第10話 ラブ・グロウ
英国 バッキンガム宮殿
「終わればすぐに帰る。テレポートしたとはいえ不法入国、おまけに時差のせいで向こうは夜だ。朝になる頃にはすぐにでも帰りたい」
「これまでの会議時間の最長記録は丸一日。最低でも半日。覚悟することですね」
服装は普通であるが宮殿内でいつもと変わらない会話をしているのか宮殿内が響いていた。
「つーか仮にも英国の偉い人がいるのに衛兵も誰もいないじゃないか。ロンドン塔が陥ちる前に英国が滅びそうだぞ」
「魔術師は宮殿の敷地内に入ると別次元のバッキンガム宮殿に移動。ここでは外から魔術師を認識もできないし、影響もありません。あと会議の資料です」
海斗はパラパラとページをめくって一通り目に通した。
「なるほど。日本の方が異世界転生が多いわけか」
「世界で初めて異世界転生が確認されたのも日本です。以降二人の偉大な魔術師の気まぐれで転生、その世界で悠々自適に活動しています」
海斗とエルは数ある部屋の中でも一際大きい扉を開けた。そこには円卓と五名の老若男女がいた。
「来たか。遅いぞ」
「申し訳ありません」
髭が板垣退助のような老人に向かいエルが謝罪すると二人は余っていた机に着席した。
「本日魔術王及び魔術妃は多忙故に会議に出席されない。故にこの場は私フランスのジャンピエールが取り纏めていただく」
ジャンピエール フランス出身の魔術師。六名の魔術師の達人の中で最も権力が大きい人物。特徴は板垣退助のような髭。
「会議を始める前ニッポンの魔術師に問う。側用人はともかく肝心のお主は何者かな?マスターハルはどうした?」
「マスターハルは亡くなりました」
エルが発言すると室内がざわめき始めた。
「やはり噂は本当だったか。ではそこの者は代理というわけかな?」
「いえ、この方はマスターハルの後継者にして我が国の最高の魔術師。マスター……」
次を言いかけたところでエルが海斗の耳に小声で話しかけた。
ーー何がいいですか?
ーー何って?
ーーあなたの魔術師としての名前です
ーー好きにしろ。珍妙なの以外でな
「マスターカイドウです」
またもや室内がざわめき始めた。
「バカな!マスターハルの死が噂として流れて一週間も経っていない。おまけにその男は魔術師になってまだ一ヶ月も経っていない。そんな男をマスターにするなど何をお考えか!?マスターエルフ、お主ではないのか!?」
「マスターハルの遺言状には確かにマスターカイドウを後継者にするようにと書かれておりました。それにマスターカイドウは魔術師の類稀なる才能がございます。現にホームにあるマスターハル執筆の魔術本を全て完読し、それを使いこなす域に達しています」
海斗は少々盛りすぎるのではないかと思った。この場の人間を信用させるためとはいえここまで来ると一周回って嘘のようにも聞こえそうである。
「ではマスターカイドウ。其方に問おう。マルチバース一九四と現世界の差異点は?」
「マルチバース一九四……あぁ、あの獣臭い世界か。何もかも違うな。まずあの世界に人間はいない、文明レベルも白亜紀並の見るに堪えない世界だが一つだけ褒める点を言うとあの世界の動物は会話ができる」
マルチバース一九四は自然あふれる宇宙で有名だがその世界の地球に人類は存在せず全
その世界では我々人類以外の動物が人類である。残念ながら彼らは本能で生きているので文明レベルは下の下ほどだが会話程度のことならできる。
「マスターカイドウ。貴殿はマスターハルが認めた魔術師なようだがあいにく私はそれを認めるにはまだ早いと考えている。理解できるかな?」
「当然だろうな。俺だって同じ立場だったらそうする」
「そこでだ。貴殿には当分マスターエルと魔術絡みの調査を依頼するかもしれん。我々の信頼を得るためだと考えてほしい」
「なるほど。その方が効率的だもんな。俺は魔術師として信頼を獲得でき、そちらさんは厄介な面倒事を下っ端に処理させることができるんだから……おっと失礼。湿原だったか」
「今のは聞かなかったことにしよう。さて、会議を始めさせていただく。ではまずニッポンから」
海斗が思っていたより会議の進行は速かった。しかし会議が終わりそうな雰囲気になっても偉大な魔術師は一人も現れなかった。
「ではこれにて会議を終了させていただく。諸君、ではまた」
会議終了。各代表の魔術師もバラバラに散って国に帰っていった。
「じゃあ俺たちも帰るか」
海斗が立ち上がると二人は何も無い空間から魔力が出現する気配を感知してその方向を向いた。
「エル」
「海斗。警戒を」
海斗とエルが構えに入ると中から女性が現れた。
「あなたがマスターカイドウ?」
「あんたは?」
その時エルが海斗の頭を無理矢理掴んで無理矢理お辞儀させた。
「ススス、スカアハ様!おおお、お会いできてとても光栄です!」
「いいのよマスターエル。楽にしていいわ。初めましてマスターカイドウ。私はスカアハ。スカーハでもスカサハと呼んでも構わないわ」
「えぇっと……魔術妃スカアハで良いのか。こちらこそ初めまして。正直俺はマスターなんて言われるものじゃないから天道でも海斗でもお好きにお呼びください」
「ではカイト。ついてきなさい。マスターエルはここで待ってて」
スカアハが奥に行くと海斗はエルを一度見つめてなんのことやらといった感じの顔をした後ついていった。
「寒っ!!」
まるで極寒の地かのような寒さが海斗を迎えた。スカアハはケロッとした態度で待っていた。
「影の国ってこんなに寒いのか?」
「仮にもここはアイルランドです。アイルランドの冬は過酷ですよ」
「みたいだな。俺を呼び出したわけは?」
「なんとなくです」
「なんとなく?」
「お茶でもいかが?」
吹雪が激しい中テーブルがあり、その上にティーポットとカップが置いてあった。スカアハがそこに座ると海斗も続いて座った。奇妙なことにお茶は凍っていなかった。
「あなたのことを色々調べさせてもらいました。他の魔術師とは少し違う経歴のようですけど」
「あの中に俺と同じ経歴の人間なんていないと思うんだがな。誰か一人でも改造手術を受けたことあるのか?」
「普通はいません。そう、思い出しました。あなたにマルチバースについて少しお話しすることが」
スカアハは少し前にマスターハルが海斗に見せたようにマルチバースを見せた。
「無限のマルチバースがある中我々が存在するマルチバース一一一のマゼラン方面に進んだ銀河に何があると思います?」
「親父の星」
「そうです。実を言うと我々の種族はこの宇宙の中では下等なレベルです。しかし地球そのものは豊かな自然に豊富なエネルギーに満ち溢れておりそれを狙ってやってくる異星人もいます。あなたの父親の種族は代々この星を守ってきた存在だと知ってましたか?」
「先代の文献にそれらしい文章はあったのは覚えてる、正確にはいつからだ?」
「およそ二千年前からです」
「詳しく聞かせてくれないか?」
「良いでしょう」
数時間後
話を聞き終えた海斗は影の国から現実世界に戻ってきた。
「スカアハ様と何を話していたのですか?」
「色々だ。だがまぁ面白い話を聞けた。なぁエル。地球には他の異星人と地球人のハーフはどれだけいるかわかるか?」
「そればっかりはわからないです。異星人も上手いこと地球人に溶け込んで生活している者もいるので知らずに生きていると言うのがほとんどです」
「そうか。じゃあ帰るか。不法で」
「バレなきゃ良いんですよ」
数日後
「海斗さーん。ここにもいない」
セナは海斗を探して家の中をうろうろしていた。海斗の自室、トイレ、風呂場、地下室……しかしどこを探しても海斗はいなかった。
「靴はあるのに家のどこにもいないなんて……一休み」
セナがソファーに腰掛けようとすると普段とは違う柔らかい感触がやってきた。それと同時に
「ウボア!」
という変な悲鳴が出た。思わずセナが立ち上がってソファーを見た。
「か、海斗さん!?」
「セナ……なんか……デカイ何かが乗ったんだが……」
瀕死の声で海斗が声を絞り出していた。
「す、すみません!ソファーにいるとは気づかずに座ってしまいました……大丈夫でしたか?」
「昼飯食った後じゃなくて良かった……大丈夫だ。どうしたんだ?」
「シャンプーが無くなったので一緒に買いに行こうかと思いまして。今までここで寝てたのですか?」
「あぁ……昔から寝る時気配が消えるって言われてた」
嘘です。気配遮断の魔法を使っていたので気づかれなかっただけである。ちなみに海斗が魔術師となったことは彼の周りの人間には秘密である。何故ならそもそも魔術師の存在自体が秘密のようなものだからである。
「なぁセナ。一つ聞いて良いか?」
「何ですか?」
「昔から気になってたんだがよ。デートってどういう意味なのかなって」
「デートの意味ですか?それはデートする意義的なものじゃなく言葉の意味ですか?」
「あぁ。好きな人とどこかに遊びに行くのがデートなのか、異性とどこかに遊びに行くのがデートなのか昔から分からなくてよ」
彼の良いよな悪いような性格。下らないことを考え出すと長時間又は長期間考えてしまう。
「昔から学校の異性と一緒に映画館に行ったりとか、色々やった後にこれってデートなのかなって考えたりするうちに分からなくなってな。立派な大学生の意見を聞きたい」
「そうですね……そう言われると私も悩んじゃいますよ。アニメや漫画ではデートは恋人同士でやってるのが主流ですし……でも一部の人はデートは互いを知るための交流と考える人もいます」
「じゃあ恋人同士で遊ぶっていうのが主流なのか」
「一般的にはそうかもしれませんね」
「じゃあ俺とお前がこれからシャンプーを買いに行くのもデートか?」
「それは……デ、デートかもしれませんね?」
「何故最後はてなマークが付いた。じゃあ別で、ナンパって言葉あるだろ。あれって恋愛目的で初対面の異性に話しかけるのか、ただ単に初対面の異性に話しかけるのか」
少し間を置いてセナが答えた。
「海斗さんって時々どうでもいいこと考えますよね。主に恋愛系で」
「まぁ思春期のほとんどを男子校に捧げてたからな。言葉や大まかな意味は知っていても深いところまで行くとどうにも考えてしまう。まぁ好奇心が強いってことにしてくれ。じゃ、シャンプー買いに行くか?」
「はい!」
同時刻 仏 パリ魔術本部
「日本の新しい代表魔術師。マスターカイドウとか言ったか。皆はどう思う」
パリ魔術本部にジャンピエールを含めた会議に出席していたメンバーが集まっていた。
米代表 ジャック 少々過激
豪代表 ティガン 基本傍観
伊代表 ミケ 無口
露代表 オルガ 冷静
「マスターハルが目をかけていたと聞いたが俺はあんな人を舐め腐ったような奴は気に入らねぇ」
ジャック 年齢は十八。若手であるが生まれながら魔術師として育てられたため新顔である海斗を下に見ている。米代表の魔術師で異世界に転生する人間や襲来者の少ない米でも一流の魔術師として弟子たちを引っ張っている。しかし敵を徹底的に殲滅する様からJ(ジェノサイド)J(ジャック)という異名がある。
「私は新顔でも良いかな〜。それにハルちゃん直々の推薦でしょ〜?期待しても良いんじゃな〜い?」
ティガン 年齢不詳。豪代表の魔術師でおっとりした性格で魔術師内での揉め事やゴタゴタは基本傍観しているが戦闘ではマスターの名に相応しく一流の名は伊達じゃない。主に守りを主軸とした戦闘を行う。
ミケ 伊代表の魔術師。無口な性格かつ何を考えているかわからない風貌故に異彩を放っている。唯一心を開いているのは側近の魔術師と何をしても中間のティガンだけである。そして内心はと言うと
ーー帰りたい。
「優秀であるかそうでないかはこれからの行動で決めては如何かなジャンピエール。確かに彼の態度は少々頭に来るかもしれないが何もそれだけが判断材料では無いはずだ」
オルガ 露代表の魔術師。手よりも頭で考えるため戦闘でも頭脳戦に徹底しているが手を下す戦闘も一流であり、相手の二手三手を先に行く。
「あの者は魔術師がなんたるかを愚弄しておる。マスターがあのようでは示しがつかん」
ジャンピエール 仏代表の魔術師にしてマーリンやスカアハを除くと全世界の魔術師を現実世界で直接統括している実質頂点のような存在。長く魔術師に人生を捧げているためか相談役になることも多いが古いしきたりに囚われている節が多々ある。
「なんでマスターハルはエルフではなくあいつをマスターにしたんだ。年だから気でも狂ったのか?」
「口を慎めJJ。まぁマスターオルガの言うことも一理ある。経過観察ということにしておこう」
「じゃあ私は失礼するね〜」
「では私も」
そう言って各々立ち上がり解散した。
ーーマスターカイドウ……少し調べてみるか。
何か引っかかるのかジャンピエールは一人になった後もその場で何かを考えていた。
翌日
日本 某所魔術本部「太陽の家」
内装の整理や各室の掃除を終えた海斗とエルは建物の横に名前を刻んだ。
「どうして太陽なのですか?」
「何となくだ。まぁこの国の魔術本部はここなんだし、太陽系の中心は太陽だろ?ここが中心ですよーっていう意味を込めた」
「そうですか。それで、これからどうするんですか?」
「脅威が来るまで備える。あらゆる敵が来ても良いように。マルチバースの数だけ敵がいると想定してな。まぁ全部敵だとは限らないが」
「リストの作成が必要ですね。早速取り掛かりましょう」
その時本部に転移魔法を使って誰かが入ってくる気配を感じたのか海斗は気配が感じる方に振り向いた。一方エルには何も感じなかったのか振り向いた海斗を不思議そうに見ていた。
「誰か来る」
「まさか」
「いや、そんな気配じゃない」
そしてやってきたのは先ほどまでフランスの魔術本部でジャンピエールの会議に出席していたティガンだった。
「マ、マスターティガン!?」
「やーやーこんにちわエルちゃん。そして……こうやって話するのは初めてだね〜。マスターカイドウ」
「マスターはよせ。名乗るにはまだ早い」
「そう?私から見ればあなたに十分マスターの資質はあると思うけどな〜」
「まぁそれは後だ。マスターティガン。何か御用で?」
「別に〜。ただ挨拶に来ただけ〜」
ーー一国の代表魔術師がこんなんでいいのだろうか。
「マスターティガン。一つ質問していいか?」
「一つだけ〜?他にもいっぱいあるって期待してたんだけどな〜」
「今のところ一つだけだ。マスターの弟子の数ってどれぐらいいるんだ?」
「そんなこと〜?うーんっとね〜……わかんない」
やっぱり海斗は思った。
ーーこの組織大丈夫か?
「そもそも私弟子とかとってないし〜私もそこまで真面目じゃないからわかんない。ジャンピーとかに聞いたらいいかもよ〜どうして?」
「やっぱりこういうものって弟子とか必須なのかなぁってな。一応俺はこのエルの弟子みたいなものだが立場が逆転したせいでこんがらがってな」
「君たちのような関係は魔術師の中じゃ異例中の異例だからね〜じゃあ用事済ませたから帰る。バイバーイ」
「バイバーイ」
数時間後 家
海斗はサボテンに水をやっていた。サボテンはいざという時食べれるのだがもちろん食用に育てているわけではない。ただの趣味である。ちなみにサボテンの名前はビル。
「海斗さん。ちょっといいですか?」
セナが後ろから声をかけてきた。
「どうした?」
「目を瞑っててください」
「どうして……」
「いいから早く」
海斗は仕方なく言われた通りに目を瞑った。その時身体の本能が勝手に反応して腕を頭上に持っていくと踵らしきものが振り下ろされようとしていた。しかも並の踵落としよりかなり強力である。
「ちょ……セナ……!?」
「やっぱり海斗さんに当てるのは難しいですね……」
「いやいや待て。セナ、俺に不満があったら言ってくれ。いきなり踵落とし食らわすってことはよっぽど溜め込んでるのか!?」
「ふ、不満!?不満なんてありませんよ!!これはその……映画で観たんです」
「映画?」
「海斗さんがよく観ていたカンフー映画です」
リビングの隣にある少々狭い一室はまるでレンタルビデオ店のように映画が多数保管されている。それもモノクロから3DCGのものまでなんでも揃っているのである。
「海斗さんもこれを観て強くなったのだと思い、私も色々観て勉強したんです」
「えーっと……セナ。俺が少林拳使ったところ見たことあるか?」
「ありません」
「太極拳は?」
「ありません」
「何でかわかるか?」
セナはしばらく考えたが首を横に振ってわからないと言った。
「あれは全く参考にならないからだよ」
「えぇ!?」
「俺は主に銃を握って仕事してるんだ。潜入任務でもカンフーなんて目立ってしょうがねぇ。お隣の国でもそんな奴いなかったぞ」
「じゃあ海斗さんはどうやって強くなったのですか?」
「ひたすら修練。生き残るために色んな本も映画も読んで使えるかどうか実際に試したりしてた。なぁセナ。お前は強くなりたいのか?」
「何があるかわかりませんからそのために鍛えなければと思いまして……」
「セナ、ちょっとじっとしろ」
海斗はセナの身体をボディチェックする様に触り出した。
「か、海斗さん!?あの……どこ触ってるんですか!?」
「色々」
二の腕、大腿部、太もも、腰、格闘に使う部位を上から順番に際どい部分以外触っていた。
「悪くない。少なくともお前と同年代の男なら蹴り倒せるだろう。拳よりも脚の方が向いてるかもな。言っておくが体術は教えれても剣術は無理だからな。俺のは我流だから」
「じゃあ参考までに得意な斬り方ってありませんか?」
海斗は地下室から刀と手足の付いた大きな人形を持ってきた。
「このカカシを人に見立てる。対人一撃必殺のこの技を名付けるなら抜刀満月斬りってとこかな」
海斗は居合の構えに入るとまさに瞬きをする間に斬ったかのように次の瞬間には首と手足が斬り落とされていた。
「どうやったのですか?」
「簡単な話だ円を描くように首、手足を斬っていくんだ。刀が良ければ力なんていらない。軽く振っただけで色んなものが斬れる。正直こんな技人に教えれる自信がないから教えろって言われても無理だ」
「大丈夫です。覚えれる気がしませんので。でも……海斗さん……さっきの触る前に一言言ってください。じっとしてろじゃわかりませんよ……」
「そいつは悪かった。でも、海外に行ったらこんなもんじゃ済まない。空港で手招きされたと思ったら、金属探知機からの手足や背中をチェックされたりするからな」
「どうしてですか?」
「分からん。適当にやってるのか、それとも俺が何か怪しい行動していたのか。少なくとも俺は服装以外怪しいところはなかったと思うんだが」
「どんな服装だったのですか?」
それは今も昔も変わらない。
「黒だ」
セナはなんとなく納得した。ちなみに空港で一度手荷物検査が通っても再び入念にボディチェックを受けると言った理由は色々あるらしい。
「そうだセナ。前から聞きたかったんだがよ。お前の靴について」
「私にブーツですか?」
「あれってお前の大腿部まで伸びてる長いブーツだろ?膝とか曲げる時動きにくくないかなぁって」
「私のあれは革製なので新しいものを買ったら最初は動きにくいのですけど使っているうちに柔らかくなって履いてない時と変わらない感じになりますよ」
「そういうものか」
「そういうものです。そうだ海斗さん。明後日うちの大学で文化祭があるんですけど良ければ来ませんか?」
「仕事が何もなければ行こうかな」
続く
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