第4ウマっ!
「ばかやろう!お前はいつまで経っても下手くそだな!」
「すいません…」
「すいませんじゃねーんだよ!お前センスねえよ!」
そんなパワハラな場面に!
「ほーい」
乱入したのはツインテールの頭にサングラスを乗っけたかわいい女の子。ロリポップキャンディーをカコカコと口元で鳴らしながら。
「なんだ!お前は!(この子、かわいいなあー。は!いかんいかん!)」
「センスがねえのは教える方じゃねえっすかー」
「なっ!」
「借りるっすよー」
そう言って咥えたロリポップキャンディーをカコカコ。
「まず、コンロの火で思い切り熱を加えるっす。その間に卵を割るっすなあ」
そう言って両手に生卵を持ち、それをぶつけ合う。割れた方の卵を片手で割り、器に。それを繰り返すツインテールの頭にサングラスを乗っけたかわいい女の子。
「お出汁と砂糖を加えて溶きます。あ、この箸でいいっすよー」
そして油を丸めたキッチンペーパーに含ませ、アツアツの鉄板に卵を溶いた箸で油をまんべんなく広げてやる。油を何度も丸めたキッチンペーパーに含ませ、同じことを繰り返す。そして溶いた卵を注ぐ。
じゅー!
「全部は入れねえっすよ。クレープの皮をイメージやね。穴が開かないように角度を変えて卵を流し込んでやりますですよー。そしていったんコンロから離すです。濡れ布巾の上に置いてやってもいいっすね。そして奥から巻いてあげまーす。あ、何か入れます?明太子とかアサリとかあるっすか?カニ缶でもいいっすよ。えーーー。ないのーーー。ほないこか。手元まで巻いてやったらまた同じっす。この巻いた卵を一番先に移動させてやね。コンロに戻してアツアツに熱しながら油をひいてやるっすね。そして溶いた卵を投入ぅーーーー。ここで一番先に移動した巻かれた卵の下に溶き卵が入るように箸で浮かせながら角度をつけて流し込むっすね。そして同じことの繰り返しやね」
スピードをどんどん上げて作業を続けるツインテールの頭にサングラスを乗っけたかわいい女の子。最後にロリポップキャンディーをカコカコ鳴らしながら、まな板の上にポン。
「出汁巻きウマっ!!」
「出汁巻き作るのウマっ!!」
「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやれねば人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば人は育たずっす。元帥海軍大将、山本五十六氏の言葉っすよ。自分が出来るから誰でも出来ると思うのは上司の怠慢っすよ」
ツインテールの頭にサングラスを乗っけたかわいい女の子の言葉に黙り込む怒鳴っていた男。そしてロリポップキャンディーをカコカコ鳴らしながら怒られていた若い男に続ける。
「苦しいこともあるだろう。言いたいこともあるだろう。不満なこともあるだろう。腹の立つこともあるだろう。泣きたいこともあるだろう。これらをじっとこらえていくのが男の修行である。これも同氏の言葉っすよ。お・と・こ・だ・ろ!っす」
その言葉に「ハッ」っと反応し顔をあげるとツインテールの頭にサングラスを乗っけたかわいい女の子はロリポップキャンディーをカコカコ鳴らしながら背中を見せながら去っていく。
「お、おほん!俺も説明不足で悪かった…」
「いえ!自分こそ甘えてばっかりで!これからもご指導お願いします!」
ツインテールの頭にサングラスを乗っけたかわいい女の子。ロリポップキャンディーをカコカコ鳴らす女の子は『出汁巻き』を巻くのも「ウマっ!」
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