


「やった!お姉ちゃん!出来たよ!僕にも蹴上がり!」


「ウマっ!っすなあ。おぬしやりおるのう。っす。ところでお腹減らないっすか?」


(ぐー)


「お腹すいたー」


「じゃあ一緒に食べるっすね。その前に水分はちゃんととるっすよ。それから手のマメは水で洗うっすよ。少し染みるけどやるじゃん!やからねー」


☆今日のウマっ!レシピ☆


市販のネギトロに天かす(市販の上品なのはダメっすなあ)を混ぜる。それを海苔で巻いてガブリ。マグロのネギトロに天かすのサクサク感が絶妙のハーモニーでウマっすよ。


「うめえー!」


「違うよーん。こういう時はこうっすねやねんな。『ウマっ!』」


「ウマっ!」


「おっけーわね。発音『ウマっ!』っすなあ」


「でも…あの…、お姉ちゃん…、あの…、…パンツ見えてたよ」


「マっ!?」


 ツインテールの頭にサングラスを乗っけたかわいい女の子。ロリポップキャンディーをカコカコ鳴らす女の子はロリポップキャンディーを外でも地面に置けるよう小皿を持ち歩く。そんな彼女の「しんしんとかちぇふ」と「サクサクネギトロ巻き」は「ウマっ!」。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る