第6話 オンリータイム

 ーー私は戦場で産まれた。父は傭兵。母は一般人だった。母は貧しい家族を養うために若い頃から傭兵の相手をしてお金を稼いでいた。そして私が産まれた。母は私が十歳の頃病気で死に、私は父親に引き取られたけど父も私が十三になってすぐに戦場で死んだ。その後は戦場の掟に従って生きてきた。銃を手に取り、ひたすら敵を殺した。十五歳になる頃には私も母と同じく傭兵の相手をしていた。朝目が覚めると戦場に出て、夜になれば好きでもない相手の世話をする。それが私の一日だった。ある日部隊に軍事顧問としてある人がやってきた。それが大空隊長だった。大空隊長は軍でたった一人の女性兵士である私によくしてくれた。その人は軍事顧問のはずなのに私には戦う以外の生き方を私に教えてくれたけど私には理解できなかった。ある日私が戦場を駆けていると爆弾に吹き飛ばされて気絶した。不幸にも私は敵に捕まって拷問を受けた。爪を剥がされたり、歯を抜かれたり、電気も浴びせられた。戦場が拷問部屋に変わっただけで前の生活と何も変わらなかった。だけど大空隊長が助けてくれた。助けに来た時私に言った。


「私と来い」


 ーーって。部隊では私は死んだことになっておりどっちにしろ私には行くところが無かったから仕方なくついていった。母の故郷日本に。そして銃を手に取る以外の生き方を教えてくれた。隊長が会社を立ち上げると私も銃で困っている人を無くすために入社した。入社と同時に私は隊長から環恵っていう名前を貰った。その後はあなたも知っての通り。


 海斗は静かに環の話を聞いていた。正面向かい合って話していた環が話し終えると海斗は隣に座ると環が寄り添った。


「黙っていてごめんなさい」


「誰だって知られたくない過去がある。俺にもな。人間そう簡単に出来てるわけじゃないのか」


 海斗は環の黙っていたことに特に追求するわけでもなくただそばにいた。空を見上げるとちょうどスーツが目の前に着陸した。それと同時に明星もやってきた。


「ここにいたのか。二人とも大丈夫か?」


「あぁ。環を頼む。俺は一通り調査してから帰還する」


「わかった。気をつけろよ」


 翌日


 ーー大空(ボス)。あの家を調査して幾つかわかったことがある。まずあの家から大量の骨が発見された。それも人の骨だ。恐らく俺や環のようにあの家に踏み入れた者の骨だろう。数はざっと三十名。それと厨房の冷蔵庫や至る所から真空パックされたり、ホルマリン漬けにされた臓物が見つかった。胃、腸、腎臓、肺、膵臓、その他もろもろほぼ全てだ。それだけじゃない皮から肉に至るまでも発見された。まるで牛の解体のように丁寧に切り分けられていた。あの女性の身元や俺を襲った男の正体は分からなかったが妙なものを見つけた。地下室だ。そこには一台のPCとファイルがあった。ファイルにはゴーストと書かれていた。奴らが何をしていたかまでは不明だが定期的にメッセージを送っていたようだ。だがそれも今日で途切れる。だからボス、奴らが動き出すぞ。


 海斗は調査報告をボイスメッセージとして記録して送信した。自室で紅茶を飲みながら一息ついていた。その時彼の電話が鳴った。画面には由美という文字が。


「もしもし」


 ーーお兄ちゃん!この前の電話忘れたの!?今度はそっちから電話するって言ってたのに一週間経っても何も連絡よこさないんだから!!


 向こうから聞こえてきた大声に海斗は思わず携帯を遠ざけた。そして一人っ子への羨望を思うようになった。


「すまんな。こっちも色々あったんだ。それもこれまでと比べ物にならないくらい」


 ーーふーん。どれくらい?


「ターミネーターとランボーが電車の中で機関銃を撃ち合ってるレベル」


 ーーごめん。わからない。とにかくお兄ちゃんが週一で連絡しようって決めたんだよ!今度は待たせないでね!


「おい、要件はそれだけか?」


 ーーあぁそうだった。来月のお父さんとお母さんのお墓参りどうする?


「もうそんな時期か……」


 海斗は机の上に置いてあるカレンダーを見つめる。一ページめくり赤文字で命日と書かれた日に注目した。


「もちろん行く」


 ーーわかった。じゃあ現地集合でいいね


「あぁ。なぁ由美。そっちは楽しくやってるか?」


 ーーうーん……ぼちぼちかな。でも友達がたくさんいるから問題ないよ


「そうか。大切にしろよ。じゃあ切るからな」


 ーーうん。またね


 海斗は通話を切り、携帯を元の場所に置いた。電話の相手は天道由美。すなわち海斗の妹である意味歳は海斗より二つ下で現在セナと同じ大学生である。


「ただいまー」


 セナが帰宅した。海斗は出迎えるために自室を出て一階に降りた。


「おかえり。ん」


「どうしました?」


 海斗はセナのある部分に気づいて近づいた。海斗はセナの髪の一部が少し乱れているのに気付いてそれを直したのだ。


「妹が言っていた。髪は女の命だって。お節介だったか?」


「い、いえ……ありがとうございます……て、手を洗ってきますね」


 セナの顔が赤くなりそうになり急いで洗面所に向かった。そして海斗のいないところで感情が爆発した。


 ーーか、海斗さんに触れられた……!しかもあんな近くまで寄ってきて……!


 一方海斗は


 ーー晩飯何にしようかな。


 セナが何を思っているのか全く考えなかった。セナは気持ちを落ち着かせてからリビングに向かった。


「なぁセナ」


「ひゃい!」


 せっかく気持ちを落ち着かせたのに海斗が声をかけたことで気持ちが崩れて変な声をあげてしまった。


「どうした。変な声あげて」


「な、なんでもありません!」


「そうか。セナ、夕飯何がいい?」


「えぇっと……その……海外の料理って作れますか?」


「メジャーなものならある程度いけるが……何がいい?」


「フランスのラタトゥイユってありますよね?あれを出来ませんか?」


 ラタトゥイユ。古くからフランスで食べられてきた家庭料理。発祥は南フランスだとか。家庭料理というだけあってフランスでは母の味と言う者も少なくない。


「ラタトゥイユか。フランスには行ったことはあっても滞在期間が短いから実物は食べたことないんだ。俺流で作ってみるとしよう。しかし何でラタトゥイユなんだ?」


「今日の授業の舞台がフランスだったんです。ジャンヌ・ダルクの時代です」


「なるほど。ラタトゥイユは努力してみよう。時間はかかるかもしれないが」


 その夜。海斗はリクエスト通りラタトゥイユを作り上げた。しかし完成するに海斗は長時間苦戦した。家庭料理というだけあってお袋の味でもあれば家庭によって差異があるからだ。調味料が違っていたり、材料のサイズだったり、海斗はネットの情報に頼ることをやめてある選択をした。


 ーーこの家のラタトゥイユを作るか。


 セナは本場の味を知らないので初めて食べる海斗流のラタトゥイユを美味しく食べていた。そして海斗は次にフランスに行った時は必ずラタトゥイユを食べようと決意した。


 数日後


 ーー海斗。新しい依頼だ


「今度は何だ?」


 ーー以前環が警備の依頼で世話になった学園があっただろ?


「あぁ。確か……月光学園だったか。お嬢様学校と聞いたんだが」


 ーーその月光学園が再び私たちに依頼してきた。軍事顧問として。


「断れ」


 ーー海斗。気持ちはわかる。だがこれには理由があるんだ。環や明星の調査では月光学園では黒い噂が絶えないそうなんだ。何せ生徒の親は財界の大物や政治家といったセレブ層だ。ゴーストへの手がかりがあるかもしれない。


「だからそこに再び行けと?明星や環に行かせればいいだろ」


 ーー月光学園はお前を指名してきた。どうやら環が前の仕事の時お前のことを話していたそうだ


「……仕方ない。任期はどれぐらいだ?」


 ーー五日だ。学園内ではある程度行動できるようにはしておいたが目立つようなことはするな


「わかった。しかし……よくお嬢様学校に銃器が持ち込めるようになったな」


 ーー銃器といってもナイフとハンドガンくらいだ。それに銃器はおまけ。メインは警察のように対人制圧訓練だと。


「顧問は?ちゃんと専門の人なんだろうな?」


 ーー専門には専門だが……急遽決まったことなので比較的知識のある教員が選ばれたそうなんだ。知識はあっても経験がない。だから私達に依頼してきた。


「一つ確認させてくれ。それは授業か?それとも部活かサークルか何かか?」


 ーー部活だ。部員はニ名ほど。三年生は不在で二年生がと一年生が一人ずつだ。


「本当は反対なんだが……やるしかなさそうだな」


 ーー頼んだぞ。開始は明後日だ。任せたぞ。


 大空が電話を切ったのを確認して海斗は天井を見上げてたそがれていた。


「海斗さん。天井ばかり見上げてどうしたのですか?」


 別室にいたセナが海斗に声をかけた。


「また依頼がきた。お嬢様学校の生徒三名に護身術を教えろとよ」


「そうですか。それで何か考えてたのですか?」


「その護身術を教えるのに銃とナイフを使ってるんだとよ。俺はそれが気に入らないんだ」


「万が一相手が武器を持っていた時の為の訓練では?」


「そうだと良いんだがな。俺から見たら銃を扱ったのをきっかけに俺たちみたいな戦場に行く将来にならないか少々不安でな。だから最初は反対したんだがボスが例の組織の手がかりがあるかもしれないって言って仕方なく請けた」


「難しい点ですね……でも銃を持ったからといってその子たちが将来も銃を持つとは限りませんよ」


「そう信じたいものだ。お前はどうだ?」


「私ですか?」


 セナは少し考えた。銃を持った自分を想像した。海斗の隣で同じ仕事ができる。それだけ考えれば良いことだったが銃を持った以上いつ命が尽きるかわからない死への恐怖を考えるとやはりそちらの気持ちが強くなった。


「私は普通に生きていきたいです」


「それでいい。銃で人を殺したことある奴はみんな普通じゃないんだ」


 当日


 海斗はスーツ姿で学園にやってきた。ちなみに海斗のスーツ姿は職場内での感想は満場一致で殺し屋だった。


「ようボブ。仕事は大変か?」


 海斗は警備員を知人かのように話した。もちろん知人である。しかしボブというのは愛称で本名は保(たも)部(べ)と言いボブと言われているがれっきとした日本人である。


「ぼちぼちだ。確か来校者名簿にお前の名前があったな。何したんだ?痴漢か?セクハラか?公衆の面前で大事なモノでも曝け出したか?」


「俺を変態にしたいのか?俺が公然わいせつ罪で捕まったら天と地がひっくり返った証拠だ。それより入れてくれ。仕事なんだ」


「そうかい。じゃあこれかけて中に入ってくれ。セレブの国にようこそ」


 海斗はボブから貰った名札をかけて中に入った。レンガ色の校舎に芝生に満ちた中庭、おまけに木に囲まれているという開放的な場所だった。海斗は依頼を受けるにあたってもう一つ断りたい理由があった。それはものすごく個人的に満ちたものである。それはともかく通りすがった生徒から様々な目で見られながら海斗は案内図通り校舎に入り合流地点の会議室に入った。


「お待ちしてました天道さん。私この学校で日本史教師を担当しています田中と申します。どうぞお座りください」


「どうも」


 海斗は軽く挨拶し着席した。革製の椅子で座り心地が自室の椅子より快適と感じていた。


「さて、お話に入る前にこれを」


 田中は机の下からM1911を取り出した。


「これわかりますよね」


「45口径。第一次大戦で正式採用されてから様々な派生銃が製作され、今でも愛されてる傑作銃だ」


「はい。対人制圧部通称対人部で採用している銃です。これを分解してほしいのです」


「わかりました」


 海斗は早速手に取り、弾倉を抜き、スライドを引き抜いて、スライド内にある細かい部品やマズルを抜いて田中の前に置いた。そして今の工程を巻き戻すかのようにして部品を元の位置に入れて銃を組み立て動作がしっかりするか田中を右側に逸れた方向に向けてトリガーを引いた。弾は入ってないので弾は出ない。


「さすがですね。腕は確かみたいです」


「ここではこれを採用してるって言ってたな。早速だがこれは今日で退役だ」


「何故?」


「チョイスは悪くない。だが女子高生が扱うには少々大きいかな。グロックの26が良いだろう」


「なるほど。他に何かありますか?」


「弾は45口径を使ってるのか?」


「はい」


「じゃあ一年生は25、二年生は38口径だ。反動は少ないが人を動かなくするには充分の威力だ」


「では明日から準備しましょう。では射撃場に行きましょう」


 田中は立ち上がり海斗を射撃場に案内した。射撃場は校舎の地下にあり、入った途端発砲音が聞こえてきた。コンクリートの壁に囲まれ、横長のテーブルに二つの柵が敷いてありテーブルの先には的がかけられていた。


「みんな聞いてくれ。昨日言っていた部活動の手伝いをしてくれる先生を紹介だ」


「天道海斗。よろしく」


「先生、早速だが何か言うことはありませんか?」


 海斗は入ってくる時に見た生徒の発砲している姿を見て感じたことを思い出した。


「じゃあ君。名前は?」


 海斗は目がキリッとした生徒に声をかけた。


「一年の太田です。私の技術に何か?」


「大有りだ。俺の頭に銃を構えてみろ」


「え?」


「大丈夫だ。やってみろ」


 太田は戸惑いながらも海斗の頭に向けて銃を構えると海斗は瞬時に銃口を自分の右斜め下に逸らし素早くスライドを引き抜いて銃を使用不可能にした。


「もう少し手に力を入れろ。じゃないとこうなるか奪われる。あと利き手はトリガーは当たり前だがもう片方はゴルフみたいに被せるんじゃない。マガジンの下に手を乗せるようにだ。それからそこの二年生」


「二年の一ノ瀬です」


「一ノ瀬。お前は撃つ時に肩の力が入りすぎているのと反動を肘を大きく曲げすぎている」


「何か問題でも?」


「よし、じゃあ見てみろ」


 海斗は置いてあった1911を手に取り装弾数を確認して的に狙いを定めた。そして先程一ノ瀬が撃っていたような撃ち方をした。しかし特にこれといった変化はなかった。


「よく見とけ」


 海斗がリロードしてもう一度同じ撃ち方をすると薬室から弾が飛び出し、弾詰まりが起きた。


「反動を大きく受け流しすぎるとこういうことになる。一度弾詰まりが起きれば次に撃てるようになるまで膨大なタイムラグが生じる。最悪死だ。肘は最小限に曲げる。これがお前の課題だ」


「了解」


「いや、了解とかそんなかしこまらなくていい。お前らは軍人じゃないし」


 すると太田と一ノ瀬の力が一気に抜けたのか海斗の目の前でものすごいリラックスした。


「はぁ〜先生が怖い人を連れてくるって言うから緊張しちゃった……」


「先生、肩の力抜いてください。深呼吸ですよ。ヒッヒッヒフー」


「私は妊婦じゃありません!」


 素に戻ったのか先程までの空気とは百八十度逆転してどこか明るくなった。


「なるほど。それが本来の姿か。正直さっきの空気はやり辛くて戸惑ってたんだ。だが銃を撃つときは真剣に撃て。じゃないと死ぬ」


「「はい!」」


 数時間後


 海斗は帰宅した途端リビングに直行してソファーに倒れた。


「海斗さん!?どうしたんですか!?」


「疲れた……」


「何があったのですか?」


「寮制の男子校出身に女子高生はきつい……それに女子校だから言いたい放題だ。ナプキンがどうなの生理がどうなの。あそこはまさに動物園だ」


 セナは思わず海斗の頭を猫を触るように撫でた。


「海斗さんの髪意外とサラサラしてますよね」


「お前だってサラサラしてるだろ……」


 海斗は全力で身体を伸ばした。


「セナ。夕飯何がいい?」


「海斗さんはゆっくりしてください。今日は私が作ります。これでも居候の身ですし何か尽くさないと」


「そうか……じゃあ任せる。俺は風呂に入る」


「分かりました。着替え置いておきますね」


 数十分後


「海斗さん。出来ましたよ」


 ちょうど風呂から上がった海斗をセナが呼んだ。短時間の間にできる料理といえばたくさんある。それゆえに海斗はセナが何を作ったのか想定しづらかった。


「焼き飯か」


「はい。余っていたご飯を使いました」


 黄色い卵に緑色のネギが乗ったシンプルイズベストの炒飯。海斗は席に着き、セナの作った焼き飯を頬張った。


「美味い。シンプルに美味い」


「良かったです。家の炒飯ちょっとしょっぱいので口に合うかどうかちょっと不安だったので」


「母さんが作ってくれた炒飯も少ししょっぱかった。それが良い味だった」


「海斗さん。私思ったんです」


「ん?」


「どうして海斗さんの周りって女性が多いのかなって」


 海斗は困惑した。考えたこともなかった。言われてみれば海斗の周りには女性が多い。ここまで登場した男と比べれば地上と海の割合くらいの差がある。


「俺に言われてもな……まぁ職場に男がいないって最初思ったが一週間すればそんなこと考えなくなっていたな。俺だって好きでそんな環境の場所にいるわけじゃないし」


「どう考えてもおかしいじゃないですか。海斗さんの行くところ行くところほとんど女性のところじゃないですか。職場、メイド喫茶、女子校」


「メイド喫茶に行かせたのはお前だろ。高校は寮制の男子校にいたからそのツケが回ってきたのかな」


 ーー一応言っておくとこの話の女性率の多さは偉い人が女性の方が書きやすいから。男女の比率が地上と海くらいなのも女性ばかりの世界じゃないかという違和感をなくすため申し訳程度の男性キャラを登場させてる。今日会ったボブもその一人。ついでに言うと俺がこの世で一番信頼している友人二人もそのうち登場するかも。


「だがセナ。どうしてお前がそんなこと聞くんだ?」


「え!?だ、誰だって気になりますよ!私のいる大学にもそんな人いませんし」


「そうか。俺の周りにはイヤらしいこと前提で近づいてるのが大半だ。魅力がないとか飽きたらすぐに方向転換。嫌な世界だったよ」


 海斗がいた高校に入学していたのは全員が良い人間ではない。むしろそっちの方が多かった。不登校や親も手を焼くような難ありの生徒が入るようなところだったからだ。しかしそれでも彼がそこでの三年間を乗り越えられたのは支え合える仲間がいたからだ。


「あ、あの……海斗さん。海斗さんも……その……私をそういう目で見たこと……あるのですか?」


「セナ。お前は……俺のことが好きなのか?」


「えぇっと……その……」


「すまん。変なことを聞いた。今日は少し休む」


 海斗は食べ終わった食器を片付けて自室に戻った。セナは自分の想いを伝えられない自分が恥ずかしくなり動けなかった。


 三日後


「先生はオートマチックを扱ったことはありますか?」


 休憩中に一ノ瀬が質問してきた。


「一応な。だがリボルバーの魅力に気づいてからはご無沙汰だ。どうした?」


「もし使うとすればどちらの方が良いかなって」


「人それぞれと言うしかないがそれじゃあ元も子もないから教えてやろう。はっきり言って初心者はオートマチックだ。戦場でリボルバーなんざ生存率が低すぎる」


「じゃあ何で先生はリボルバーを使ってるんですか?」


「マテバはそこらのリボルバーよりも実用性がある。俺のマテバはそこらのリボルバーや同じマテバとは一味違うしな」


 海斗が常に携帯しているのはマテバリボルバー。多少カスタマイズが入っているが海斗の言う通りマテバは他のリボルバーとは一味違う。


 マテバリボルバー カイトカスタム 


 使用弾薬は454.カスール弾。グリップに握り込む形に合わせた溝を入れ滑り止め塗料を塗り、銃口上部のパーツ内部にナイフを内蔵。展開及び発射も可能。諸々


「といった感じだ。撃とうなんて思うなよ。今のお前がカスール弾を撃てば吹き飛ばされかねないからな。休憩終わり。練習再開」


数時間後


 ーーボス。調査の報告だ。簡潔に言えばこの学園はシロだ。例の組織との関連性はほとんどないと言っていい。が、一つ気になる情報を入手した。最近俺たち以外にも慈善活動のようなことをする連中が増えているみたいだ。情報によれば三人組の女が火事になったビルから子供を救ったり銀行強盗を追っ払ったり小さなことだが街に貢献しているまるで正義の味方のような感じだ。おまけに改造兵士と何度か交戦したという情報もある。俺らが奴らと遭遇する確率が低いのは彼女らのおかげかもしれん。あいにく三人組の行方や正体は不明。噂では政府関係者なんていうものもある。例の組織とは関係なさそうだが一応報告しておく。俺は念のため引き続き調査を続行する。


 海斗は自室で調査報告を終了して三人組について考えた。


 ーーはたして彼女らは敵か味方か……というか人間なのかも怪しいものだ。改造兵士と渡り合える実力を持ってるということは味方になれば強力だが敵になれば厄介になりそうだ。警戒が必要か。


 三人組。名前はまだない。が、彼女らはいずれ海斗と合流し地球に迫り来る脅威と共に立ち向かう運命にあるのだがそれはまだ当分先の話である。


続く

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