第5ウマっ!

「あらまあ。お上手ざます」


「うん…」


「美味しいざますわね。あなたもそう思うでしょ?」


「うん…」


 笑顔も元気もなく、ただ同じ返事を繰り返す女の子。


「ウマっ!」


 お店に響き渡る大きな声。その声の主はツインテールの頭にサングラスを乗っけたかわいい女の子。テーブルの上の小皿にロリポップキャンディーを置いている。


「ウマっ!ウマっ!まじウマっ!マジでウマっ!しす」


 隣のテーブルにいた夫人が我が子に小さい声で言う。


「あんなはしたないことはあなたはマネしちゃだめざますよ」


「う、うん…」


 力ない返事をしながらその子は「ウマっ!」と連呼するツインテールの頭にサングラスを乗っけたかわいい女の子に視線を送る。


 くい!


 ツインテールの頭にサングラスを乗っけたかわいい女の子がいきなり女の子の方を向き、目が合う。驚く女の子に「ニカッ」と笑顔を見せる。しかも両目の黒い部分を中央に寄せ、漫画のような表情を見せる。女の子はそれを見て思わず笑ってしまう。


「見たらだめざますよ」


 ツインテールの頭にサングラスを乗っけたかわいい女の子はロリポップキャンディーを咥え、立ち上がり、伝票を持ちながら言った。


「子供と老人は国の宝っす。子供に『欲』を持つのが親っすよね。お嬢ちゃん。『親』には感謝するっすよ。美味しいものが普通に食べられるのはお父さんお母さんのおかげっすからなあ。じゃね」


「あら…」


 ツインテールの頭にサングラスを乗っけたかわいい女の子。ロリポップキャンディーをカコカコ鳴らす女の子は美味しいものを食べたら大きな声で「ウマっ!」。

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